ストラテジーブレティン(264)~投機性強まる NY市場、相対的に日本株安定性増す~来年は日本株主役の年か(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2020年10月22日付の記事を紹介。低下した日本株式のボラティリティ
前編で取り上げた米国株式とは対照的に、日本株のボラティリティが著しく低下し、日本は低リスクの市場になった。9~10月の米国株の10%の変動に対して日本株式は3%に止まっている。10年代を通して日本市場はもっとも投機的市場であり、あまりにもボラティリティが高く、個人などの投資家は近づきがたかった。
日本株式取引の7割を占める外国人投資家は、投機(トレード)目的主体のプレーヤーであった。この日本株の高ボラティリティの背景にあったものが、2000年代からの異常低金利下での、日本株式の著しく高い超過リターンである。投機の妙味がとても大きかったのである。
しかしそうした小鬼(投機プレーヤー)らがNY市場に移動したことによって、日本市場に落ち着きが戻ってきたようである。図表3は3極株式VIX指数(S&P,NKY,STOXX)の推移であるが日本の落ち着きぶりが顕著である。
短期投機資金が日本株から米株に移動したこととは裏腹に、長期投資家が日本株を買い始めている。13年以降アベノミクスを評価して外国人投資家は日本株式を23兆円買い越し、今年の年初にそのすべてを売りつくしたが、10月に入り買い越しに転じている。
(1)コロナ感染少なく、経済正常化加速が見込まれること。
(2)中国回復の恩恵を受けたグローバル企業の企業業績好転。
(3)菅改革政権登場に対する評価。
(4)ウォーレン・バフェットの商社株投資に触発される。
などの要因がある。図表7を見ると、投機的ポジションから見た日本株式の需給は極めて良好であることがわかるだろう。
オリンピック開催年となる21年は、日本経済の成長率加速の年になるのではないか。(1)ペントアップ需要(欲望とカネの開放)、(2)イノベーション加速、(3)政策支援(財政出動、金融緩和)などが指摘される。世界的景気拡大のなかで、投資資金は景気敏感セクターの比重が高い日本株へと、さらに集中すると思われる。
米大統領選の影響、米国経済、市場不透明感は晴れないかも
他方、米国経済と株式は、ここ数カ月は警戒を要するかもしれない。
(1)トランプ氏が負けを認めず決まらない。
(2)バイデン氏が大統領に確定したとしても弱い政府で方向が見定められない。
(3)法人税増税、capital gain tax(譲渡所得課税)など、反ウォール街政策の実施も懸念される。
などがクリアされねばならない。コロナ感染拡大に対応した財政パッケージ成立の遅れも危ぶまれる。ただし、1月20日の就任演説以降大きく出直る可能性はあるだろう。
バイデン氏は穏健派であり、市場フレンドリーな政策に舵を切るのではないか。上院が共和党多数となる見通しであり、法人税増税、capital gain taxなど、反ウォール街政策は棚上げされるだろう。
バイデン氏の下で、大きな政府への政策レジームの変化があり得る。環境重視、税制改革と歳出増大、雇用形態の変更、国際連携などトランプ氏とは大きく異なった成長アジェンダを打ち出す可能性がある。
それらの多くは時代の要請でもあり長期的には株価にプラスと考えられるが、市場はトランプ氏からのゲームチェンジを警戒しつつ具体策を見極めるだろう。ただし、図表8,9に見られる米国株式の長期上昇トレンドは健在であろう。
(了)
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