【縄文道通信第47号】縄文人は定住型狩猟民族だった―今も息づいて未来に活かせる道(後)
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(一社)縄文道研究所
NetIB-Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第47号の記事を紹介。
人類の原点となる縄文文化
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、「人類が本来、狩猟時代に具備していた五感が現代の発達した文明のなかで失われていることが危機である」と警告し、「人類の五感は創造性を発揮する基本となるため、もう一度原点に立ち返るべきだ」と訴えている。
世界的ジャーナリストのクリストファー・ライアン氏は、「文明が不幸をもたらす(CIVILIZED TO DEATH)。生き延びるためのカギは先史時代にある」として、人類の原点回帰を主張している。
筆者が以前に「今、なぜ縄文道なのか」という寄稿文で取り上げた、世界的な天才物理学者のスティ―ブン・ホーキングス博士が、生前、BBC 放送を通じて以下の警告を人類に発していた。「人類は100年で滅亡する」という警告だ。
(1)世界人口の増加はエネルギー資源を浪費し、地球温暖化を加速化させ、気温が250度になるような高温の惑星へと地球を追いやり、人類は絶滅する。
(2)AI とロボットが人間の能力を超えると、人類の退化が進み、滅亡の危機に陥る。
(3)世界で蔓延する経済格差の拡大がテロ、紛争の原因になり、放置すると人類は大戦争を起こし、自ら危機を迎える。以上の3名の識者による警告とともに、新型コロナの危機により、人類の原点回帰がますます注目されつつある。
日本の狩猟民族の系譜をたどると、縄文時代である14,000年前は、アイヌ民族が北海道から東北地方、蝦夷の人々が東日本に住んでいた。アイヌ民族は縄文人の文化の色が濃い地域に住んでおり、縄文人のDNAを約60%以上、引き継いでいるといわれる。
弥生時代、古墳時代、奈良時代には、渡来人が朝鮮半島や中国大陸から日本列島に渡り、縄文系の人々には奈良時代頃に大きな動きがあった。
1つ目は、東北地方の縄文人であるアイヌ系の人々を征伐する征夷大将軍の設立である。初代の巨勢麻呂が派遣されたのが709年である。その後、坂上田村麻呂の派遣を始め、北方先住民族を北に押し込める政策は、鎌倉幕府が成立するまで続いた。源頼朝は征夷大将軍でもあった。その後も、北方のアイヌ民族を北海道に押し込め、差別する動きは明治期まで続いた。2つ目は、仏教の伝来により、天武天皇の肉食禁止令が発布された675年以降、明治期まで肉食が禁止された。この2つは狩猟民族にとって厳しい政策が実行されたといえる。
アイヌ民族や、現在も東北地方に残る狩猟専門集団のマタギ、明治時代まで約20万人が住んでいたといわれるサンガといった遊牧民者、さらに、家畜を扱う人々への差別は今も残っており、触れてはいけないものとされている。日本国憲法に保障されている基本的人権を守り、差別を撤廃しようという動きはあるものの、根強い偏見があることは、非常に残念なことだ。
狩猟民族の血を引く人々への偏見は、欧米の民主主義世界には考えられないことである。筆者は、狩猟民族が多かったアメリカ、豪州、ヨーロッパでの十数年の駐在経験がある。豪州の駐在時代に、牧畜業を営む顧客から、「日本では家畜を取り扱う人々に対して差別があるようだが、本当か」と尋ねられたことがある。筆者は「日本国憲法により人権も保障され、差別は禁止されているため、マイノリティの問題だ」と返事をしたと記憶している。
縄文人は狩猟、漁労民族であり、かつ海洋民族でもある。ところが狩猟民族の血を引き継ぐ人々である縄文人の末裔への差別意識と「タブー視」、外国人への差別は、憲法の自由権や人権、民主主義の精神、さらに縄文道の国連のSDGsの視点からも是正されるべきと考える。
(了)
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