2024年12月24日( 火 )

健康食品の広告問題、「L-92乳酸菌」の広告を問う(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

サン・クロレラ販売訴訟をほうふつとさせる

 前・全国消費者団体連絡会事務局長の河野康子氏が指摘したように、今回のケースはサン・クロレラ販売訴訟を彷彿とさせる。サン・クロレラ販売訴訟は、法の隙間を突いた健康食品の広告手法を断罪した画期的な判決となった。

 同訴訟では、クロレラなどの医薬品的な効能効果を説明した折り込みチラシの違法性が争われた。折り込みチラシは「日本クロレラ療法研究会」と称する団体が作成し、商品名や企業名を記載していなかった。

 だが、京都地裁は同研究会がサン・クロレラ販売(株)から独立しているとは認められないとし、チラシは単に成分の効能効果を伝えたものではなく、同社の商品の販売促進を目的としたものと判断。チラシを商品内容の「表示」と認め、景品表示法の規制対象になるという判決を出した。さらに最高裁では、不特定多数に向けた広告も消費者契約法の「勧誘」に該当し得るという判断を示した。

 折り込みチラシと新聞広告の違いはあるものの、サン・クロレラ販売訴訟のチラシと「L-92乳酸菌」の新聞広告には共通点が多い。(1)学術団体の名で出した、(2)原料の医薬品的な効能効果をうたった、(3)商品名や企業名を記載していない、(4)学術団体とサプリメント販売会社の関係が深い(「L-92乳酸菌」の場合は協賛企業)――などだ。

厚労省「望ましくない」

 「L-92乳酸菌」で見られるように、乳酸菌業界では従来から、特定の乳酸菌に関する効能効果をうたった広告(新聞広告やチラシなど)と、同じ乳酸菌を配合した最終商品の広告(同)を別々に展開する宣伝手法を取ってきた。そうしたケースについて、行政機関はどう考えているのだろうか。

 薬機法を所管する厚生労働省監視指導・麻薬対策課の担当官は、「2つの広告が、物を売るための広告として補完しながら一体性があれば、基本的に違法だといえる」と指摘。「国としては、法の理念の観点から、望ましくないと考えている」と説明する。

東京都薬務課「この手法は認められない」

 薬機法に基づいて、健康食品の広告・表示を取り締まる東京都福祉保健局健康安全部薬務課に話を聞いた。薬務課では一般論としたうえで、次のように話している。

 「原料の効能効果の広告を出して、その翌日に商品チラシを入れた場合、消費者は同一と受け取るのではないかと思う。たとえ広告とチラシに分かれていても、セットと見なされれば指導の対象となる。この手法は認められない」。

 東京都では、広告とチラシに分かれている点や日付が異なる点などを見て、機械的に指導の対象になるかどうかの判断を行っていないと説明する。

 「消費者は商品を摂取すると、広告に記載されたような効能効果が期待できると思うだろう。広告とチラシの2つで1つの広告となり、1日目の広告でうたった効能効果が得られると消費者が受け止めると指導することはある」。

 今後の状況によっては、「都として、厚労省と協議して広告3要件の判断基準を明確化してもらうこともあり得る」という。さらに、「こうしている間にも広告が展開されるという危機感を持っている。迅速な対応が必要となる」との見解を示す。

 「L-92乳酸菌」の広告ではアトピー性皮膚炎などの改善効果を強調している。アトピー患者には深刻な悩みを抱える人も多く、広告を見て、サプリメントに手を出し、必要な治療を中断してしまう懸念もある。取材で「日本アレルギー友の会」は、「アトピー性皮膚炎などの患者は根治治療が見つからず、原因もそれぞれ違う。単純にこれが効いたという話をされても困る。広告も節度を持って行ってもらいたい。経済的な被害も出る」(武川篤之理事長)と話している。

 ここ最近、乳酸菌の広告は従来と比べておとなしくなったと言われているが、「L-92乳酸菌」の広告の動向を見て、ライバル各社が同様の広告展開を始める可能性もある。行政機関には、消費者の誤認を招きかねない広告手法を早期に摘み取ることが求められる。

(了)
【木村 祐作】

 
(中)

関連キーワード

関連記事