2024年12月27日( 金 )

日本の政治の何が問題か(3)

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拓殖大学大学院地方政治行政研究科 特任教授 濱口 和久 氏

日本に民主主義は根付いているのか

 日本に本格的な民主主義が入ってきたのは日本がポツダム宣言を受託し、第2次世界大戦に敗れてからである。戦前も議会(帝国国会)はあったが、現代のような普通選挙(選挙制度)ではなかったし、民主主義に対する理解も国民の間で大きな差があった。

 では、現代の日本を見た場合、民主主義はうまく機能しているのか。私は若いときに、日本の政治の中心である永田町で働き、国政選挙にも挑戦した者として述べるならば、国民のレベル、政治家のレベル、そして、政治を監視する役目を担うマスコミも、民主主義をいい加減に扱っているようにしか思えない。
 実際、第2次安倍晋三政権発足から現在までの期間で、野党の国会対応を見ていると、民主主義を弄んでいるかのような行動を続けている。

 報道機関であるマスコミも同様だ。産経新聞は安倍首相応援団のような論調を展開し、政権とべったりのような報道を続けている。独裁国家の北朝鮮の『労働新聞』や中国の『人民日報』じゃあるまいしと、言いたくなる。産経と真逆なのが、朝日、毎日、東京新聞、テレビ局ではTBS、テレビ朝日などだ。ときにはヒステリックなほどの安倍首相バッシングの報道を展開している。両者ともに正しい情報を国民に伝えているとは言い難い。そのため、国民には知る権利があるが、判断する材料が乏しく、一定の方向に世論が誘導される傾向が強くなる。「安全保障関連法案」や「森友問題」が国会で審議されていたときのマスコミの報道姿勢は、間違いなく一定の方向に世論を誘導していた。

 ここでは、記憶に新しい「森友問題」について触れておこう。「森友問題」は財務省が国有地を破格の安さで売却したとことが問題となり、野党は安倍政権を厳しく追及した。安倍首相夫人の口利き疑惑までもが飛び出す事態となった。財務省は最後まで国有地を破格の安さで売却することになった本当の理由を国会で答弁しなかった。疑惑追及に立った野党の政治家も国有地が破格の安さで売却された理由を知っていながら、あくまでも別の視点(口利きや財務省の忖度があったのでは)で追及を続けた。マスコミも本当の理由を知っていたが、一切、真実を報道しなかった。それはなぜか。「森友問題」は同和問題(部落問題)が絡んでいたからだ。現代の日本では同和問題はタブーであり、マスコミも部落解放同盟の攻撃を恐れて真実を報道する勇気がなかった。野党は同和問題のタブーを逆に利用して、一切、同和問題に絡めた質問はせず、安倍政権を追及する演出を行い、政権に打撃を与えようとした。マスコミも野党に追随して安倍政権の疑惑を煽る報道に終始したのである。そして、国会は延々と「森友問題」に時間を費やすことになったのだ。
 まさに民主主義の名のもとで、「民主主義ごっこ」を象徴する事例の1つであった。

民主党の失点によって救われた自民党

 民主党は平成21年の総選挙で政権を獲得した。民主党は選挙公約(マニフェスト)に公立高校の無償化、高速道路の無料化、農家の個別所得補償などの国民受けするバラマキ政策を掲げた。さらに予算の無駄を省くということで、事業仕分けなどのパフォーマンスなどを行い、政権誕生からしばらくの間は国民からも高い支持を得ていた。しかし、沖縄の米軍普天間飛行場移設の不手際をはじめとして、次第に政権担当能力のなさが露呈しだし、政権の支持率が下降していった。このようなときに起きたのが平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)である。菅直人首相は、この震災を政権浮揚の足がかりにしようと考えていたようだが、後手後手に回る対応によって、最後は退陣に追い込まれた。その後、民主党は野田佳彦が首相のときに解散総選挙に打って出たが、結果は惨敗し、下野することになったことは記憶に新しい。

 国民の期待を裏切った民主党政権によって、再び野党に政権を任せようとする空気が国民の間にはない。政権交代可能な二大政党制についても、民主党の解党による野党の多党化により、自民党を利する状況が続いている。

(つづく)

<プロフィール>
濱口 和久(はまぐち・かずひさ)

1968年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業後、防衛庁陸上自衛隊、元首相秘書、日本政策研究センター研究員、栃木市首席政策監(防災・危機管理担当兼務)、日本防災士機構理事などを歴任。現職は拓殖大学大学院地方政治行政研究科特任教授・同大学防災教育研究センター長、(一財)防災教育推進協会常務理事・事務局長。主な著書に『日本版 民間防衛』(青林堂)共著、『戦国の城と59人の姫たち』(並木書房)、『日本の命運 歴史に学ぶ40の危機管理』(育鵬社)、『探訪 日本の名城(下) 戦国武将と出会う旅』(青林堂)、『探訪 日本の名城(上) 戦国武将と出会う旅』(青林堂)、『だれが日本の領土を守るのか?』(たちばな出版)、『思城居(おもしろい) 男はなぜ城を築くのか』(東京コラボ)などがある。

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