【大阪市水道工事不正問題】全体の約7割で業者による不正工事が発覚~市職員関与有無が今後の焦点に
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大阪市は12日、同市水道局が発注した水道管工事の際、発注仕様と異なる不正な資材による埋め戻しなどが行われていた問題について、今年度内中に業者や工事に関する調査を完了させた後、該当する業者に対し、指名停止措置(3カ月間相当)や損害賠償請求を行う考えを示した。これまでに不正が判明した工事は、2012年度以降に発注した1,445件のうち約7割。関与した業者数は300社以上に上る。自治体発注の工事で、これほど多くの不正が判明するのは異例だ。市では現在、弁護士から成る外部監察チームによる調査が行われているが、局職員の不正への関与が明らかになれば、水道局全体の問題に発展する可能性がある。
同局が業者による不適切な施工を把握したのは、2017年4月の外部通報がきっかけ。通報内容は、22件の水道工事で、市の仕様とは異なる資材(残土、再生砕石など)による埋め戻しが行われているというものだった。同局は、通報に基づき、業者11社に対するヒアリング調査や掘削調査などを実施。その結果、市の発注仕様書とは異なる粒度調整砕石を使用するなど不正な施工が判明したほか、業者が提出した納品伝票の偽造も発覚した。その後、完了済みの水道工事(漏水修繕など含む)1,175件、施工中270件についても調査の手を広げたが、完了済み工事のうち約9割、全体の約7割で不正が判明。不正が常態化していたことが明らかになった。
市による業者への聞き取り調査では、すでに300社以上が不正を認めている。それぞれの業者が独自に不正を行ったとは考えにくく、業者間で情報を共有していた可能性が高い。多くの業者がリスクをおかしてまで不正を働いた理由は、コストだ。たとえば、指定の改良土や粒度調整砕石を購入する場合、1m3あたり2,000円〜3,000円程度を支払う必要があるが、指定外であれば、タダ同然で調達できる資材もある。舗装を復旧してしまえば、不正が露見することはまずない。業者の利益だけを考えれば、合理的な手口だが、社会的には、当然容認できるものではない。
外部からの通報を受けるまで、同局が業者による不正の事実を把握していなかったのは、不自然だ。水道工事を含め、自治体が発注する工事では、担当職員がつき、工事完了まで見届けるのが普通だからだ。職員が不正を見落としたのであれば、それも問題だが、故意に不正を見逃したのであれば、さらに大きな問題になる。
福岡市水道局では、水道工事にともなう埋め戻しのための資材は、局指定の「処理土」などが使用されている。水道工事による埋め戻しが完了した後、局の監督職員が現場に出向き、コア抜きなどを行い、工事の適正を確認することになっている。同局担当者によれば、「現場確認により、不適合が発覚し、是正したことはない」と話している。
北九州市上下水道局にも、埋め戻し資材の指定がある。水道工事完了後、地質調査コンサルに外注し、現場の土の圧密検査を行っている。業者が埋め戻しなどを行う際には、作業中の写真を提出させ、施工プロセスをチェックしている。同局関係者によれば、「業者による不正資材の使用などは、不可能に近い」という。
通常の水道管工事は、道路下で行われるため、埋め戻し資材は、国や県、市町村の道路管理者が指定する。埋め戻し資材を指定する理由は、密度の高い土を使用することで、道路として十分な転圧強度を確保することにある。不正な資材で埋め戻した場合、十分な転圧強度が確保できず、地盤沈下や陥没などのリスクが高まる。
両市の事例に照らせば、大阪市で発覚した大量の不正工事は、本来「ありえない」事態だといえる。業者の不正追及だけでなく、不正をスルーした市の管理監督上の責任も問われることになりそうだ。
今回の問題を受け、吉村洋文・大阪市長は、自身のツイッターで、「大阪市が発注する取引の公平性を確保するための抜本的な組織改編に取り組む」「取引方法の在り方も抜本的な見直しが必要だ」などと発言している。外部監察チームの調査結果によっては、大阪市政に大ナタが振るわれることになる。
【大石 恭正】
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