2024年12月27日( 金 )

【特報】秋元司前副大臣がWINカンパニーの企業主導型保育事業に深く関与か~「議員枠」で約5,600万円の融資を引き出す?

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■「秋元副大臣に、公庫担当者を紹介してもらった」

 国の企業主導型保育事業をめぐる詐欺事件で逮捕・起訴された川崎大資被告(旧名:塩田大介)が企業主導型保育事業に進出する際、同事業を所管する内閣府の副大臣だった秋元司衆院議員(自民党/二階派)が深く関与していた疑惑が浮上した。

ABCホーム会長時代の塩田大介氏(左/アクセスジャーナルより)と、「川崎大資」を名乗る現在の塩田大介氏
ABCホーム会長時代の塩田大介氏(左)と、「川﨑大資」を名乗る現在の塩田大介氏

 証言したのは、福岡市内でコンサルタントを営む男性「T氏」。2018年夏ごろ、川崎被告が福岡に進出したころに知り合い、主に融資コンサルタントとして川崎被告から相談を受けていたという。

自身の政治資金パーティーで、WINカンパ
ニーの関係者に囲まれる秋元前内閣府副大臣

 「川崎氏は、知り合った当初から『秋元とオレは非常に近い関係なんだ』と、ことあるごとに話していました。政策金融公庫には、通常の融資枠の他に俗に〈議員枠〉と呼ばれる融資枠があって、〈特別貸付〉として通常限度額を超える融資を実行できるんです。川崎氏は、WINカンパニーを始める際に、秋元代議士に公庫の担当者を紹介してもらって融資してもらったと自慢げに話していました」(T氏)

 つまり、川崎被告が(株)WINカンパニーの代表として保育事業への本格参入を決めた時期に、秋元前内閣府副大臣が日本政策金融公庫の担当者を川崎被告に紹介し、特別貸付として通常の融資枠を超える額の融資をあっせんしたというのだ。

日本政策金融公庫・五反田支店が入るビル
(東京都品川区)

 特別取材班の調べで、日本政策金融公庫は少なくとも2016年と2017年8月、川崎被告に対して総額約5,600万円以上の融資を実行していることがわかった(詳細後述)。しかし、この融資が行われた事情については、不明な点が多い。連載2回目でも触れたとおり、川崎被告は「塩田大介」と名乗っていたころに逮捕されて実刑判決を受けた前歴があるため、銀行などが利用する信用調査機関のブラックリストに名前が載っている。そのため、川崎被告は融資を申し込んだ福岡銀行などからは融資を断られており、いくら政策金融公庫が創業資金融資に特化した金融機関とはいえ、通常の審査で融資が行われたとは考えにくいのだ。

日本政策金融公庫・五反田支店

 「議員が支援者に公庫の担当者を紹介することは、通常業務の一環といっていいくらいありふれた案件です。ただし、融資担当者を単に『紹介』するだけなのか、あるいは『強く融資を勧める』のか、『圧力をかけてでも融資を引き出す』のかは、その議員がどの委員会に所属しているかなどの議員自身の実力に加えて、支援者との力関係にも大きく左右されます」(現役国会議員秘書)

 秋元前副大臣が融資について川崎被告に便宜を図っていたとすれば、自らが所管する助成金事業について、特定の事業者を資金面で支援したことになる。まさに「監督・主演=川崎大資、製作=秋元司」ともいえる癒着構造で、川崎被告が10億円を超える額の助成金を騙し取ったことについて秋元前副大臣の責任は避けて通れない。

■日本政策金融公庫が発行した2枚の明細書

 特別取材班は、日本政策金融公庫の五反田支店がWINカンパニー宛に作成した2枚の支払額明細書を入手した。作成日は2枚とも2017(平成29)年8月23日。1枚は4,000万円が融資されたことを示すもので、もう1枚の明細書からは4,000万円とは別に800万円の融資を受けていたことがわかる。800万円の融資を受けた際にWINカンパニー側の手元に渡ったのは約31万円で、前年の2016(平成28)年に受けた融資(800万円以上か)の残高(770万円)を相殺するかたちで融資が実行されたことが明記されている。

※クリックで拡大
※クリックで拡大

 川崎被告が政策金融公庫から800万円以上の融資を受けた2016年は、川崎被告の義母(妻の母)が2001年ごろに創業した託児所事業を川崎被告が受け継ぎ、本格的に保育事業に乗り出すとともに企業主導型保育事業に参入した年でもある。日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』によると、2016年4月に企業主導型保育事業が始まったわずか2カ月後の6月、川崎被告は秋元前副大臣の紹介で、事業を所管する「子ども子育て支援担当」の参事官と会ったとされ、事業が開始されたかなり早い段階から内閣府や児童育成協会の幹部らに食い込んでいた可能性もある。

 また、政策金融公庫から2回目の融資が実行されたと思われる2017年8月は、秋元氏が内閣府副大臣に就任した時期にぴたりと一致する。しかも融資額は800万円から4,800万円と6倍に膨れ上がっており、なるほど、内閣府副大臣の「お友達」が内閣府の旗の下で運営する事業の将来性を、政策金融公庫はかなり高く評価したものとみられる。

■10億円を超える助成金はどこに消えたのか

 日本政策金融公庫が川崎被告への融資についてどんな理屈を持ち出そうと、実際に川崎被告は融資された資金をもとに助成金詐欺を行って起訴されたのだから、融資を決めた政策金融公庫の目は「節穴」だったことになる。政策金融公庫は「公庫」の名の通り、政府全額出身の金融機関で、融資の元になる資金には税金が充てられている。「税金を使って創業した企業が、税金(助成金)を詐取した」という、なんとも笑えないオチがついたかたちだ。

 『しんぶん赤旗』は9月29日の日曜版で、秋元前副大臣が川崎被告に内閣府の「子ども・子育て本部参事官」を紹介した疑惑について伝えている。記事によると、参事官は川崎被告と会った当時、事業を所管する「子ども子育て支援担当」のトップを務めており、秋元前副大臣の紹介で川崎被告と会ったことを否定しなかったという。

 秋元前副大臣は川崎被告の事業を「ヒト」と「カネ」の両面から支えていたのか、さらにこうした「特別扱い」に対してなんらかの見返りがあったのかなど、さまざまな疑惑について答える説明責任がある。

 川崎被告側に渡ったとみられる10億円を超える助成金の全貌やその行方は、まだ解明されていない。

【特別取材班】

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