2024年12月22日( 日 )

異色の地場トップクラスゼネコン、マンション工事専業での差別化

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福屋建設(株)

 北九州地区を代表するゼネコンの福屋建設(株)。実績を重ねるなかでマンション工事に照準を絞り技術を蓄積することで地場デベロッパーの信頼を獲得し、県内でもトップクラスの業容を誇っている。

創業70年の地場大手総合建設会社

 福屋建設(株)は1950年12月に福屋晃氏が星野組や関門建設の経験を生かし創業、63年2月に法人化した総合建設工事業者。96年11月、晃氏の三女で現・監査役・貴子氏の夫である田中純雄氏が2代目社長に就任し現在に至っている。関連会社として不動産賃貸業を手がける福屋不動産(株)がある。時代の変遷とともに協力会を廃止するゼネコンもあるなかで、同社が65年4月に結成した「福和会」には、現在も50社以上が名を連ねている。

 多くのゼネコンが文字通りビル・戸建、公共施設などを手がけるなか、同社は北九州地場デベロッパーからの受注をメインに集合住宅(マンション工事)に特化している。2019年12月期の実績は296件の建築工事を施工し、104億7,188万円の売上高を計上した。主な受注先は、大手町NT共同事業体(東宝住宅(株)、(株)なかやしき)、大英産業(株)、なかやしき、以和貴商事(株)、(株)田園興産と北九州エリアの有力マンションデペロッパーが名を連ねている。

リーマン・ショック影響下でも揺るがない盤石な経営基盤

 北九州地区を代表する地場デベロッパーからの受注が大半を占める同社は、マンション建設に関するノウハウを熟知し、最小限の人員で、予算内で品質の高い建物を完成させるという点で高い評価を得ている。リーマン・ショックの影響でゼネコン業界が震撼した2009年。同社も08年12月期の102億6,633万円から09年同期は58億9,049万円と40%以上の減収を余儀なくされた。しかし、利益面では粗利率を2.9ポイント上昇させ、前年並みの当期利益2億3,112万円を確保。外部環境の変化に合わせた柔軟な対応力を示した。

 マンションの受注減により大幅減収となったが、高い利益率に加え当時から無借金経営で強固な財務基盤を構築していた。主要取引先である地場デベロッパーも北九州地区は比較的体力がある企業が多く、早期に受注数を回復。

北九州地区屈指のゼネコンへ

 競合の多いマンション工事で圧倒的な強味を見せる背景に、北九州地区でマンションデベロッパー各社の評価が高いことが挙げられる。各社が評価する要因を追究すると「低予算高品質」に集約される。こうした評価を確立したのは現代表の田中氏によるところが大きい。田中氏が代表就任した時期はバブル崩壊とほぼ同時期である。厳しい建設不況下で同社はゼネコンとしての強みの明確化に舵を切った。田中氏は1981年1月に同社に入社、84年に取締役に就任後、部長職から専務職を経て代表取締役に就任したのは96年11月である。

初代から2代目代表に承継された企業理念

 同社は先代のころから、マンション施工に関して独自の技術力と管理力を有することで名を馳せていた。しかし、激しい受注競争が繰り広げられる業界である。創業70年を経た現在も、常に地場トップクラスのマンションゼネコンとして存在し得るには、日本経済を襲った危機を乗り越える際に蓄えられたノウハウによるところが大きい。

 同社は企業理念に「質の高い建物づくり」を掲げ、迅速で品質の高い建物づくりに徹している。「最小限の人員で、厳しい工程管理を行う」ことで、期間内に質の高い建物を完成させるという経営方針を徹底した。熾烈な他社との建築単価競争で対等な立場に立ち、技術力を兼ね合わせた力量は発注者に大きな魅力となった。このため、得意先から途切れることのない受注を確保していった。

「質の高い建物づくり」から「調和、信頼、前進」へ

 受注先デベロッパーからのニーズは、オール電化やスマートハウス化など、時代とともに高度化・多様化し、変化の速度も早くなっている。今後はさらに入居者のライフスタイルの変化にも迅速に対応する施工力に加え、高い品質を維持しながらも収益力を確保していくことが求められている。

 直近3期の業績を見てみると17年12月期の売上高は83億6,029万円、18年同期の売上高は92億8,769万円、19年同期の売上高は104億7,188万円、最終利益は17年同期5億4,570万円、18年同期5億4,688万円、19年同期6億7,937万円を計上し、3期連続で増収増益とした。

 財務面でも、自己資本比率は17年同期59.05%、18年同期61.16%、19年同期63.75%と年々上昇を遂げ、現預金28億7,780万円を有し、08年同期より無借金経営を続けている。県内ゼネコン業界では18年度自己資本比率ランキングは県下9位。18年同期の売上高は92億8,769万円で12位、売上総利益9億7,805万円で16位、経常利益は8億3,558万円で11位、経常利益率8.99%とランキング8位。当期純利益では5億4,688万円を計上し10位。当期純利益率は5.89%で売上高、当期純利益8位と、軒並み上位に位置している。流動比率17年同期233.14%、18年同期244.82%、19年同期262.53%、当座比率17年同期180.14%、18年同期179.73%、19年同期219.24%となり地場屈指の安全性を有する。

 上記の分譲マンションはすでに完売済みであり、重ねて地元デベロッパーからの信頼は厚く、近年は新興デベロッパーからの施工も受注している。取材中、新型コロナの影響で各マンションデベロッパーのほとんどが、ゴールデンウイークにもかかわらずモデルルームの閉鎖を余儀なくされていた。バブル崩壊とリーマン・ショックを乗り切った同社は、令和のコロナ危機にどのような知恵とノウハウで対応していくのだろう。

【相崎 正和】

クラシオン社ノ木
(北九州市門司区)
施主:福岡県住宅供給公社
賃貸マンション
総戸数60戸
2020年2月竣工

アーティックス上富野グランゲート
(北九州市小倉北区)
施主:(株)なかやしき
分譲マンション
総戸数65戸
2020年1月竣工

リヴィエールリシェル曽根
(北九州市小倉南区)
施主:(株)九州三共
分譲マンション
総戸数31戸
2019年6月竣工

 

<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 純雄
所在地:北九州市門司区東本町1-1-7
設 立:1963年2月
資本金:7,000万円
売上高:(19/12)104億7,188万円

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