2024年12月21日( 土 )

百貨店としての本流を守り、進めていく(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)井筒屋 代表取締役社長 影山 英雄 氏

代表取締役社長 影山 英雄 氏

百貨店の本流・本道を歩み続ける

 ――お客さまからの大きな支えがあることは、何よりの原動力ですね。

 影山社長 百貨店・井筒屋としての商品展開と価格帯、そしてサービスなどMDにおいて「百貨店らしさを追求していく」そして「地域密着を徹底しましょう」、この2つを礎に事業をつくっていくことに尽きます。当社が進出するまで小倉の街には百貨店がなかったのです。

 1935年7月に当時小倉市長であった神崎慶次郎氏が、「百貨店がない街は、街と呼ぶにはふさわしくない」として、神崎市長が経営しておりました旅館『梅屋』を差し出していただき、呉服店『井筒屋』を経営していた住岡由太郎氏との共同出資により、当地に初めて百貨店が誕生いたしました。その当時の創業への想いが、当社の原点です。まさに原点回帰する時期であるかと存じます。

 当初は、町名からとった『寶屋』を商号とする予定でしたが、住岡氏が「呉服店を廃業する。出資をして百貨店業に捧げたい。井筒屋の屋号は残してほしい」として現商号が続いております。先人の並々ならぬ情熱が伝わってきます。

 ――東京・名古屋そして京阪神(京都、大阪、兵庫・神戸)とは違う、地方都市としての百貨店の価値創造についてお聞かせください。

 影山社長 地方都市、北九州・小倉地区には富裕層のお客さまがたくさんおられます。ご存知の通り、北九州は、官営八幡製鐵所が操業し、当時日本の基幹産業である鉄鋼で産業界をリードしてきました。石炭産業も盛んであった当時の北九州は、国内経済をけん引する存在でした。それらの関連する企業の継承者が、現在も地域で活動されております。その方々との接点を大切にして、当社をご贔屓にしていただけることです。その1つとして、いわゆる“外商”をより強化してまいります。これまで以上の人的な関係性を密接にしていくようなサービスを実践いたします。

 そして本館6階家庭用品売り場の一角に『Kitakyu Columbus(きたきゅうコロンブス)』と名付けたコーナーを展開しております。小倉および北九州近郊では“ものづくり”に励んでおられる方々─工芸品、陶芸品、衣料品、食品など幅広いジャンルで“ものづくり”で地域に貢献されている方々がたくさんいらっしゃいます。その方々と連携して売り場をこしらえました。現在約70名の作家の方々と契約し、さらにその方々がお知り合いを紹介くださり、ご縁の輪が広がっております。

 また、作家の方々の年齢層は、比較的若い世代の方々が多く占めております。その若い世代の感性が生かされることで、同世代のお客さまにもお越しいただける機会を創出しております。今後は物販だけでなく、若い方々の感性を前面に出した企画やイベントを探っていきたいですね。

 ――Kitakyu Columbus(きたきゅうコロンブス)は、どこにもない百貨店としての新たな情報発信となりますね。

 影山社長 そうです。以前は、その作家の方々のところまで出向いて購入されていたものが、「井筒屋で買えるようになった」となりまして、作家の方々と当社にとって良好な成果を上げる情報発信となっております。

 ――今期から新たな中期3カ年計画を実施されます。それを鑑みながら、5年後、10年後の御社の将来像をお聞かせください。

 影山社長 前述させていただきました、「百貨店らしさの追求」と「地域密着を徹底しましょう」の2つを遂行していくことです。これ以外ありません。「百貨店らしさの追求」は、当社にお越しいただくお客さま、外商のお客さまとのご縁を大切にすることです。百貨店の本流に沿う、つまりお客さまとリアルに向き合って、お客さまの声に耳を傾けて、井筒屋としてのMDを基準にしてソフト・ハードを整えて、サービスを展開していくことです。この理念は、何年経過しても不変です。

 井筒屋という百貨店にお越しいただき、心から楽しんでいただき、「また来よう」となるような空間を創造するために、日々の仕事に汗水を流し、収益を上げて、より発展するための投資ができる経営を行っていきます。近時の試みとして、本館1階をコスメティック関係のMDに統一致しました。若年層を中心としたお客さまが増加するなど、前年より約10%入店客数が増加しております。

 また、ハウスカードのご利用も若い世代の方々が増加傾向です。この流れを大切にして、より強化していきます。ポイントは、ラグジュアリーブランド、コスメティック、そしてインテリアです。インテリアについては、リニューアルして現在のトレンドに沿ったMDを展開しております。これまで以上に、百貨店だから買える商品・サービスそして空間を提供していきます。また、同業他社はインターネット関連での事業展開や不動産関連など事業の多角化を行っておりますが、当社はそれを目指すことはありません。これまで行ってきた百貨店業の本流を歩んでいくのみです。

(了)
【文・構成:河原 清明】

(前)

関連記事