2024年11月22日( 金 )

韓国経済ウォッチ~がんの早期発見に期待が高まるがんマーカー(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 もう1つは、ソウル大学病院のがんセンター長である盧東英(ノ・ドンヨン)教授が開発した乳がんのマーカーである。乳がんの場合、今現在がん検診にマンモグラフィが推奨されている。東洋人の場合、40代になると、乳腺が発達する高濃度乳房が多く、マンモグラフィは高濃度乳房の場合、判定がむずかしい。それに、放射線被曝の恐れがあるので、20代、30代にはこの検査を勧めていない。胸部X線検査があるが、誤診が問題になり、韓国ではニュースで取り上げられるケースも多い。またCA15-3というがんマーカーもあるが、精度が低くて当てにならない。
 今までがんマーカーの精度が低かったのは、1つのタンパク質でがんを発見しようとしていたが、現在は複数のマーカーを組み合わせて、検査の精度を上げようとする方法が世界的なトレンドになっているようだ。盧教授は複数のタンパク質を組み合わせ、検査結果を出すアルゴリズムをつくり、敏感度92%を達成したという。この新しい検査法は、すべての年齢のほうが対象になるし、マンモグラフィに比べ、簡単で、痛い思いもせず、検査ができるようになるので、マンモグラフィを代替する検査方法になるだろうと力説した。乳がんは女性のがんのなかで一番発病率が高いがんで、乳がんの早期発見にかなり貢献できるがんマーカーになりそうだ。

 今回はがんマーカーを中心に話を進めてきたが、がんマーカーはバイオマーカーの概念に含まれる存在である。つまり、バイオマーカーの一部ががんマーカーである。バイオマーカーは疾病の早期発見だけでなく、新薬の効果検証などにも有効なので、新薬開発にも欠かせないようだ。
 バイオマーカーの世界市場規模は2020年に300億ドルで、年16%の成長率が見込まれている。バイオマーカーのなかで、がんマーカーが一番多く、約3割はがんマーカーが占めているという。現在開発されているがんマーカーは150種類くらいで、今後もっと有効ながんマーカーが開発されることになるだろう。しかし、がんマーカーが実用化するまでには、数多くのハードルを越えなければならない。技術の完成、臨床での検証、政府の承認、病院での採用、健康保険への適用など、いろいろな障壁が待ち構えている。特定のがんが発生する物質だけに反応する、有効ながんマーカーが今後もっと開発されることを期待したい。

(了)

 
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