シェアリングオフィス事業「We Work」の企業価値暴落(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
第2のウーバーとしてもてはやされていたシェアリングオフィス事業の「We Work」の企業価値が坂道を転げ落ちるように下がっている。一体「We Work」に何が起きているのだろうか。
「We Work」はソフトバンクグループのビジョン・ファンドから巨額の投資を受けることによって、一躍有名になった企業である。孫正義氏の投資神話は、2000年当時、アリババの創業者ジャック・マーに2,000万ドルを投資し、数千倍のリターンを得たことから始まっている。その後も、孫氏は革新的なテクノロジーに積極的に投資し、世界を驚かせてきた。
孫氏は2017年、サウジアラビア政府から450億ドルの投資誘致にも成功し、1,000億ドルのビジョン・ファンドを組成することで、全世界の注目を集めると同時に、 豊富な資金力を利用し、ユニコーン企業に積極的に投資をしてきた。
ビジョン・ファンドから投資を受けた企業は、巨額の資金を確保できたことで、初期には事業が順調に伸びているように見えた。ところが、最近になってビジョン・ファンドから投資を受けた企業が軒並み赤字を垂れ流し、企業価値が暴落しており、孫氏の投資方法に疑問がもたれ始めている。投資をしたのは良いが、企業価値を無理やり吊り上げ、バブルをつくったつけがソフトバンクに回ってきていると噂されている。「We Work」の企業価値暴落は、第2のITバブル崩壊の引き金になり、ひいては商業用不動産市場に悪影響を与えるのではないかと懸念されている。
2010年に設立された「We Work」はわかりやすくいえば、不動産賃貸業を営んでいる企業である。「We Work」のビジネスモデルは、ビルを10~15年の長期で賃借し、それを小分けにして、個人や法人に短期で賃貸するサブリースの事業である。
「We Work」は設立以降順調に成長している。米国のニューヨークを筆頭に、世界29カ国、111都市に進出をはたしている。「We Work」は韓国にも進出し、江南駅、乙支路、三成駅など、ソウル都心と釜山など、20カ所にオフィスを構えている。「We Work」はニューヨークでは、71万 5,400m2, ロンドンでは38万900m2のオフィススペースを確保しており、それぞれの都市で最大の借り手となっている状況である。
サンフランシスコ、インド、中国の上海などでも、相当なスペースを確保しているようだ。しかし、「We Work」の実態は、ただの不動産賃貸業で、何も目新しいものがない。顧客はどうしても初期のベンチャー企業になるので、景気に敏感にならざるを得ず、収益の安定性に欠けているという指摘もある。すなわち、長期的にオフィスを借りられるのは、大企業に限られるので、ビジネスモデル自体に不安定さがあるという話である。
「We Work」の企業価値が暴落した現在、「We Work」は財務的にもとても厳しい状況となっていた。このままのペースで行けば、間もなく資金は底をつきそうな状況であった。ところが、「We Work」はソフトバンクグループから追加で50億ドルを投資してもらうこととなった。しかし、今回の投資で「We Work」が立ち直るかどうかはまだわからない。
(つづく)
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