シリーズ「ホテル淘汰」(1)~長崎ワシントンホテル
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全国に21のホテルを展開するワシントンホテルは、ビジネスホテルの概念を日本人に広く根付かせたホテルブランドの1つに数えられている。
そのワシントンホテルの運営を行っているのが、東証一部上場の藤田観光(株)(東京都文京区)である。全国のワシントンホテルは、藤田観光の直営ホテルを除けば、各地のオーナー企業より土地・建物の提供を受け、ワシントンホテルとして「運営会社」を通じ管理するというビジネスモデルだ。
同ホテルグループの1つである「長崎ワシントンホテル」が昨年2019年12月22日に閉館したのは記憶に新しい。
同ホテル閉館の経緯についてオーナー企業である(株)佐世保玉屋に再三の取材依頼を申し入れたものの、「取材NG」だったため、事情を知る関係者への取材により分かった内容を以下に記していく。長崎ワシントンホテルは1982年3月に新築開業。「長崎新地中華街」に近く、好立地の地場名門ホテルとして知られており、地上10階建て鉄筋造、総客室数は300室で、ビジネスや観光、会合などに利用されてきた。閉鎖が決定するとSNSなどで同ホテルの閉鎖を惜しむ声が全国から多数寄せられた。
藤田観光は「公の閉鎖理由」として、施設の老朽化と周辺で相次ぐ、ホテル開業による競争力の低下を挙げている。しかし、長崎県内の同業他社数社に行った取材によると、閉鎖の経緯について別の事情が見えてきた。
彼らの話を総合すると「閉鎖の一番の理由は、オーナー企業である佐世保玉屋が長崎ワシントンホテルの老朽化にともなう耐震補強工事の費用を捻出できなかったことが大きい」「近年のインバウンド需要などを持ち出し、海外の莫大な投資資金をチラつかせるブローカーの話に翻弄され、改築工事の時期を逃した」など、オーナー企業である佐世保玉屋の資金力低下をうかがわせる内容で占められていた。一方、長崎県では佐世保市内において佐世保ワシントンホテル(佐世保市潮見町)が現在も運営されている。同グループホテルのある支配人に話を聞くことができた。その支配人によると「佐世保市はもともと、長崎市と違いインバウンド需要がほとんど見込めない地域。宿泊客自体は年々減少傾向にあるが、ビジネス利用のお客さまが安定的に見込めるため急激な変動は少ない」とした。
また、新型コロナの影響をたずねたところ5月までは長期滞在客の利用により、ほぼ影響はないが、以降については国内の自粛事情をにらみながら予断を許さない運営を強いられるだろうとの答えが返ってきた。
インバウンド需要、観光客の利用をメインに事業を行うホテルとビジネス利用をメインに据えたホテルで、まさに明暗を分けるかたちとなっている。なお、長崎ワシントンホテルは2020年2月現在、周囲は塀で囲われ、立ち入れないようになっており、近隣住民から「近々解体されるのでは」との噂が広がっている
もともと、長崎ワシントンホテルは集客力の高いホテルだった。藤田観光はギリギリまで耐震補強・改修工事を佐世保玉屋に提案していたが、間に合わず、残念だという声も聞かれた。現在、佐世保玉屋は跡地の売却に奔走しているという。その結果はいずれ「カタチ」となって現れるだろう。今後もデータ・マックスではホテル事業の明暗に焦点をあてた取材・報道をしていく。
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