「明太子店」が営業する「もつ鍋店」が日本一の理由

　2006年、明太子大手の（株）やまやコミュニケーションズは外食進出1号店に博多の郷土料理「もつ鍋」を選んだ。出店場所はオフィスビルが集積する東京・江東区東陽。本業を生かした「明太子食べ放題」ランチがビジネスマンの心をつかんだ。以来、東京、大阪など大都市で店舗網を拡大し、現在は海外やFC含めて47店舗を運営する国内最大のもつ鍋チェーンだ。福岡には博多駅と西中洲の2店舗のみでビジネス客の多いエリアに狙いを定めている。その典型例が新橋店だろう。

　11月なかば、駅から徒歩2分の場所に位置する店は平日にもかかわらず遅い時間帯まで満席の状態が続いていた。好立地だから当然という声もあるが、ある利用者は「この立地を抑えていることが同店の強さ」と指摘する。やまやは「開発のある地区では（出店）の声をかけていただいている。収支計算しやすい業種なので迅速な意思決定ができる」としており、多数の出店要請のなかから慎重に選別する力を有していることがうかがわれる。

　市場創造の担い手として、さらなる飛躍が期待されるが、今期は出店ペースを抑える意向だ。「人材確保が難しく、ビールの提供が遅いなどのクレームをいただいている」（同社）状況なのだ。実際に新橋店の従業員は息つく暇がない印象だ。

　繁盛店ゆえの課題解消に向けて、ブランド力構築を優先する。目先の売上に執着しない姿勢が同店を業界トップの規模に押し上げているのだろう。