【続報】産廃不法投棄事件の真相(5)~鹿児島県を直撃した
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佐賀県鳥栖市で産業廃棄物の中間処理場を運営していた(株)北斗が起こした不法投棄問題。事件発覚から4年が経過した今年7月、鹿児島県に不法投棄された廃石膏ボードの処理をめぐり、鹿児島県は北斗に処理を委託した排出事業者に対して自主撤去の方針を照会した。北斗関係者らによる自主撤去が進まないまま、ついにその責任が排出事業者に向けられたかたちだ。鹿児島県は7月末から複数回にわたって、排出事業者向けに説明会を開催。「納得いかない!」と参加者から不満の声が相次ぐ中、説明会では語られなかった事実が判明した。
鹿児島県に疑問点をぶつける
記者は7月末の説明会に参加し、その後2カ月にわたり複数の排出事業者から複雑な心境を聞いた。取材先で耳にした疑問に対する納得いく回答を求めるため、10月12日取材班は鹿児島県庁へ向かった。
訪ねた先は、説明会を開催した鹿児島県廃棄物・リサイクル対策課だ。主なやり取りを後述する。
――排出事業者に求めた、最新の回答状況は?
鹿児島県廃棄物・リサイクル対策課(以下、対策課) 10月11日時点で、対象事業者約500のうち、回答があったのは320社。Aの個別自主撤去が25社、Bの共同自主撤去が約170社、Cのその他が125社。Cでは、鹿児島県から通知された撤去対象量を精査したい、撤去に関する質問がしたい、検討する時間がほしいという記載が多い。
――不法投棄の総量を「8,500m3」としている。取材した排出事業者3社で自主撤去対象量がその量を超えるが。
対策課 説明会でも答えているが、ほかの排出事業者の自主撤去対象量に応じて、減量を認める場合がある。
――つまり、通知された量をすべて撤去しなくてもよいということか。
対策課 そうだ。
――選択肢として、AとBを設けた理由は?
対策課 まず基本的には、自社での撤去が第一。しかし今回は北部九州の排出事業者が多いため、遠方まで撤去に来るのは難しいと考える。福岡県で発生した不法投棄事件の撤去に関して、福岡県に問い合わせたところ、福岡県では協会に負担金を収めて、共同撤去したという話を聞き、選択肢に加えた。
――措置期限を過ぎて、排出事業者に責任転嫁するまでが早すぎるという意見もある。
対策課 事件が発覚した14年8月以降、北斗関係者に自主撤去するように再三求めてきた。それでも撤去されない。弁明の機会も付与した。措置命令も行った。それでも動かなかった。最初に撤去を求めた時点からは数年が経過している。
――その間、北斗関係者にはどのように接触していたのか。
対策課 会社訪問、電話、文書により、県の意向を伝えていた。
――北斗は「撤去しない・できない」という言い分を主張していたのか
対策課 行動として、撤去されていない。行動を見てとしかいえない。
――北斗関係者に説明会の開催を知らせたのか。北斗関係者は「経営責任は認める。逃げるつもりはない」と言っている。
対策課 開催は知らせていない。撤去の意思があるとは、初耳だ。
――北斗関係者は行政処分に対する審査請求をしている。把握しているか。
対策課 個人情報なので、なんとも申し上げられない。
――資料も確認したから、間違いない。北斗側は「審査請求の決定前に撤去に応じることはできない」と主張している。説明会で、この件について触れなかったのはなぜか。
対策課 個人情報だから、公表できない。
――この事案の進展については大きな要素になる。意図的に公表しなかったのか。
対策課 仮にそれが(審査請求が)事実なら、個人情報だから、公表できないとお答えするしかない。
――審査請求について、鹿児島県は関与がないのか。
対策課 一般論では行政庁(環境省)から、処分庁(鹿児島県)に弁明書を出すよう連絡が来るという手続きはある。そもそも個人情報なので、申し上げることはない。
――(株)北斗が原氏を相手に、民事訴訟を起こしていることを知っているか。
対策課 これも個人情報なので、答えられない。
――北斗関係者が撤去に応じるとなった場合、今後の対応はどうなるのか。
対策課 どのタイミングで、撤去の応じる旨を通知されるかによる。県としては、措置命令の期限を過ぎても撤去されなかったという行動を見て、排出事業者への自主撤去を申し入れた。
――撤去した後、最終処分先は県外になるのか。排出事業者にとっては、撤去費用は少しでも安いほうがいい。
対策課 鹿児島県の要綱で、県外廃棄物の搬入規制はあるが、今回は、要綱があるからというより、県外から持ち込まれた物なので、県外へということである。
――不法投棄された総量を調べるための実測はしていない。なぜか。
対策課 谷山氏からの報告徴収で約8,500m3と判明している。
――実測はしないのか。予定はあるのか。
対策課 現時点では実測は実施していない。今後の検討についても、申し上げられない。
――8,500m3にこだわるのは、なぜか。谷山氏はどういう根拠で、その数字を出したのか。谷山氏の報告書には、裏付け資料も添えてあったのか。
対策課 谷山氏からの報告徴収では、文書に2行書かれていた。1カ所に8,200m3、もう一箇所に300m3。合計が8,500m3。
――たったそれだけでその数字を信じるのか。
対策課 あくまで報告徴収による数字だ。
――Bでの撤去費用にいくらかかるかわからない状況で、AかBか選択しろというのは、難しい話ではないか。現時点で、予算がわからないのか。
対策課 Aで撤去された後の状況で、Bとして協会と行政が話し合って、費用を算定する。それでもすでに170社がBを選択している。
――排出事業者の社名公表について。説明会では、過去の事例を示して行政文書の開示請求があった場合には応じる可能性があるとしている。データ・マックスが県に対し、開示請求したが、不開示だった。
対策課 これは過去の事例を提示したまで。あくまで情報提供であり、迫ったわけではない。開示請求があった時点では、開示の対象ではなかった。
――いずれ開示されるタイミングが来るということか
対策課 その時点での判断になる。現時点でも排出事業者リストは公表していない。
――このような説明があれば、多くの業者は行政からの「圧力」だと捉えると思うが。
対策課 過去の事例があるので、紹介した。開示請求に応じるとは言っていない。紹介した事例がどの段階で行われた決定なのか、把握はしていない。
――マニュフェストの記載事項に不備があったものは、自主撤去対象となっている。中には日付が記載されていないことで、不備となったものもあると聞いている。適正に処理されたものもあるのではないか。
対策課 逆に適正に処理されていれば、書類はいい加減でいいのかということにもなる。関係者の言い分もわかるが、それもおかしな話。
紛糾した説明会と同じ。納得のいく回答は少なかった。
(つづく)
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