森友学園疑惑 消された政治家たちと昭恵夫人の涙
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政治的圧力そのもの
森友学園の国有地売却をめぐる一連の騒動は、改ざん前の公文書が明らかになることで、ついに役者が出そろうかたちとなった。争点は、国有地の値引きにおける政治的な関与の有無。改ざんによって、安倍昭恵首相夫人を始め、複数の政治関係者の名前が消されていることがわかった。なかでも目を引くのは、やはり昭恵夫人についての記述だ。
改ざんが行われたのは、同学園に対する土地貸付に関する決裁書2つと売却に関する決裁書1つ、そして特例の承認を受けるための稟議書2つ、これらの関連文書を含めて計14の文書。そのうち経緯などの説明とともに承認を求めるために作成された稟議書では、昭恵夫人や政治系の名前が次々と登場。政治関係者の存在をちらつかせ、特例措置の承認を求めるペーパーは、もはや政治的圧力以外の何物でもない。
2015年4月30日に作成された稟議書に登場する政治関係者を順に見ていく。
脈絡なく登場する昭恵夫人の涙
トップバッターは、森友学園・籠池泰典氏の発言に対し、関与を完全否定してきた自民党・鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)参議院議員。稟議書には、「1.事案の概要」のなかで、鴻池議員から近畿財務局への「陳情案件」と明記されている。さらに、鴻池議員の秘書が13年8月13日、近畿財務局に電話し、森友学園から大阪航空局への直接相談を受けるよう要請したとある。
続いては、昭恵夫人。14年4月28日、近畿財務局と森友学園の打合せの場で、昭恵夫人との関係性を示す発言とともに、籠池理事長と昭恵夫人のツーショット写真が提示されたと付け加えられている。
さらに、国と学園のやり取りでもなんでもないが、なぜか、産経新聞の15年1月8日付ネット記事で、森友学園を訪問した昭恵夫人(「安部首相夫人」と誤記)が、学園の教育方針に感涙した旨が記載されたと記されていた。15年1月15日、北川イッセイ国交省副大臣秘書官(参議院議員)は、森友学園から国交省副大臣への面会要請を受けた(「面会しても意味はなさない」と回答)。
15年1月29日、平沼赳夫衆議院議員の秘書が財務省あてに「(土地の)概算貸付料が高額であり、何とかならないか」と相談。
15年2月16日、鳩山邦夫衆議院議員(故人)の秘書が国会連絡室に、森友学園の国有地借受の件で相談したいとの連絡。翌17日、鳩山氏の秘書が近畿財務局を訪れ、「(土地の)概算貸付料が高額であり、何とかならないか」と相談。
なお、平沼、鳩山、両氏の秘書に対して、財務省および近畿財務局は、「価格はどうにもならない」旨を回答したとある。
「麻生太郎」「安倍晋三」も登場
この稟議書は、森友学園の概要で締めくくられる。そこには、籠池氏が「日本会議大阪」の代表・運営委員と紹介され、同団体と連携する国会内の「日本会議国会議員懇談会」には、「役員には特別顧問として麻生太郎財務大臣、会長に平沼赳夫議員、副会長に安倍晋三総理らが就任」と解説されている。
森友学園を取り巻く自民と維新
さらに「(参考)森友学園への議員等の来訪状況」として、時系列で政治関係者の来訪歴が記されている。
ここで登場するのは、日本維新の会の関係者だ。13年12月に同党女性局の視察で訪れた上西小百合前衆院議員(文書では「上田」と誤記)は、自身のツイッターで、平沼氏の命令で視察に行き、報告書を提出したとコメント(画像)。その報告書には、「我が日本維新の会の平沼赳夫先生、中山成彬先生など大先輩方と非常に入魂の間柄」と書いた。
日本維新の会といえば、その元代表である橋下徹前大阪府知事は、安倍首相と何度も会談を重ねてきた間柄。維新の女性議員が訪れた時期は、第1次安倍内閣誕生から約1年が経った頃。いわゆる“第3極ブーム”で維新の動向が注目され、与党勢力からは警戒の目で見られていたころでもある。
ただし、民主党から自民党への政権交代となった12年12月の総選挙以前から、党内少数派ながらも政権の座に再びつきたい一念の安倍首相は、党外勢力の維新の力にすり寄っており、以来、橋下・松井とは入魂の仲。森友学園の小学校設立認可は大阪府の所管だ。改ざん前の稟議書には、森友学園をめぐり、自民、維新といった政治勢力による連携プレーが行われていた様子もうかがえる。
【山下 康太】
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