傾斜の事実を隠され販売されたマンション!(中)
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このマンション「ベルヴィ香椎」の不具合は いつ頃から判明していたのか?
竣工から2年後の1997年には、ひび割れが異常に多いなどの不具合が表面化し、住人に対するアンケート調査が実施されている。そして、1997年10月、管理組合として全体集会を開いて協議し、販売側へ問題提起している。
翌1998年1月から管理組合理事会と販売側との協議が始まり、1999年10月には高低差の調査が行われ、簡易的な調査で31mmの高低差が確認されている。
2016年8月の管理組合総会においては、開閉が困難な玄関扉の管理組合費による交換に関して決議したが、その際、ほかの住戸からもマンションの傾斜に関する不満が続出したため、同年9月に傾斜に関する調査を行ったところ、 98mmの高低差が判明した。
2017年4月の管理組合総会においては杭長の調査が議決され、7月に杭長の調査が実施された。同年10月には杭長以外のひび割れや玄関扉も含めた再調査が実施され、最大高低差101mmなどが報告されている。
2018年2月の総会においては、調停を申し立てることと、そのための調査を行うことが決議されている。
Bさん一家がマンションを購入した2018年10月より8カ月も前に、すでに管理組合は調停申し立てを決議しているのである。一連の決議事項については当然、管理組合の議事録に記載されている。また、区分所有者にも報告されている。アンケートや大掛かりな調査を管理会社が知らないはずはない。
売主についても不可解な点が多い。Bさんが部屋を内覧した際に家具やシートで隠されていた部分の壁に穴が空いていたことにBさんは入居後気づいたという。
この売主は 部屋の不具合に関するアンケートの際、「部屋の壁のひび割れあり。クローゼットの建て付けが悪い。巾木の取り付けが悪い」と回答している。仮に売主が管理組合の総会に参加しておらず 議事録も読んでいなかった(通常では考えられないことであるが)としても、少なくとも自分の部屋の不具合については認識していたのである。
また、この部屋の隣の住人は アンケートで傾斜調査を希望しており、隣の住戸では相当な不具合を認識していたことがわかる。売主がこれらの不具合の事実を故意に隠して部屋の売却を急いだことは間違いないと言わざるを得ない。記者は、このマンションを仲介した不動産会社である「S社福岡支店」(福岡市博多区)の担当者Rに取材を申し入れたが、「本社の指示により 取材は受けられない」という不誠実な返答だった。
不動産仲介会社S社の担当者RがとったBさんの契約に際しての行動、「会社が休みである水曜日に喫茶店で契約」・「手付金を現金にて喫茶店で受け取り」・「調停が行われていることを契約日前日に知っていながら、買主であるBさんに説明しない」などは、不動産仲介業者の常識から大きく逸脱した行為である。
参考までに 別の不動産業者に問い合わせたところ、「大手の仲介業者ほど、クーリングオフ対策のため 必ず事務所での契約を行うようにしています。マンションの問題点があれば後々、仲介業者の責任を問われないよう、必ず購入者に伝えます。マンションが傾斜しているなど、とんでもない大問題なので、これを隠すことは考えられませんし、私の会社であれば、問題が明らかなマンションの売買を仲介することはありません。月末の契約を急かしたことから、ノルマの関係もあったのかもしれませんが、不適切だと思います」と語ってくれた。ベルヴィ香椎六番館の不具合については、管理会社が知らないはずはなく、仲介をする不動産会社も少し調べただけで マンションが抱える問題はわかったはずである。実際、まったく無関係な立場である記者でさえ、十数年前から 「ベルヴィ香椎で施工の不具合があり、管理組合と販売会社が揉めている」という噂を耳にしていた。
Bさん夫妻は、売主とS社に売買契約解除を求める調停を申し立てているが、S社の誠意はまったく感じられないという。(つづく)
【桑野 健介】
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