2024年11月22日( 金 )

『週刊金曜日』への反論

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『週刊金曜日』が「ネットニュースが煽り立てる『乗っ取り劇』」と挑発

 10月12日発売の週刊誌『週刊金曜日』1204号「金曜アンテナ」コーナーに、NetIB-Newsでかつて報じた事件に関する記事が掲載された。執筆者は、「ジャーナリスト」を名乗る成田俊一氏。

 タイトルは「ネットニュースが煽り立てる『乗っ取り劇』 福岡市20億円産廃場騒動の裏側」という挑発的なものだった。

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 この記事について成田氏は、(1)NetIB-Newsが「乗っ取り」劇の首謀者とした柏田清光氏を「窮状を補佐するために経営参加した」人物と擁護したうえで、柏田氏がNetIB-Newsを運営するデータ・マックス社を「名誉棄損罪で博多署に告訴する」と話していることを紹介している。さらに成田氏は(2)「乗っ取り」劇とはまったく関係ないはずの「データ・マックス社の評判」について、誹謗中傷ともいえる表現で書き連ねてもいる。

 成田氏の一方的ともいえる書きぶりは目に余るものであり、上記の主に2点について反論したい。

産廃処分業者をめぐる「乗っ取り」疑惑

 まず、事案の概要をおおまかに説明したい。

 NetIB-Newsで複数回報じてきたのは、福岡市博多区の産業廃棄物処分業者・(株)和幸商会の経営権をめぐる「乗っ取り」疑惑。処分場の拡張許可が下りれば十数億円の売上高が見込める状態となるため、経営権をめぐって複数の人物が暗躍してきたことを報じていた。

 その「暗躍」の中心人物をNetIB-Newsでは和幸商会の柏田清光氏としていた。しかし成田氏はなんの根拠も示さずに柏田氏を「箭内社長(編集部註:和幸商会代表取締役)の窮状を補佐するために経営参加した人物」だと決めつけ、柏田氏の「(NetIB-Newsを運営する)データ・マックスは半年以上にわたって(中略)でたらめ報道をさも事実かのように報道し続けた」「名誉棄損罪で博多署に告訴します」などのコメントを紹介している。

 NetIB-Newsでは和幸商会の「乗っ取り」疑惑について慎重な取材を重ねたうえで、「産業廃棄物処分の現場において、不正が横行している」「処分業者の経営権が不正な手段で移された場合、その業者が産廃事業に携わる資格があるのか」という視点のもと、あえて実名を記載して問題提起することを決めた経緯がある。

 取材の過程でつかんだ「乗っ取り」の証拠には、成田氏の記事に添付された写真に写っている箭内氏や伊藤氏らが偽造した元役員の辞任届や取締役会、株主総会の議事録などもある。辞任させられた元役員には、取締役会の開催も通知されていなかった。

 NetIB-Newsでは和幸商会に対してこれまで2度にわたり取材を申し込んでいる。連載開始前には質問状を配達証明でも郵送したが回答はなく、事実上の取材拒否だった。

「乗っ取られた」側には取材をしていない成田氏

 成田氏は柏田氏の証言を無批判に信じこむ一方、乗っとられた側の関係者には取材すら申し込んでいないことがわかっている。

 成田氏の記事中では、NetIB-Newsの担当記者である東城洋平をデータ・マックス社に訪ねた際のやりとりも掲載されているが、東城記者が真摯に対応したにもかかわらず「『すべて資料もそろっています。証言もありますから』とかわした」(下線部は本稿筆者)と、事実をねじまげた表現で読者に予断と偏見を与えようとしている。

 じつは成田氏訪問の数日前、データ・マックス社をもう1人の不審な人物が訪れていた。某大手新聞社の記者を間にはさんで紹介された、「関西地方の産廃処分場経営者」と名乗る人物M氏だ。M氏は和幸商会の問題をにおわせたうえで、「眼の前に拡張の可能性のある処分場がある。これを潰すのはもったいない」という旨の発言をし、なぜかデータ・マックスとの業務提携をもちかけてきたのだ。対応した記者は当然断ったものの、その後M氏は周囲に対し、「マスコミを使って反撃させる」という旨の話をしたことがわかっている。

 M氏と成田氏の連続した訪問が偶然とは考えにくい。事実、成田氏に対してM氏の名前を出したところ、明らかに知っている様子だったのだ。まず、業務提携での利益供与をちらつかせて記事潰しを画策し、こちらが応じないとなればマスコミを使って陽動作戦に出る――『週刊金曜日』側がこういった経緯を知っていたのか、ぜひ教えていただきたい。

刑事と民事の違いもわからない「ジャーナリスト」成田氏

 成田氏の記事では、「乗っ取り」疑惑を柏田氏の主張に基づいて否定するが、記事中にはなぜかNetIB-Newsを運営するデータ・マックス社に対する誹謗中傷ともいえるべき記述が散見される。要するに、「こんな怪しい会社の記事だから信用できない」という印象を与えたいがための、使い古された手法だ。

