2024年11月22日( 金 )

新型コロナウイルスが猛威をふるうイタリア~今、何が起きているのか

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 イタリアは、食・文化・歴史・デザインなど、さまざまな観点から日本人を魅了してきた国だが、ビジネスの面でも重要な相手国の1つといえるだろう。そんなイタリアで、新型コロナウイルスの感染拡大が世界のなかでも突出して深刻な状況なのは周知の通りだ。

 昨日3月17日の時点で感染者数は3万1,506人、死亡者数は2,503人と発表された。

 同時に、完治した人数は2,941人、まだ陽性反応がある患者数は2万6,062人で、そのうち、症状があり入院中なのは1万2,894人、集中治療室にいる患者数が2,060人、自宅で隔離中の人が1万1,108人である。

 原因については諸説あり、定かになってはいないが、感染者数に対する死亡者数の割合という点では、中国よりもはるかに高い数値である。(中国本土では同3月17日時点で感染者数8万881人、うち3,226人が死亡。)また、イタリア国内でも、とくに感染者数が多いのはミラノを州都とするロンバルディア州で、1万6,220人の感染者が確認されており、その次に感染者数が多いエミリア・ロマーニャ州の3,931人と比較しても4倍以上である。

 当初は欧州の近隣諸国がイタリアのウイルス封じ込め策を軽んじるような姿勢を見せていたが、現在では一転して、イタリア政府のとってきた処置が、ウイルス拡大が遅れて始まった欧州内で一種のガイドとなっており、評価され始めている。

 イタリアは3月12日からイタリア全体をレッドゾーンと指定し、全土封鎖に踏み切った。市民は不要不急の外出は禁止されており、やむを得ない外出には外出理由を書いた自己申告書を携行しなければいけない。学校や、行政や公共機関、企業などは閉鎖されている。交通機関も一部を除き運航を停止。営業を続けて良いとされているのは、「生活に必要不可欠なサービス」のみとなっており、警察や医療機関、食や医薬品などに関連する小売や製造等の事業者などが含まれる。この処置は現時点では3月25日まで(学校や公共機関、大企業などに関しては4月3日まで閉鎖)とされているが、延長される可能性が高いと考えられている。

 この混乱のなか、イタリア国内には、ウイルス対策マスクFFP2 / FFP3の規格に適合するマスクを製造できる会社が1社しかないことが判明した。マスク不足を解消するために、閣僚政令により、マスクの製造ができる工場が自社で技術的特徴を満たすことを示す申請書を提出し、イタリア国立衛生研究所の了承を得る簡易的な手続きだけで、生産を開始して良い、とした。また、イタリア政府はこういった工場の人員不足解消や生産強化のため、兵士を派遣し支援している。

 感染者数が多いイタリア北部地域ではとくに病床数が不足しており、短期間の間に、増床や建設に着手し、引退した医師や看護師を呼び戻すなどの対応に追われる。反対に、感染者数がこれまで少なかったイタリア南部でも日々感染者数が増加しており、北部と比べ医療格差が大きいとされる南部地域での感染が広がると、より犠牲者数が増えるのではと懸念されている。
 また、この数日、欧州内でのマスクや医療品の不足が深刻化しており、フランスやドイツなどの一部加盟国が流通を国内に留めようとする動きを見せたため、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長が、欧州全体として生産を強化し欧州内に供給拡大するよう介入する事態となった。

 今後、懸念されるのは、この状況が収束した後の経済的ダメージへの対応だ。

ディサント・ダニエレ氏

 新型コロナウイルスが社会へおよぼすであろう深刻な影響に対処するための政府による「イタリア救済」措置を含む閣僚政令が承認され、医療分野に30億ユーロ、そして会社員向けのセーフティーネットとして雇止めなどによる休業補償に100億ユーロが投入されることが決まった。休業補償は、従業員が5人未満の企業も含め、すべての企業が対象となる。

 自営業者向けの所得の補償としては、3月に600ユーロを受け取ることができるようになった。子どもを持つ労働者は、その他に、育児休暇の延長処置やベビーシッター代を支払うためのクーポンが支給される。また、感染して自宅隔離となった場合は、病気やケガをして仕事を休む場合と同じく、傷病手当が受給できる(イタリアでは、社会保険に加入していれば、病気やケガで出勤できない場合は1日からでも、病床手当てが支給される)。

 コロナウイルスの感染拡大を受けイタリアを代表する国際見本市の延期や中止が相次いだ。「ミラノサローネ」として知られるサローネ・デル・モービレ(Salone del Mobile)は6月16日~21日に延期、ワインの国際見本市「ヴィニタリ−」(Vinitaly)は6月14日~17日に延期と(現時点では)発表されている。これらは世界中の企業やバイヤー、マスコミなどをMICE開催地に呼び込むビッグイベントの1つとなっており、日本からも来場を予定していた方も多いのではないだろうか。

 販売促進の機会を失った現地の経済団体では、これらを受け、外国とのリモートでのビジネスチャンスを探る動きが強まっている。日伊経済連合会(https://jief.jp)では、現地の生産者の商品のBtoBなどビデオ通話で実施する試みをスタートした。今後定期的に日本各地の企業とのビデオ商談会を企画していく。
 また、日伊の観光業界の団体や企業と連携し、日伊の地方の村の観光情報などを相手国に発信しPRするための新たな事業を計画している。この苦境の時こそ日伊の間で友好関係を強化していけるよう支援を続けていく。

【日伊経済連合会 会長 ディサント・ダニエレ】

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