『脊振の自然に魅せられて』「赤い実をつける冬の植物たちとの出会い」
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春に咲いた樹木の花のムシカリやゴマギ、カマツカ、マユミなどは晩秋になると赤い実をつけます。赤い実をつけて鳥たちに「食べてほしい」と伝えているように思えます。鳥たちは消化できない種を地面に落とします。赤い実をつけた植物たちは、鳥たちに少しでも遠くに種を運んでもらい、子孫を増やそうとしているのです。
写真集「脊振讃歌II」を弓道仲間の女性が購入してくれました。自宅に郵送したところ、後日お礼の封書が届きました。
彼女は私よりも少し若いプロのイラストレーターです。封書のなかに自宅で植えたヤブコウジ(藪柑子)の下で白い文鳥が赤い実を啄んでいるイラスト付きのかわいいハガキがありました。
ヤブコウジは10〜15㎝ほどの低木で生命力が強く、赤い実をつけるマンリョウ(万両)、センリョウ(千両)に続きジュウリョウ(十両)と呼ばれています。実の大きさは5ミリ程です。
ハガキを見て「そうか、かわいいヤブコウジの実がみられるころか」と撮影への意欲が湧いてきました。
12月15日(日)、車で福岡市早良区の野河内渓谷へ行きました。車を無料の市営駐車場に停め、長靴に履き替えてヤブコウジの群生地へと向かいました。カメラザックを背負い、重い三脚を肩に担ぎ、林道の上り坂を進みましたが、1年に1度なので記憶が薄れ、ヤブコウジのある場所が見つかりません。
「たしか林道横の右手上の土手にあったはずだけど…」よくよく考えると土手を登る場所が違っていました。
林道の坂をのぼり詰め、やっとここだと確信し、2mほどの土手を登ると、あちこちにかわいいヤブコウジが見つかりました。
「こんにちは!」とヤブコウジに声をかけ、撮影に入ります。私とヤブコウジの対話の時間が続きます。少しでもかわいく見える角度から撮影し、カメラとレンズも変えて撮影しました。
40分ほどの撮影を終え、林道の坂道を下り、野河内渓谷入口へと戻りました。2つ目の赤い実はアリドオシです。うす暗い大型の樹木の下に寄り添っているように茂っています。高さ50㎝ほどの低木のアリドオシは鋭いトゲをもっています。名前の通り、アリを刺す程の鋭いトゲです。トゲの先に5ミリ程の赤い実を付けていました。
撮影するには光量不足ですが、自然光で撮る方が植物本来の姿を表現できるので、あえてストロボを使わないようにしています。
今年は気候のせいか赤い実がなかなか見つかりません。茂っている低木に腰をかがめて見て回ります。すると、ようやく1つの枝に2つの赤い実をつけているものを見つけました。カメラバッグを置いた場所にカメラを取りに戻り、アリドオシの元へ戻ったのですが、木が見あたりません。似たような木ばかりで、なんどもかがんで探し、ようやく見つけたので撮影を始めました。
「光が足らない」、シャッターを押してはモニターで確認します、感度を上げたためザラツキが見えます。それでも何とか撮影を終え、車で近くの集落へと向かいました。
3つ目の赤い実はサネカズラです。昨年、野河内渓谷の整備をともにしている仲間の家の近くで見つけていました。
仲間はタケノコと米、野菜づくりで生計を立てていますので、草刈りが上手です。私は今年初めに「この近くにサネカズラの蔓があるので草刈機を入れないでね」と頼んでおきました。しかし、彼は「あれ、刈ってしまったかなぁ」と言います。
蔓が切られてしまったかと心配しましたが、小粒な赤いサネカズラの実がぶら下がっていました。
車に戻り、カメラザックと重い三脚を準備して撮影に入りました。最初に見つけたものは葉の陰に隠れていましたが、戻って視線が変わったのか、その実に下に最高のアングルで黄色く色づいた葉とともに赤い実がぶら下がっていました。私は心のなかで「やったー」と歓喜のおたけびをあげました。
サネカズラはたくさんの赤い実をつけた塊で、大きいものはゴルフボールほどのものもありますが、目の前の赤い実は小粒で2㎝ほどの大きさでした。
赤い実をつけた植物たちとの出会いの1日でした。
◯サネカズラ(実葛)は別名ビナンカズラとも呼ばれ武士の整髪料に使われていたそうです。
◯アリドオシは「イチリョウ」とも呼ばれ、“千両万両有り通し”という縁起担ぎの言葉からきているとあります。インターネットで検索したところ能楽の演目にもあるようです。
令和元年度 環境省自然歩道関係功労者賞受賞
2019年12月25日
脊振の自然を愛する会
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