2024年11月24日( 日 )

森友学園疑惑は、「社会正義を取り戻す戦い」~緒方林太郎・前民進党福岡県連代表に聞く

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 先週末に各報道機関が行った世論調査の結果が出そろった。森友学園疑惑に絡む決裁文書改ざんの事実が明らかになった影響で、安倍内閣の支持率は軒並み大幅に下落した。不支持率と支持率が逆転するのは、5カ月ぶり。
 今後予定される佐川宣寿元理財局長の証言内容や、もはや開き直って「悪代官」を演じているようにさえ見える麻生太郎財務大臣の「出処進退」によっては、支持率のさらなる落ち込みは避けられない。「ポスト安倍」をめぐる自民党内の動きはすでに、「麻生がいつ辞めるか」にステージが移っている。

 一方、国会において自民党は改ざん問題を佐川氏が独断で行った「佐川事件」とすることで事態の収拾を図るべく、姑息な答弁を続けている。しかし、決裁文書改ざん問題の本質は、「国権の最高機関」(憲法41条)たる国会が軽んじられたことにある。事実と異なる資料に基づいた国会審議が行われたということは、本来なされるべき議論が行われなかったということになる。ひいては国民の選択すら歪めた可能性はなかったか。
 昨年10月に行われた衆議院議員総選挙で自民党は勝利したものの、当時、公文書改ざんは発覚していなかった。政治の世界で「たら、れば」は禁句だが、ことは虚偽公文書作成(刑法156条)という刑事責任を問われかねない問題であり、選挙結果の正当性は検討されてしかるべきだ。昨年の総選挙で希望の党から福岡9区に立候補して落選した、緒方林太郎・前民進党福岡県連代表は改ざん問題をどう見ているのか。

昨年10月の衆議院議員選挙で、取材に応じる緒方氏

 緒方氏はまず改ざん問題について、自身の外務官僚経験を踏まえながら「忖度(そんたく)というよりは、ある程度明確な指示が出ていたはずだ」とみる。

 「安倍首相が、昨年2月の予算委員会において『森友学園疑惑と関係していれば総理も議員も辞める』と言った段階で、今井(尚哉)内閣総理大臣秘書官から財務省に対して『どうにかしろ』という(辻褄あわせのための)指示が出ていたのでは」(緒方氏)

 国家・国民に仕えるはずの官僚が、時の政権のために公文書をねつ造する。これまであり得なかった事態の背景にあるのは、安倍政権下で強まる「霞が関への圧力」だと指摘する。佐川氏も迫田氏(英典・元国税庁長官/森友学園が国有地売却交渉を進めていた時の理財局長)も極めて優秀な官僚であることは間違いないものの、その優秀さは〝注釈付き〟で「官邸に対して忠実である」ことも含まれている。官僚が自身の身を守る意味でも「逆らえる雰囲気はまったくないのだろう」(緒方氏)ということなのだ。
 緒方氏は、今後の焦点が「ポスト安倍」に移りつつあることについて、野党が役割を発揮できていないことにも歯がゆさを感じている。

 「野党側はいまだに安倍首相の責任を問うだけにとどまっている。こちらが正しいのだから、本来なら『かかってこい』と、選挙で信を問うことを迫るのが本筋のはず。今後は野党の内閣不信任案がいつ出るかが1つのヤマ場になるでしょう」(緒方氏)

 緒方氏の発言には、小池百合子東京都知事が巻き起こした希望の党旋風によって野党が離合集散を繰り返したことも念頭にあるはずだ。風に乗った「実力不足」の議員が多数誕生したこともあって、野党の追及は迫力不足の感も否めない。
 内閣不信任案は、自民党所属の議員にとっても決裁文書改ざん問題をどう捉えているか、さらに改ざんを引き起こした安倍内閣を支えるかどうかのリトマス試験紙になる。緒方氏は解散総選挙の可能性を現段階で「1%くらい」とみるが、今後官僚や検察からのリークが進み新たな事実が明らかになるなかで安倍首相が追い込まれる可能性も否定できない。
 「野党に最も必要なのは、『社会正義を実現する』という強い思いのはずだ」と強調する緒方氏。問われているのは政治家の覚悟や使命感だけでなく、あるべき政治を取り戻すための国民1人ひとりの選択そのものだ。それは投票行動によって示すしかない。
 緒方氏は、落選後の身の振り方についてじつは明言していない。現段階ではノーコメントだが、「政界引退」とした毎日新聞の記事については「事実誤認」とはっきり否定した。

報道各社の世論調査結果(ニュースサイト「HUNTER」より)

 

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