小売業―かつてない激変期(4)~AIが変える未来
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アマゾンのフィルフィルメントセンターで話題のキバロボットはその典型だ。2003年、ボストンで創業したこの会社は2012年、アマゾンに7,750万ドルで買収された。
350kgの積載能力をもつこのルンバ型ロボットは床のバーコードを読み取り人間よりはるかに速いスピードで在庫をピッキングし、ピッカーと呼ばれる出荷スタッフのところまで運んでくる。
ロボットには照明も空調も要らない。人件費の節約は1台あたり9万ドル。1万台の導入で9億ドルにもなる。施設1拠点あたり、2,200万ドルの経費節減になるという。ロボット化を進めるほど販売管理のコストは小さくなるのである。このロボットをアマゾンはすでに3万台以上導入している。
このシステムのさらに大きな利点はフィルフィルメントセンターと呼ばれるピッキング&配送施設の建設期間だ。従来型だと普通1年近くかかるセンターの建設期間がわずか数週間で済むのだという。構造的な問題を革新的なアイデアでクリアするとその効果が劇的に表れるのはかつての産業革命と同じ構図だ。海外の小売業がかつてのリアル出店に代ってネットという無店舗で我が国の小売業界に参入する。それがアマゾンなのだ。表2はウォルマートとコストコの売り上げと粗利率、経費率の推移である売り上げと粗利益率の伸びが鈍化し、経費率が高まっているのに対し、コストコの数値は経費率の上昇をうまく吸収している。
特筆すべきは1店舗あたりの売上の高さだ。以前は100億に届かなかったコストコだが今では170億という売上を獲得している。この間、粗利率と経費率がほとんど変わっていないのは経営精度の高さを物語る。コストコの特徴は独自の商品政策にある。同一商品競合というケースがほとんどないコストコはその商品を独自化することで商圏と買上単価を大きくしている。しかし、このような企業でも今後同じような手法で成長が続くかどうかは分からない。微増ではあるが経費率が上昇しているのだ。ウォルマートはその売上の大きさもあるが伸び率は明らかに鈍化しており、粗利率の改善も思うように行っていないように見える。さらに大型店舗の建設が停滞しているせいか1店舗あたりの売上も停滞している。どう見ても状況はよくない。
遅れは致命的
キバロボットは、最初、ウォルマートに自社のシステムを売り込みに行った。しかし、ウォルマートはそれを断った。当時のウォルマートのトップはECの急激な拡大が予測できなかったのかもしれない。その後、キバはウォルマートに提示した価格よりずっと安くアマゾンに提示した。アマゾンはこのシステムを買い取り、大きな効果を手にしただけでなく、アマゾンロボティクスという別会社にして、さらなる改善を進めている。
いくら過去の業績が好調でも新しい流れに乗り遅れればそれを維持することはできない。ウォルマートもこのことを学習してか、出店を控えて代わりに積極的なEC関連の投資を始めた。(つづく)
<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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