2024年11月16日( 土 )

悪しき前例排し杉田官房副長官を招致せよ

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 NetIB-Newsでは、「日本学術会議の任命拒否は、6名の科学者が政府の施策に反対したことが理由であると考えられる。まずは、6名の任命拒否を菅首相に提示した杉田和博官房副長官の国会招致が先決事項である」と訴えた11月4日付の記事を紹介する。


日本学術会議の会員候補6名について菅義偉首相が任命を拒否した。

日本学術会議法は学術会議が会員候補を推薦し、内閣総理大臣が任命することを定めている。

推薦の方法については、「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考」すると規定(第17条)されており、「学術会議による推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」(第7条)という任命プロセスの運用については1983年の政府答弁が明確にしている。

83年5月12日の参院文教委員会で当時の中曽根康弘首相が「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と答弁。

また、同年11月24日の参院文教委員会では丹羽兵助総理府総務長官が「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」と答弁している。

従って、日本学術会議が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから」の規定を遵守して会員候補を推薦する限り、内閣総理大臣はその候補者をその通りに任命する必要がある。

菅内閣は、「内閣府日本学術会議事務局」名で作成された2018年11月13日付の文書が、首相が「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまではいえない」と記述していることを任命拒否の根拠として提示しているが、この文書自体の信用性が低い。

当時の学術会議幹部は文書の存在を知らされていなかったと証言している。

学術会議事務局は「当時の担当者が文書を作成し、(内容を内閣法制局にはかるために)事務局長に口頭で了解を得た」と説明しているが、その際の決裁文書がないとしている。

行政手続きとして決裁文書がないという状況があり得ないものだ。

東京高検の黒川弘務検事長が定年に達した際に、政府は定年延長をしたが、この措置が検察庁法に反する違法なものだった。

この点について、安倍内閣はつじつまを合わせるために、事前に法解釈変更を行ったとしたが、その法解釈変更に関する決裁文書が存在せず、「口頭での決裁」だったとした。

つじつまを合わせるためのウソが提示されたものと理解されている。
今回の「口頭での了解」もつじつま合わせのための「ウソ」である疑いが濃厚だ。

菅内閣発足後、初めての予算委員会での質疑が始まった。
菅義偉首相は野党議員からの質問に正面から答えることができない。
答弁不能の状況に陥っている。

11月2日の衆院予算委員会では、立憲民主党の今井雅人氏議員が、菅首相が任命拒否の理由について「個別の人事に関わる」として説明を避けていることについて追及した。

今井氏は菅首相の著書『政治家の覚悟』で、総務省のNHK担当課長を更迭した理由を明記している事実を指摘し、個別の人事に関わることだが、NHK担当課長の場合には理由を明らかにしており、学術会議会員の任命拒否の理由を明らかにしないことはおかしいと追及した。

これに対して菅首相は、(NHK担当課長の更迭については)「NHK改革をやると宣言して総務相をしていた。その政策に反対したからだ。今回の任命権とはまったく違う」と述べ、「(教授らの)公務員への任命と、すでに公務員である人の人事異動は異なる」と述べた。

まったく反論になっていない。

国会論戦では政府が示している見解、菅首相が理由を明らかにしないことについての矛盾を野党議員が追及した。
この部分のやり取りを伝えなければ、報道の意味をなさない。

テレビ朝日「報道ステーション」はダイレクトに論点を摘示したが、NHKニュースはこのやり取りをまったく報道せず、政府が用意したつじつま合わせの弁明だけを取り出して報道している。
NHKの堕落は目を覆うばかりである。

菅首相は任命拒否の根拠として、
旧帝大関係者の比率が高い
若手研究者の比率が低い
特定の大学に会員が偏っている
などを例示しているが、この基準が6名の任命拒否に当てはまらない。

菅義偉首相の国会対応能力がゼロであることが明らかになった。
この内閣が終焉するのは極めて早いと推察される。

学術会議の在り方を論じることは構わない。

しかし、今回の任命拒否問題と学術会議の在り方問題は別の問題だ。
この点の理解を共有できないと、論議の意味がなくなる。
言葉が通じない者同士がその問題を解決せずに論戦しても無意味だからだ。

問題になっているのは学術会議会員任命拒否問題。

日本学術会議法は「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考」することを定めており、内閣総理大臣による任命は形式的なものであることを過去の国会政府答弁が明示している。

任命拒否をする場合、「優れた研究又は業績がある科学者のうちから」の規定に反していることが必要になる。
これ以外の理由が成り立ちうるなら、政府はその理由を明示する必要がある。

日本は法治国家であるとされている。
法律の規定によらない任命拒否は正当性をもたない。

任命拒否の実態は、6名の科学者が政府の施策に反対し、政府の施策に反対する運動に関与したことを理由とするものであると考えられる。
客観的な事実により、この推察が正しいことは明白だ。
そして、6名の任命拒否を菅首相に提示したのは杉田和博官房副長官であることも明白になっている。

しかし、政府の施策に反対した、反対運動に関与したことを理由とする任命拒否は日本学術会議法違反であるばかりでなく、憲法違反である疑いが濃厚だ。

菅内閣の憲法破壊行為は日本国憲法第99条の公務員の憲法尊重擁護義務に反する。
菅内閣が総辞職に追い込まれる事案だ。

菅義偉首相は105人が明記された学術会議の推薦名簿を見ていないとしている。
学術会議が105人の会員候補リストを提出したにもかかわらず、菅義偉首相が105人の候補者名簿を見ておらず、99人の候補者名簿しか見ていないなら、公文書が改ざんされたことになる。

その公文書改ざんを杉田和博官房副長官が実行したなら、杉田官房副長官が刑法犯として摘発されねばならない。

野党は杉田和博官房副長官の国会参考人招致を求めている。
菅内閣は「前例にない」ことを根拠に官房副長官の国会招致を拒んでいる。
しかし、「悪しき前例主義の打破」が菅内閣の「売り」ではないのか。

杉田官房副長官の関与が明確であり、公文書改ざん、虚偽公文書作成という重大な刑法犯罪の疑いも存在しているのだから、悪しき前例主義を排して杉田官房副長官の国会招致を行うべきだ。

この問題は森山裕自民党国対委員長と安住淳立憲民主党国対委員長の間で協議され、森山裕国対委員長が「党に持ち帰る」とした問題。

森山裕氏が党に持ち帰って「杉田官房副長官の国会招致を拒否する」と回答したなら、安住淳国対委員長は「その回答を受け入れることはできない」とする必要がある。

立憲民主党の安住淳国対委員長の姿勢が問われている。

国会論戦が始まったが、学術会議任命拒否問題は解決に1ミリも進展を見ていない。
この問題での解決が見えぬなら、野党はすべての国会審議に応じない強い姿勢を示すべきだ。

この国会には
日英EPA
種苗法改定
コロナワクチン免責条項
などの重大法案が提出されている。

いずれも極めて筋の悪い法案だ。

種苗法改定は日本の農業生産者と消費者に巨大な不利益をもたらし、ただひたすらハゲタカ資本に利益を供与する「究極の売国法案」だ。

また、コロナワクチンの副作用発生に対する製造者の賠償責任を免除する措置は、コロナ騒動を口実に巨大資本に利益を供与する、種苗法改定に類似する「売国法案」である。

学術会議任命拒否問題を理由に国会審議を全面的に拒絶することに理がある。
まずは、杉田和博官房副長官の国会招致が先決事項である。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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