2024年11月28日( 木 )

プロに聞いた日米不動産業の違い~ニューヨーク・建設開発視察(2)

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 データ・マックスでは、11月上旬ニューヨーク視察を実施した。アメリカ最大にして商業・文化の最先端の世界都市。ニューヨーカーが「一言で表現できない」というさまざまな顔を持ち日々変貌し続ける同市の現状をレポートする。

 ニューヨークで日本人や日系企業向けにサービスを提供する企業は多い。飲食店はもちろんだが、不動産業でも然りだ。ニューヨークで起業し、業歴十数年を経た不動産会社の日本人経営者に出会い、話を聞くことができた。興味深かったのは、日米(とくに日本とニューヨーク)の違いだった。違いは多岐に渡るが、以下に主なものを挙げる。

1.中途解約

 まずひとつめは、米国の不動産賃貸契約においては、基本的に期間中でのキャンセルができないこと。その前提として、借りる前に明確に期限を決めることにある。

 たとえば、日本で賃貸契約2年を結んだ場合でも、契約期間中に転居しなければならない事由が発生すれば、入居者が敷金を失う程度で転居していくことは珍しくない。いつでも出られるし、日割りでも対応してくれる。しかし、米国では法律で1年契約か2年契約でしか組めないことになっており、それを組んでしまえば、何があっても基本的には途中解約はできない(最近では、特約を盛り込む場合もある)。

 実際にあった話では、ある入居者が2年契約の2カ月目に脳梗塞で倒れ、植物状態となった。当然、入院生活で部屋を使うことはないが、キャンセルは不可。「生きている以上、解約はできない」というのがニューヨークだという。家族が払えばいい、貯金を切り崩せばいい。法律が絶対という都市である。

 「厳しいこともたしかだが、法に助けられることもある」とも言う。ニューヨークはさまざまな人種、さまざまな思考の人間がいる。中には不合理な主張をしてくる人もいる。だからこそ、確固たる統一ルールが必要。「だれが何を言おうが、法が守る!」ということになっているので、助けられる面もあるのだそうだ。

2.不動産業の位置づけ

 日米の不動産業の違いの2つ目は不動産業者のくらい置づけだ。日本では、不動産業者の社会的地位は突出して高いものではない。一般企業と同じ枠組みに入るといっても過言ではないだろう。一方、米国では大学院で不動産コースがあるほど、プロフェッショナルで、弁護士と肩を並べるほど地位が高いという。
 宅建資格も異なる。日本は宅建士という資格1つだけだが、米国はセールスパーソン(Real Estate Sales Person)とブローカー(Real Estate Broker License)の2種類があり、ブローカーのほうが上級資格である。米国ではブローカー資格は医者、弁護士に続いて三大資格のひとつ。ブローカーでないと事務所をもつことができず、セールスパーソンの資格ではブローカーの下でないと働くことができない。

3.あくまで個人契約

 3つ目は、法人と個人の違いである。この点は、日米ではなく、日本とニューヨークの比較だそうだ。日本なら、法人の肩書があれば、部屋を借りられる。(もちろん審査はあるが、借りやすい)。ニューヨークでは、それは通じない。ニューヨークでは、法人契約がそもそも存在しないのだという。日本では、法人が借主となって、住居を借りることができるが、ニューヨークではほとんど「NO」だ。
これには、米国の雇用形態が大きく関わっている。社員簡単に解雇されるし、簡単に仕事を辞めることができるのが米国。法人契約したはいいが、社員がすぐにいなくなっては、残るのは賃貸契約のみ。そうなると、法人は空室となった住居に家賃を払い続けなければならない。個人契約なら、会社を辞めても上記1のように、契約期間は家賃を払わなければならない。経営者が社宅として、法人契約する場合はあるが、社員はそのほとんどが個人契約だという。

【東城 洋平】

 
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