 たとえば、成田氏はデータ・マックス社について以下のように書いている

 A「過去には福岡市長の女性スキャンダルを取り上げたこともあるが、これは市長から告訴されて敗訴。この特異な調査会社が、産廃扱い高が1億円にも満たない和幸商会の経営権の争奪問題を大企業の乗っ取り事件かのように連日、報道してきているが、その信ぴょう性はどうなのか。」(記事の2段目から3段目にかけて、18行にもわたってデータ・マックス社の「評判」を記述)

 B「それにしてもデータ・マックスは真っ当な企業情報の提供会社なのかどうか。もう少し経てば、その正体もわかるだろう。」(なぜか、データ・マックス社が「まっとうかどうか」を記事の締めにしている)

 Aについては、成田氏は致命的な事実誤認を犯している。データ・マックス社はかつて高島宗一郎福岡市長の女性スキャンダルを伝えたことで高島市長から訴えられたことがある。しかし刑事告訴については「不起訴」であり、民事においても裁判所は慰謝料を大幅に減額(約10分の1)したうえで「記事に公益性があった」ことを認めて高島市長が求めた謝罪広告の必要はない、と判断しているのだ。

 成田氏は「市長から告訴されて敗訴」としているが、「告訴」は刑事処分を求める法律行為であるため、この部分は明らかな間違いである。刑事と民事の違いもわからないジャーナリストがいたとは驚きであり、『週刊金曜日』の編集・校閲機能についても疑念を抱かざるをえない。

 Bについて。成田氏はデータ・マックス社が「真っ当」かどうか問う前に、当事者の一方からしか取材せず、刑事と民事の違いすらわからない自分自身が「真っ当」なのかどうか、深く自省すべきではないか。そして成田氏の記事を掲載した『週刊金曜日』は、成田氏レベルの「自称ジャーナリスト」しか相手にしてくれなくなった現状に目を向けるべきだろう。

 『週刊金曜日』は1993年に元朝日新聞のスター記者、本多勝一氏や故・筑紫哲也氏らによって設立された。広告収入に頼らない、それゆえにタブーのない「権力の監視」を目指す雑誌だった「はず」だ。同誌の編集委員でもあった佐高信さんは過日「サンデーモーニング」(TBS系列)で、「権力者から敵視されないようではジャーナリストではない」「アメリカの新聞では(訴えられるのを見込んで)訴訟費用を積み立てている」「権力と戦う姿勢がマスコミには必要」などと述べている。

 佐高氏の言はそのまま『週刊金曜日』の創刊理念と重なって見え、だとすればそのまま『週刊金曜日』編集部にお返ししたい。

 「データ・マックス社は確かに福岡市長から訴えられましたが、それが何か問題なのですか?」

 データ・マックス社の全社員は、権力者のスキャンダルを取り上げて訴えられたことを誇りにこそすれ、そのことで同業者から嘲笑されることなど考えてもみなかった。ましてや権力の監視のために立ち上がったはずの『週刊金曜日』が、否定的ニュアンスで「市長から告訴された」などと書くとは、背後から銃弾が飛んできたような衝撃でもある。

 佐高氏の言にならって「権力者から訴えられて初めて、ジャーナリストとして認められる」とするならば、弊社は権力者からの弾圧を恐れない、極めてまっとうなジャーナリズムを実践していることになりはしまいか。一方、『週刊金曜日』が権力者から敵視され、訴えられたという事実は寡聞にして存じ上げない。いったい真にジャーナリズムを実践しているのどちらなのだろうか。

得をするのは誰なのか

 そもそも、データ・マックス社と『週刊金曜日』がこのように「いがみあう」ことで利益を得るのは誰なのか。錚々たる編集委員をそろえる『週刊金曜日』のこと、当反論文に対するそれなりに説得力のある反論が繰り出されることは容易に想像できるが、しかし反論の応酬となれば自然と「乗っ取り」事件の真相解明は脇に押しやられ、いつかうやむやになってしまうことは間違いない。『週刊金曜日』ははたしてそれを望むのだろうか。

 それこそがむしろ「乗っ取り」事件首謀者の狙いではないか。だとすれば、意図するかどうかにかかわらず『週刊金曜日』は「乗っ取り」首謀者の側に立つことになる。成田氏が持ち込んだ企画であろうから、『週刊金曜日』は首謀者と成田氏の高笑いのもと、手のひらで転がされ続けるというわけだ。

 成田氏は、データ・マックス社について「もう少し経てば、その正体もわかるだろう」と書いて記事を締めくくっている。もはや「乗っ取り」事件の真相解明はどこへやら、まるでデータ・マックス社に対する挑戦状である。

 データ・マックス社には、成田氏に関する情報が集まり始めている。まさに、もう少し経てば、成田氏の正体もわかるだろう。

【NetIB-News編集部】

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