アジア、世界を襲う水と食糧不足の危機:今こそ日本の出番!(前編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年10月25日付の記事を紹介する。
世界的に水問題が深刻化している。地球温暖化の影響と思われるが、異常気象の猛威が荒れ狂うようになった。日本も例外ではないが、バハマ、ハイチ、フィリピンなど発展途上国では被害は計り知れない。自然災害は火山の噴火や地震など枚挙のいとまがないわけだが、台風や津波など水害も規模が拡大する一方である。この10月、日本を襲った台風19号による河川の氾濫はかつてない規模であった。河川や海岸線の管理も待ったなしといえよう。
また、人口増加や経済発展の結果、世界的に水の安定供給が難しくなっていることも懸念される。なぜなら、生活の安定や向上に水は欠かせない資源であるからだ。世界では6億6,000万人が安全な飲料水にアクセスできない環境に置かれている。更に24億人もの人々が水の浄化施設の恩恵を得られない生活を余儀なくされているのである。これが世界の現状だ。
日本政府の見通しでは、「2030年までに世界は生活用水が40%も不足する事態に直面する」という。経済産業省では「水産業の海外展開戦略」を提唱し、日本企業が有するさまざまな水関連技術や特許をテコにして、世界的な水環境問題の解決に率先して取り組む姿勢を内外に示している。
具体的には、水環境を改善させる目的で、日本政府はODA(開発援助)として2012年から2016年の間だけでも65億ドルの資金を提供してきた。この分野で日本は世界最大の貢献をしていることは間違いない。ドイツ、フランス、アメリカをはるかに上回る協力を実施しているわけで、日本の水関連技術は途上国を中心に広く普及している。
特に、「メンブレン・バイオリアクター(MBR)」と呼ばれる特殊な膜を通じて汚染水を浄化するテクノロジーは日本が世界のトップを走るものである。この技術のお陰で、世界各地で下水など汚染された水がきれいな水に変身している。また、海水など塩分を含む水が飲料水に転換されるのである。
とはいえ、こうした日本の先端技術は世界市場で見ると、まだまだ普及が限られている。その背景にあるのはコストの面もさることながら、海外市場の開拓における日本企業の積極性と柔軟性の欠如が影響しているようだ。日本政府のODAに「おんぶにだっこ」では猛烈な売り込み攻勢を仕掛ける欧米の水企業に太刀打ちできない。
ベオリアやスエズなど「ウォーターバロン」と異名をとるフランスやイギリスの企業に追いやられているのが現状だ。近年はMBRを製造する企業も増えており、シンガポール、中国、アメリカなどの企業が日本発の技術を元に市場の拡大に積極的に取り組んでいる。このままでは、日本が誇る「水技術」が水泡に帰してしまいかねない。官民一体となった日本発の水関連技術の輸出促進が望まれる。
※続きは10月25日のメルマガ版「アジア、世界を襲う水と食糧不足の危機:今こそ日本の出番!(前編)」で。
著者:浜田和幸
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