太陽光・風力・水力発電 ここが変われば自然エネルギー社会になる!(4)
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環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也 氏
純国産エネルギーで燃料代ゼロ、環境負担が少ない上に地域活性化にも役立ち、最大の課題だったコストも急落しているが、日本では自然エネルギーがなかなか普及しない。いったい何が課題なのだろうか。自然エネルギーの世界動向や地産地消の取り組み、今後の展望について、自然エネルギー政策専門家の認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・所長・飯田哲也氏に聞いた。
日本も自然エネルギー社会になる
――自然エネルギーの今後の展望は。
飯田 国の政策を変えるのは時間がかかるため、成果が出る自治体から政策やイノベーションを働きかけています。たとえば、これまではコストが高く実用的ではないとされてきた蓄電池も、太陽光発電と同様な技術学習効果で年々コストが下がってきており、そろそろ地域での利用が期待できるレベルになってきました。電力システムのデジタル化などの成果も取り入れながら、地域でつくった自然エネルギーの電力を地域で使う地産地消のネットワークづくりができないか、試作に取りかかっています。
また、太陽光発電による地域の自然環境への負担を小さくするとともに、農家や地域での仕事づくりの一石二鳥になる、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)にも取り組んでいます。これは、農地に柱を立てて太陽光パネルを設置し、農業をしながら発電を行うもので、2013年から農林水産省が許可した、農業の再生と太陽光発電が同時にできる仕組みです。それが今では、およそ2,000カ所に広がっています。
日本の太陽光発電のコスト低下のため、効率の良い最新の太陽光パネルやパワーコンディショナーなどを共同購入することで、営農型太陽光発電でもFITに頼らないコストでの建設可能性がみえてきました。
これらをさらに推し進めるため、地方自治体の政策に力を入れることで、社会のイノベーションの仕組みをつくることができます。
日本でも、遅かれ早かれ、自然エネルギー社会に変わることは明らかです。早く転換すればするほどよいです。しかし、転換が遅いと日本社会全体としては、石油や石炭など25兆円もエネルギー資源を輸入している問題だけでも、致命的な損失です。日本がこれからどの方向に向かうのかを考えると、自然エネルギーをベースにしたまったく新しい社会を構想することが必要です。
エネルギーも中央集権型の今の体制から、地方分散型に大幅に組み替える段階にきています。石油依存型の社会から急激な変化により、社会にしわ寄せがくる前に、方向性を定めながら段階的に産業構造や行政のあり方を変えることが必要ではないでしょうか。
(了)
【石井 ゆかり】<プロフィール>
飯田 哲也(いいだ・てつなり)
1959年山口県生まれ。京都大学工学部原子核工学科、東京大学大学院先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。日本のFITの起草者で、自然エネルギー政策では、国内外の第一人者かつ日本を代表する社会イノベータ。国内外に豊富なネットワークをもち、REN21運営委員、自然エネルギー100%プラットフォーム理事などを務め、2016年には世界風力エネルギー名誉賞を受賞。日本でも国・自治体の委員を歴任。著書として、『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論社)、『エネルギー政策のイノベーション』(学芸出版社)、『1億3,000万人の自然エネルギー』(講談社)、『エネルギー進化論』(ちくま新書)など多数。関連キーワード
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