2024年12月23日( 月 )

【続報】産廃不法投棄事件の真相(3)~裁判資料から当時を読む

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 佐賀県鳥栖市で産業廃棄物の中間処理場を運営していた(株)北斗が起こした不法投棄問題。事件発覚から4年が経過した今年7月、鹿児島県に不法投棄された廃石膏ボードの処理をめぐり、鹿児島県は北斗に処理を委託した排出事業者に対して自主撤去の方針を照会した。北斗関係者らによる自主撤去が進まないまま、ついにその責任が排出事業者に向けられたかたちだ。鹿児島県は7月末から複数回にわたって、排出事業者向けに説明会を開催。「納得いかない!」と参加者から不満の声が相次ぐ中、説明会では語られなかった事実が判明した。

原氏、反論も原告勝訴

 これに対し、原氏は薙野氏が産廃について深い知識をもち、資格ももっていたこと、鹿児島への処理も、薙野氏の了解を得ていた。さらに薙野氏に説明した時点では、適法だと思っていた。会社を守るため、すべての罪を被り、有罪判決を受けた。水増しや請求書の偽造はないと反論していた。

 複数回にわたり、双方の主張がなされた後、18年2月に判決が言い渡された。裁判所は原告の言い分を全面的に認め、被告に対し請求どおり2,425万円の支払いを求めた。

 この裁判資料からは、当時の事業運営の実情も判明している。

・(株)北斗は04年12月に設立したが、一時休眠。10年9月に再開した。

・役員以外に、原英司氏の弟である原司郎工場長ほか数名のスタッフで運営されていた。

・一連の水増し請求事件は、不法投棄事件の鹿児島県警による取り調べでわかった。

・各支払先名義の通帳とカードを原英司氏が所持し、自由に出し入れしていた。

・(株)トクヤマ(最終処分先)にもっていくと、枦山・谷山の処理費用の3倍かかった

・佐賀県から「鹿児島県に廃石膏ボードを搬出しているのか」という問い合わせが入っていた。当時、原氏は「鹿児島へ農業用肥料の原料として、搬出していた」と説明していた。

明らかになった当時の記憶

 関係者の陳述書などから、当時の様子が伝わってくる。

 薙野氏は、「原氏からは、鹿児島に石膏ボードをもち込むことについて、農業用資材=肥料として卸していると聞いていた。その肥料を使って栽培されたお茶製品を谷山が買ってくるので、信じていた。当初から原氏を警戒するよう忠告されていたが、結果的に見抜けなかった。会社に一定の責任はあるので、撤去作業に協力していきたい。審査請求をしている段階なので、その進捗を見てから、撤去を考えたい」と述べている。

 一方、投棄実行者の谷山氏は「原氏は不法投棄していることを認識していた。これで得たお金は借金の返済や生活費に当てていた」と供述し、不正行為を認めている。

 驚いたのは原英司氏の言い分だ。不法投棄による刑事事件の供述調書で、原氏は「水増し請求した処分費用は個人で使った。多くはボートレースにつぎ込んだ」と全面的に罪を認めていたが、民事裁判では一転して否定。警察に供述を仕向けられたという主張をしていた。

(つづく)
【東城 洋平】

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・どうなる?(株)北斗産廃不法投棄問題(1)~「納得できん!」排出事業者が憤るワケ

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