注目を集めている北極海航路(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
夢のような北極海航路ではあるが、課題がないわけでもない。氷が溶けて北極海航路の運航ができるようになったとはいえ、依然厳しい気候条件下にあることには変わりない。氷の海を安全に運航するためには、氷に遭遇し、氷にぶつかったとしても、船舶が壊れないように船体を丈夫にする必要がある。また、プロベラや舵などを氷から保護する必要もあるし、各種の機器などは超低温や凍結から守る装置が必要になってくる。1年間の数カ月を除いて、運航の際、どうしても砕氷船を投入しなければならない。
このように北極海航路には南回りのルートにはない高額なコストが付きまとう。それに、砕氷性の利用料や保険料なども南回りに比べてかなり割高で、現在のところ、コスト面のメリットがあまりないのも課題である。それに、気象・海象予報の精度や航路標識・海図の整備が不十分であるうえに、定期船の修理や救難の受け入れの対応など、寄港地のインフラ未整備も課題である。
北極海航路の運航には事前にロシアの許可が必要である。というのは、陸地から12海里以上離れた海は公海とされ、船舶の航海については"公海自由"が適応される。ただし、氷で覆われた水域については、沿岸国が管理しても良い、という例外規定がある。これを盾にとって、ロシアは北極海航路を自分の領域だと主張し、今はロシアの許可が必要になっている。ということは、航海の自由がないのと同じである。これも課題の1つである。
北極海航路をめぐっての各国の動きを見てみよう。北極海航路に一番積極的に取り組んでいるのは当事者であるロシアだ。経済制裁が科されているロシアは北極圏に眠っている資源を開発して東アジアに売りたいのだ。ロシアは北極圏で生産された天然ガスをLNGに加工し、北極海航路を通じて東アジア・ヨーロッパ・南米諸国に輸出するプロジェクトを進めている。
中国もエネルギー確保の安全保障上、有意義である北極圏プロジェクトに前向きである。中国は資金なども提供してこのプロジェクトに積極的に関わっている。中国の海運会社の最大手であるコスコは2013年と2015年の二回にわたる試験運行に成功し、運航技術の確保と人材の確保にも注力している。
韓国も、ロシアをはじめ、ノルウェーやグリーンランドと北極海航路と資源の開発について協力関係を構築している。また東アジアのトップハブ港である釜山港を、北極海航路の海運においてもハブ港にしようと計画を進めている。さらに、韓国は造船先進国として砕氷船開発技術においても他国をリードしている。韓国は世界初の砕氷LNG船を建造し、ロシアに納品した実績ももっている。砕氷船は平均時速25.9kmで走るという。
以上のように、地球温暖化の進捗と造船技術の発達で、北極海航路は段々現実味を帯びてきている。これが実現するかどうかは、国際法の整備など、上記の課題を解決できるかどうかにかかっているだろう。
(了)
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