2024年11月23日( 土 )

【スクープ】鈴木直道前夕張市長に中国系元大グループへの利益供与疑惑~10億円購入資金準備の航空会社との面談を拒否

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中国系航空会社が10億円購入資金を準備も、鈴木市長面談は拒否

 新千歳空港に乗り入れている中国系航空会社が2016年の夏から秋ごろ、夕張市所有のホテルやスキー場を10億円以内で購入するために鈴木直道市長(当時)に面談を申し入れたところ、市の担当者がそれを拒否していたことがわかった。その後、購入をもちかけられたホテルとスキー場は2017年4月に、中国系企業の元大グループ(資本金100万円)に約2億4千万円で売却されている。

 中国系航空会社の最高購入予定額と元大グループへの売却額の差額は7億円以上。鈴木市長と中国系航空会社との面談が実現せず、売却が具体化しなかったために、夕張市は7億円以上の売却益を上積みする機会を逸していたことになる。10億円相当の価値が認められた物件を約2億4千万円で売却したことになり、鈴木氏が元大グループに対する売却を前提に航空会社との面談を拒否していたとすれば、元大グループに対する7億円以上もの利益供与にあたる可能性すら出てきた。

売却されたホテルマウントレースイ

 中国系航空会社の担当者は当時、現地視察のために購入を検討していた夕張市所有のホテル「マウントレースイ」に宿泊。物件を確認した後に夕張市役所を訪ねたが、夕張市の売却条件(公募参加資格)に「日本国内に登記されている法人」という条項が入っていたため、当時の鈴木直道市長と直接交渉したいと市に面談を申し入れたが、「別の企業と交渉中」を理由に面談を拒否されたという。中国系航空会社の担当者は、北海道銀行や道庁職員に間に入ってもらって市長面談を実現して購入交渉に入ろうともしたが、「交渉のテーブルにもつけなかった」という。

 「なぜ、資本金100万円のペーパーカンパニーにしか見えない元大グループに売却されたのか、今でも理解できない」(中国系航空会社の関係者)。

 新千歳空港に乗り入れている実績があり、しかも高値で購入の可能性があった中国系航空会社と鈴木市長の面談が実現しなかったのはなぜか。4月5日に担当の夕張市産業振興課の古村賢一課長に聞くと、航空会社の関係者と接触した記憶がないという。航空会社の担当者は、「道庁から夕張市に派遣されていた職員に市長面談をお願いした」とするが、古村課長は、「当時の職員(道庁に戻った後に元大グループに転職)に、直接聞いて欲しい」と自ら問い合わせることを拒否した。通常であれば残されているはずの、道庁派遣職員が課長に提出した報告書などについても問い合わせたものの、「公募と売却のプロセスに問題はない」と、事実関係の確認すらしようとしなかった。さらに、元道庁職員に話を聞くために夕張駅前のホテルを訪ねたが、「役所を辞めても守秘義務があって話すことができない」と、中国系航空会社との面談の有無さえ回答することはなかった。

夕張市政の「ブラックボックス」

北海道知事選に出馬した、鈴木直道氏

 財政破たんした夕張市の市有財産は、可能な限り有効活用するのが市長としての義務のはずだ。より高く購入した可能性のある企業の市長面談要請を断り、ペーパーカンパニー疑惑すらある元大グループへ売却したのは、市民に対する重大な裏切り行為ではないか。中国系航空会社は新千歳空港に乗り入れているため多様なツアープランを組むことができ、夕張市のホテルやスキー場を購入していれば外国人観光客は確実に現在よりも増えたはずだ。3月末で廃線となった夕張支線も残すことができた可能性もある。

 ちなみに、元大グループへの売却が適切と判断した有識者(専門家)会議は、メンバーの名前すら非公開で「議事録も公開できない」(古村課長)という。まさに、資本金100万円で同じビル内に暴力団事務所がある元大グループへの売却が問題ないと結論づけられたプロセスがブラックボックス化しているのだ。小池百合子都知事は、東京都庁の隠蔽体質を「ブラックボックス」と表現したが、この "闇"(情報隠蔽体質)が、元都庁職員の鈴木直道市長(当時)によって夕張市役所にも再構築されたような印象すら受ける。

 元大グループはホテルとスキー場を今年3月末に香港系投資ファンドに15億円で転売の方針と報じられた(2月20日『日本経済新聞』、21日『北海道新聞』)。「日本国内に登記されている法人」を売却公募の条件にしておきながら、契約書に転売禁止を盛り込まずに2年後に香港系投資ファンドに転売されたとすれば、最初から国内登記法人の条件を撤廃して中国系航空会社に売却していても何ら問題はなかったはずだ。

 元大グループと比べると資本金が桁違いに大きいうえに北海道との縁も実績もある中国系航空会社との話を断り、「長年にわたり(ホテルやスキー場の)営業を継続していきたいというお話」(鈴木市長の2017年2月8日の市議会答弁)を反故にしてわずか2年で転売するような元大グループになぜ売却したのか。鈴木氏が「弱みを握られていた」、あるいは「癒着していた」などと疑われるのは当然だろう。

 億単位にのぼる市の財産が売却される過程が闇に包まれたままでいいのか。鈴木氏は説明責任を果たさないまま夕張市政の重大問題を担当者に任せて選挙活動を本格化、北海道知事への階段をのぼることで利益供与疑惑を闇に葬ろうとしているのではないか。

 こうした経過を聞いた弁護士は「億単位の損害を与えた疑いがある鈴木市長(当時)の責任を問う住民訴訟に発展する可能性もある」との見立てを披露、北海道知事選後も鈴木夕張市政の闇を明らかにしようとする動きが強まりそうだ。

【横田 一/ジャーナリスト】

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