2024年12月31日( 火 )

太陽光・風力・水力発電 ここが変われば自然エネルギー社会になる!(3)

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環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也 氏

 純国産エネルギーで燃料代ゼロ、環境負担が少ない上に地域活性化にも役立ち、最大の課題だったコストも急落しているが、日本では自然エネルギーがなかなか普及しない。いったい何が課題なのだろうか。自然エネルギーの世界動向や地産地消の取り組み、今後の展望について、自然エネルギー政策専門家の認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・所長・飯田哲也氏に聞いた。

エネルギー地産地消

 ――自然エネルギー政策の活動は。

 飯田 10年前まではしっかりした環境エネルギー政策が整ってなければ、結果が期待できませんでした。しかし、太陽光や蓄電池の技術水準が急速に進み、FITに頼らなくても、自分たちの知恵と工夫で社会イノベーションを起こせる可能性が出てきました。

 2014年からは、「ご当地電力」で各地の太陽光発電の立ち上げをサポートしています。自然エネルギーは技術学習によって早いスピードで普及し、世界的には社会の構造や秩序、産業のあり方が、音を立てて大きく変わりつつあります。その動きを加速させ、いい方向にもっていくために取り組んでいます。

 2016年4月から、電力小売が全面自由化になりました。工場などの大口電力だけでなく、電力需要件数の90%以上を占める家庭小口電力も自由化されました。そのため、今まで電気をつくるだけだった地域も、つくった電力を地域で使う「電力の地産地消」が可能になりました。

 日本ではGDPの約5%規模の石油や石炭などエネルギー資源を、海外から輸入、つまりGDPを失っています。地方自治体でみても、地域外からのエネルギー購入で、その地域経済付加価値の5~15%が失われています。電力やエネルギーを地域外から購入するこれまでの方法から、地域で電力をつくり、地域で使う仕組みをつくるため、前向きな自治体に働きかけています。地域でエネルギー循環ができることを目指しています。

環境エネルギー先進県の長野

 ――最近の取り組みは。

 飯田 2000年から2011年ごろは石原都政でしたが、東京都の自然エネルギー政策をサポートしてきました。東京都の取り組みが横に広がり、国の政策につながっていきました。その後、福島の原発事故があり、政治的にも環境・エネルギー政策が注目されるようになったため、東京都の自然エネルギー政策は状況が変わりました。

 今は、長野県が先駆的です。東京都がつくり上げてきた政策の財産を引き継ぎ、2010年から阿部知事のアドバイザーとして、自然エネルギー政策に関わっています。

 ドイツやスペインでは、建物を新築・改築するときに自然エネルギーを取り入れることを促す条例があります。それを参考に、まずは東京都で政策提言を行い、東京都も大規模な建物で自然エネルギーの導入の検討を義務付けることを実現してきました。長野県では、これを一般住宅にも広げることに成功しています。ただし、導入する義務付けまでは難しいため、検討義務ではありますが…。今では長野県は建物の省エネ比率が高まり、生活の質も改善しています。

(つづく)
【石井 ゆかり】

<プロフィール>
飯田  哲也(いいだ・てつなり)

 1959年山口県生まれ。京都大学工学部原子核工学科、東京大学大学院先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。日本のFITの起草者で、自然エネルギー政策では、国内外の第一人者かつ日本を代表する社会イノベータ。国内外に豊富なネットワークをもち、REN21運営委員、自然エネルギー100%プラットフォーム理事などを務め、2016年には世界風力エネルギー名誉賞を受賞。日本でも国・自治体の委員を歴任。著書として、『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論社)、『エネルギー政策のイノベーション』(学芸出版社)、『1億3,000万人の自然エネルギー』(講談社)、『エネルギー進化論』(ちくま新書)など多数。

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