2024年11月23日( 土 )

健康食品の広告問題、「L-92乳酸菌」の広告を問う(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 健康情報ニュースは昨年11月に「健康食品の広告問題、『業界紙』の広告を問う」(記事URL)、今年1月にはその続編(記事URL)を報じ、業界紙が掲載する原料広告の違法性を指摘した。そのさなか、今度は全国紙に掲載された乳酸菌の広告をめぐる問題が持ち上がった。

効能効果を新聞に広告、翌日にサプリ購入のチラシ

 「この広告は認められるのか?」――昨年12月20日に都内で開かれたシンポジウムで、(一社)消費者市民社会をつくる会(ASCON)の阿南久代表理事が問題提起を行った。「この広告」とは、全国紙に掲載された「L-92乳酸菌」の医薬品的な効能効果をうたった広告である。

 今年に入っても、「この広告」は複数の全国紙で派手に展開されている。代表的な事例を挙げる。1月15日付の東京新聞に掲載された全面広告。キャッチコピーは「“腸”が免疫の鍵だった!」「花粉症 アトピー性皮膚炎 通年性鼻炎 インフルエンザの改善が確認されたL-92乳酸菌」。メカニズムの説明とともに、花粉症の症状や皮膚炎スコアなどが改善されたとする研究成果を紹介した。医学博士の榎本雅夫氏が写真入りで登場し、研究成果を権威付けている。

 1月29日付の日本経済新聞でも全面広告が掲載された。同様のキャッチコピーを記載し、「8週間でアレルギー症状の緩和、ウイルス感染予防の可能性を確認!」「免疫に挑む、L-92乳酸菌」とアピール。「花粉飛散前に『L-92乳酸菌』を8週間摂取することで花粉症の『鼻』と『眼』の症状緩和が確認されました」「『L-92乳酸菌』は、他にも通年性アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状への有効性が確認されています」などの記載がある。

 これらはほんの1例にすぎない。その後も、全国紙で同様の広告が掲載されている。さらに、広告が掲載された翌日には、同じ新聞に「L-92乳酸菌」を配合したサプリメントの折り込みチラシが入る。

 前述の東京新聞に全面広告が掲載された翌日の1月16日、日本経済新聞に全面広告が掲載された翌日の1月30日にも、それぞれの新聞にサプリメントの折り込みチラシが入った。

 折り込みチラシは、アサヒカルピスウェルネス(株)(本社:東京都渋谷区、千林紀子社長)が販売するサプリメント『アレルケア』の宣伝広告。「L-92乳酸菌配合のアレルケアに、100万人の「ありがとう」」のキャッチコピーがあり、「L-92乳酸菌」の文字はひときわ目立つようにデザインされている。

 初回限定価格の「1回のみお届け」1,680円(約30日分)、「定期お届けコース」2,940円(約60日分)をアピールし、お試し購入を促す内容だ。

所在を明かさない“学術団体”

 折り込みチラシは、アサヒカルピスウェルネス(株)によるもの。一方、全国紙に掲載された広告は、「環境・生活習慣型アレルギーケアフォーラム」と称する団体が広告主となっている。

 今月6日付の東京新聞に掲載された「L-92乳酸菌」の全面広告によると、全国のアレルギー研究や治療で名高い専門家が発起人となり、2007年11月に設立された学術団体だという。同フォーラムのホームページを見ると、活動目的について、「現代生活におけるアレルギーの問題を再定義するとともに、最新の研究や臨床における新たな知見をベースにした情報発信に取り組むことで、現代人のQOL(Quality of Life:生活の質)向上に貢献することを目指します」としている。

 ホームページの冒頭に「(略)アトピー性皮膚炎や花粉症、ぜんそくなど『環境・生活習慣病としてのアレルギー』について考えていきます」と記載されているが、そのすぐ上には「L-92乳酸菌を知ろう!」の文字が目立つようにデザイン化されている。「NEWS」欄には直近のニュースとして、「2017/04/03 『L-92乳酸菌』の長期摂取によりアトピー性皮膚炎の症状緩和が維持されることが確認されました。有効性データはこちら」「2015/01/31 『L-92乳酸菌』の成人アトピー性皮膚炎への有効性が発表されました。有効性データはこちら」などと紹介している。

 学術団体と称しながら、まるで「L-92乳酸菌」の宣伝が目的であるかの印象を受ける内容だ。ホームページには、同フォーラム事務局の住所も電話番号も記載されておらずEメールアドレスのみ。所在がはっきりしないため、記者はEメールを通じて問い合わせた。

 質問事項は次の3点。(1)事務局の住所と電話番号、(2)学術団体とされているが、「L-92乳酸菌」と結び付きが強い理由、(3)全国紙に掲載する全面広告の費用はどこから出ているのか。

 今月15日、同フォーラム事務局からEメールで回答が寄せられた。住所・電話番号については、「当フォーラムは東京都の千駄ヶ谷に所在しておりますが、ご連絡につきましては、すべてメール対応といたしております」とし、一切明かさない。

 広告については、「当フォーラムとしての判断で実施しておりますので、詳しい回答は差し控えさせていただきたい」と回答。また、「当フォーラムは、アサヒカルピスウェルネス(株)が協賛企業となっております」と説明した。

 浮かび上がったのは、東京・千駄ヶ谷のどこかに事務局を置いていることと、アサヒカルピスウェルネス(株)が協賛企業であること。複数の全国紙に「L-92乳酸菌」の派手な広告を展開しながら、その所在さえ明らかにしない正体不明の“学術団体”だということだ。

 健康食品業界には「○○○研究会」「△△△フォーラム」といった学術団体を装った組織が数多く存在する。その多くは、関係する企業が活動資金を出して、学者に特定の原材料・成分の効能効果をアピールしてもらっているのが実態だ。

(つづく)
【木村 祐作】

 
(中)

関連キーワード

関連記事