108の煩悩を打ち払う、大晦日の「除夜の鐘」
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日本の大晦日の風物詩といえば、「年越しそば」や「大掃除」「NHK紅白歌合戦」などと並んで、各寺院で撞かれる「除夜の鐘」を思い浮かべる人も多いだろう。筆者も、前述の紅白を見終わった後に放映される「ゆく年くる年」で映る各寺院で、雪が舞い散る寒空の下で厳かに撞かれる除夜の鐘の様子が、大晦日のイメージとして鮮烈に焼き付いている。まもなく新年を迎えるこのタイミングで、この除夜の鐘について改めて考えてみたい。
除夜の鐘とは、大晦日の夜から新年にかけての年越しのタイミングで、寺院の梵鐘(ぼんしょう)を撞く仏教行事である。
「除夜」とは、「古い年を取り“除”いて、新しい年を迎える日の“夜”」のことを指す。また、梵鐘の「梵」はサンスクリット語で“神聖・清浄”を意味する「ブラフマン」を音訳したもので、梵鐘とは「神聖で清らかな鐘」という意味になる。
撞く数は、一般的には108回とされるが、寺によっては決まっていないところもある。この108という数字は、仏教で説かれる人間の煩悩の数であり、つまり除夜の鐘とは、神聖な鐘を撞くことで煩悩や邪気を払い、清らかに新年を迎えようというものだ。宗派には関係なく、どの仏教寺院でも実施されることが多いが、その起源については詳しくはわかっていない。一説によると、中国・宋の時代に始まり、日本には鎌倉時代に禅宗の寺院に伝わってから、室町時代以降にその他一般寺院にも普及していったとされる。
人間のもっている煩悩が、鐘の音色だけで簡単に清められるとも思えないが、それでも静寂のなかで鳴り響く厳かな除夜の鐘の音を聞くと、何だか心が洗われる気がしてくるものである。
ただし近年は、近隣からの騒音苦情のために、除夜の鐘を取り止める寺院も出てきているとか――。これも時代の流れなのだろうか・・・。何だか、せちがらいものである。
なお、お寺によっては、住職だけでなく、参詣者のうち希望者が撞くことができるところもある。福岡近郊のお寺でも、一般の除夜の鐘撞き参加ができるところもあるので、撞いてみたい方は探してみるのもいいだろう。撞く際の作法としては、撞く前に鐘に向かって合掌し、鐘を撞いた後も、再度鐘に向かって合掌するというのが一般的だ。なお、適度な力でもそれなりに大きな音が鳴るので、くれぐれも力任せには撞かないように。
もう間もなく新たな2020年を迎える。除夜の鐘の音を聞きながら煩悩や邪気を払い、また良い年を迎えたいものである。皆さま、良いお年を―。
【坂田 憲治】
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