2024年12月23日( 月 )

外国人留学生不法就労にみる 雇用主の見落としがちな点

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 ラーメン店「一蘭」で起きた外国人留学生の不法就労問題。外国人留学生をアルバイト雇用する企業は多く、同じようなケースは日本全国にあり、「氷山の一角だ」と言われているが、有名ラーメン店で起きた事件だけに、大きな話題となった。

 大阪府警は11月、人気ラーメン店「一蘭」で就労資格のない外国人が違法に働いていたとして、大阪市内の店舗や福岡市の本社を家宅捜索した。警察の発表では、逮捕されたベトナム人女性は留学生として来日し、昨年7月からアルバイト従業員として働いていたが、今年3月に専門学校を除籍処分となり、就労資格を失っていたということだった。

アルバイトは資格外活動

 ここで注意したいのが、就労資格の喪失について、である。外国人留学生を戦力として雇用する企業が多いため、以降は留学ビザをもつ外国人留学生に絞って述べていく。外国人留学生は基本的に、日本での勉学を目的とした「留学」ビザを取得し、日本に滞在している。そのため本来の目的からすると、就労できないのが前提であることを認識してほしい。ただし留学ビザであっても、入国管理局に対し、「資格外活動許可」を申請すれば、基本的に1週間に28時間までの制限付きで、就労が認められる。「資格外活動許可=アルバイト可能」ということだ。

 今回のケースで、逮捕されたベトナム人女性は、今年3月に専門学校を除籍処分になっていた。入管法では、留学生の資格外活動によるアルバイトは教育機関に在籍している間に限るとしている。つまり、除籍になった時点で、就労資格を失っていたことになる。なお、所属教育機関を除籍となっても、在留資格は有効だが、3カ月間定められた在留活動をしていないと、在留資格取り消しの対象となる。

在留カードの落とし穴

 在留資格を証明するものとして、現在パスポートの代わりに携帯が義務付けられているものに、「在留カード」というものがある。氏名、性別、生年月日、国籍、居住地など個人情報のほかに、在留資格やその期間が顔写真とともに掲載されている。カードの裏には、資格外活動許可の有無が記されており、外国人にとっての身分証明書である。

 雇用主はこれをチェックすることで、雇用できるか判断するが、落とし穴もある。それは、記載された内容はこのカードが発行された時点でのものであり、在留期間中に教育機関を除籍となっても、その形跡が確認できないことだ。

 今回の事件の背景を日本語学校関係者に聞いたところ、「在留カード上では、除籍処分を受けた学生かどうかはわかりません。雇い主は雇い入れるタイミングで在留カードを確認するでしょうけど、その後在留資格が変わった(喪失した)ことは本人の申告がなければ把握しようがないと思います」とコメントしている。

アルバイト雇用にも届出必要

 では、今回のような不法就労を防ぐために必要なことは何か――。
 まず雇用主が資格外活動の認識を正しくもつことだ。外国人留学生は教育機関への所属が前提で、資格外活動というアルバイトが許可されていること。教育機関で籍を失えば、就労できなくなるということを理解しておくことが必要だ。次に、アルバイトであろうとも、外国人を雇用する際にはハローワークへの届け出を忘れないこと。これは2007年10月からすべての事業主に対し、雇い入れまたは離職の際に厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられている。

 一蘭のケースでは、雇い入れの際に届け出を怠っていたことがわかっており、今回の事件につながった可能性が高い。今回のように、本人が学校を除籍となったことを雇用主に申告しなかった場合を考えてみる。外国人留学生が教育機関を除籍となった場合、学校側は入管に除籍学生の留学ビザの喪失を届け出る。雇用主がハローワークへ届け出をしていれば、入管とハローワークでチェック機能が働き、本人の申告なしでも就労不能な状態を知ることができたはずである。

 なかには、アルバイトを複数掛け持ちしている留学生もいる。当然、週28時間のルールは知っているが、少しでも収入がほしいと超過している学生もいるのが現実だ。違法行為に当たるのは知っていても、超過労働は行われている。雇用主がこの届け出を適切に行っていれば、アルバイトを掛け持ちしている学生の超過労働も比較的容易に判別することができる。

 雇用主が留学生の在籍する学校に在籍状況を細かくヒアリングするのは、現実的ではない。また超過労働を素直に認める留学生はいないだろう。留学生本人の申告以外に、それらを知るすべは雇用の際の届け出が鍵を握っている。

【東城 洋平】

 

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