2024年11月23日( 土 )

“人を育て、活かす” 原点回帰にて新たなる挑戦(4)

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エントリーサービスプロモーション(株)
(エントリーグループ)

協同組合での外国人技能実習生の受け入れ

 同社は19年4月より、外国籍のスタッフの登録を開始した。さらに今年の秋(11月前後)に外国人技能実習生を受け入れる事業にも参入することとなる。『日本国際人材開発協同組合』の名称で、新井代表が理事長となり、エントリーグループの一事業として立ち上げる。

 同協同組合設立の意義については、「弊社のお客さまの声に応じたことが大きいです。まさに人材不足の解決が一番です。加えて弊社でリサーチしたところ、外国籍の方々で“我が国で仕事をしてみたい”とする傾向が強まっております。現況、いわゆる高度人材が必要な分野でも人材不足に陥っております。それらにおいては、アジア諸国で有能な人材が多数存在することがわかっております。我が国で仕事がしてみたいと希望する人材を生かすため弊社が関わり、お互い最適な関係を構築する事業を、これからつくっていくのが使命です」(担当部長)と語る。

 「弊社は今年で設立44年になります。お客さま、そして登録スタッフ、弊社社員が共存共栄する関係性で、事業をつくり上げてきました。今日までともに築き上げてきたノウハウを駆使した体制で協同組合を運営していく所存です。外国の方々は、言葉もさることながら我が国の生活風習や礼儀礼節、人間性などまったくわからないのです。その点をじっくり丁寧に教育し、相互理解に努めていきます。教育については、弊社が独自に積み上げてきた手法があります。国内の登録スタッフと変わらぬカリキュラムで、よりわかりやすくしていきます」(新井代表)。

 過去我が国では、外国人技能実習制度を実施してきたなかで、企業と外国人技能実習生との間で発生した事件やトラブルは枚挙にいとまがない。勤務時間、報酬、休日休暇、福利厚生などの相互間での理解不足、企業側の搾取、外国人技能実習生の素行問題など、お互いにとって不利益な事象が発生している。それらについては、「当然存じております。弊社でも、外国人技能実習生についての問題点・課題を抽出してきました。それらの点についてまとめると、まず、“外国人技能実習生が我が国で、日本人と同じように生活ができて、毎日が充実していること。そして受け入れるお客さまの企業は、外国人技能実習生を戦力として仕事に就かせていただくことで共生する”ことありきです。お互いが尊重できて役割を全うしていただくような風土を弊社がつくっていくことです」(担当部長)。

 要するに、ただ単に不足分の人数をそろえて「はい、どうぞ」と同社の顧客に派遣するものではない。まずは、外国人技能実習生の候補者の人間性を厳正に見極めたうえで、同協同組合で受け入れるかどうかを決める。受け入れを決めたら、同社が蓄積した教育によって育成する。顧客の受け入れ先企業には、外国籍の方々の存在を正しく理解してもらえる経営者と協業していく方針である。「外国籍ということで、日本人と違った見方をするのではなく、日本人と同じように接して共生していただけるお客さまと一緒に取り組んでいきます。受け入れ先のお客さまとは、よりきめ細やかなコミュニケーション、リレーションを実践していきます」(新井代表)。

 実習生として迎えるのは、まずはベトナム人からとなる。「最初からあまり広げすぎると、中途半端な対応になります。それでは皆が不幸になります。まずは、ベトナムの方々から受け入れを始めて、事業の推移を見守りながら、次の展開を吟味していきます。規模は1社あたり3~10名で、100社を目指し約500名の受け入れを計画しております。当面は、事業の基盤をつくりながら実績を積み上げていきます」(担当部長)。

 つまり、当初は小規模の受け入れ人数で同協同組合内のノウハウをこしらえて、将来的には300~1,000名規模の事業に進化させていく方針である、そのためにも、事業の基盤づくりに徹する意向である。

 この技能実習生の事業を通じて、「お客さまの深刻な人材不足の課題解決の役に立てると同時に、ベトナムを始め将来的にはさまざまな国と関係をつくっていきます。その国々の経済活性化を通じて国際貢献に直結していくことが、我々が視野に入れており、望んでいることです」(新井代表)と自社事業を通しての国際貢献を実施していく決意を語る。

 また、「この44年間、弊社は地元福岡で人材派遣業を中心とした人材の育成と輩出に力を注ぎ、お客さまと登録スタッフの支えのおかげで今日があります。皆でつくり上げてきた“エントリー”というブランドをこの外国人技能実習生の事業を立ち上げ実績をつくることで、さらに高めて、お客さまのご繁栄、そして登録スタッフの充実した仕事とともに幸せな人生づくりのお手伝いを続けていきたいです。グループをあげて今日まで積み上げた弊社のノウハウを注いでいきます」(担当副部長)と意気込む。

 業種・職種については、「お客さまからあらゆるリクエストや問い合わせがありますが、当面は人材不足がどこよりも深刻となっている建設関係と食品加工(惣菜・弁当)のお客さまが対象となります。しかし、外国人技能実習生をすぐにお客さまに受け入れていただくことはできません。我々の教育は約6カ月間を要しますが、それくらい綿密に取り組んでまいります」(担当部長)と当面は限定した事業展開となる。

 繰り返すが、その動向を見極めながら、次の一手を選定していくこととなるのだ。人材業界のプロフェッショナルである同社ではあるものの、外国人技能実習生事業は初めての試みである。“机上の話”はいくらでもできるが、実際の事業展開となれば想定外の事象が発生する。なぜならば“人”が行うことだからである。その想定外の事象についてどのように対応していくかは、事業を進めながら行いノウハウを積み上げていく方針である。よって、最初から大掛かりに実施するのではなく、できる範囲での事業展開を選択するのである。

(つづく)
【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:新井 洋子

所在地:福岡市中央区天神3-6-26
設 立:1975年7月
資本金:1億円(グループ合計)
売上高:(19/3)約23億円(グループ合計)

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