藤井聡教授に聞く~国民に集団自殺を促す「消費増税」を凍結せよ!(中)
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京都大学大学院工学研究科 教授 藤井聡氏
この4年間でGDPは年平均約0.2%しか伸びていないのです
緒方 前回、大企業と中小企業では、その景況感に大きな格差を感じました。その解消にはどのような対策が考えられますか。
藤井 大企業と中小企業の最も大きな違いは、マーケットがドメスティック(国内)なのか、海外をも含むのかということになります。中小企業の景気が悪いのは、内需が冷え込んでいるからです。一方、大企業が良いというのは外需に頼っているからです。2014年の「消費増税」(5%➡8%)から現在まで、我が国GDPは約18兆円(実質値)増えました。しかし、そのうち15兆円は「輸出」によるものです。
もしも輸出が伸びていなければ、この4年間にGDPはたった3兆円(18兆円-15兆円)、1年あたりの換算で、0.7~0.8兆円、成長率にして、実に年平均約0.2%しか伸びていません。そして、この「外需」というものは、外国の事情でいとも容易に冷え込む傾向にあります。
中小企業対策の本丸は「内需」の拡大で、内需の拡大の本丸は「消費」です。国民の消費を拡大させる最善の方法は「消費減税」です。仮に、消費税を3%減税できれば、実質消費は3%確実に上昇し、中小企業経営にとって極めて大きなボーナスとなります。
そのことによって中小企業の売上が増進すれば、賃金・投資の拡大➡需要(内需)の拡大&物価の上昇➡企業の売上増進➡賃金・投資の拡大➡需要(内需)の拡大&物価の上昇という好循環「インフレ・スパイラル」が動き出します。一旦、インフレ・スパイラル(消費は一国の経済を成長させる最大の「エンジン」)が動き出せば、後は勝手に動き続けて、諸外国同様、わが国日本も普通に成長していくことができます。
世界73カ国成長ランキングで日本は断トツの最下位である
緒方 先生は本書で、日本が1997年から成長ができなくなった理由は、「アジア通貨危機ではなく消費増税」と喝破されています。少し、解説を頂けますか。
藤井 総務省統計局『世界の統計2017』の20年間の成長ランキング(1995年~2015年までの20年間の名目GDP成長率)によると、日本は世界73カ国で断トツの最下位です。
世界平均が+139%(カタール+1968%、中国+1414%、ナイジェリア+908%が上位3位、同じアジアの韓国+139%、72番目のドイツは+30%)で、日本は-20%(73カ国でマイナス成長は日本のみ)です。世界の中で日本はもはや既に「経済大国」の地位を失っているばかりか、唯一「貧困化」してしまいました。今、敢えて我が国を分類するなら、先進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも言わざるを得ない状況になっているのです。日本以外のアジア諸国は「危機」を脱し、元気に成長した
その「衰退」(デフレ化)は1997年を境に始まったことが判っています。問題はなぜそうなってしまったかということです。では、1997年には何があったのでしょうか。この問題は経済学者やエコノミストの間で繰り返し議論され、2つの説が主張されています。
1つが、1997年のアジア通貨危機(1997年7月よりタイを中心に始まった、韓国やフィリピン、インドネシアなどのアジア各国の急激な通貨と株価の下落現象)であり、もう1つが、既に指摘した1997年の「消費増税」(3%➡5%)です。そして、圧倒的多数の専門家は、夏場に発生した「アジア通貨危機」の影響が大きいと考えています。
しかし、私は「アジア通貨危機こそがデフレ化の原因だ」という説は単なる「間違い」と考えています。その理由は本書を読んで頂ければ明解にご理解頂けます。ここでは、そのうちのいくつかをご紹介させて頂きます。
まず、もしもアジア通貨危機がデフレ化をもたらした原因であるとするならば、デフレ化したのは日本だけでなく、アジア諸国も同様にデフレ化している筈です。むしろ、アジア通貨危機のダメージは、日本よりも、その危機の中心地であった、タイや韓国、インドネシアといったアジア各国の方がより深刻であったからです。しかし、日本以外のアジア諸国は当時の「危機」から完全に脱しており、その後、デフレに突入することなく、元気に成長を続けています。
次に、そもそも、日本のGDPは、「政府の支出」、「企業の支出」、「輸出」、そして「消費」の4つの合計値で構成されており、このうち最大なものが「消費」で全体の6割を占めます。つまり、消費(一国の経済を成長させる最大の「エンジン」)が拡大すれば、経済は成長し、冷え込めば瞬く間に日本経済全体が停滞するのです。理論的に考えても、「消費税」は日本経済を停滞させる巨大な力を持っていると結論づけることができます。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
藤井 聡(ふじい・さとし)
1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授。京都大学工学部、同大学院修了。京都大学助教授、東京工業大学助教授・教授、イエテボリ大学心理学研究員を経て2009年より現職。11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長。12~18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞など、受賞多数。専門は、公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書に、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』(晶文社)、『プライマリー・バランス亡国論』(扶桑社)、『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)など多数。
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