バイデン次期大統領について~元駐米大使の見方
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日米協会会長 藤崎 一郎 氏
日米協会の加藤春一氏((一社)縄文道研究所・代表理事)より、同協会会長・藤崎一郎氏(元駐米大使)による米国大統領選挙に関する記事を提供していただいたので、掲載する。
長い、長い選挙がようやく終わりました。
バイデン氏の勝利宣言は実に力強く立派なものでした。トランプ大統領はまだ敗北を認めていないので、落ち着くまでには時間がかかりそうですが、大勢は決したようです。トランプ氏のコロナの対応の失敗と個人的な振る舞いのツケが大きかったと思います。米国は片方に揺れた振り子が戻る国ということも示しました。
バイデン新政権はかつての米国のように世界でリーダーシップを取ろうと考え、同盟を重視し、予測可能性も大きくなるでしょう。ただし、議会上院を共和党がおさえると制約はかかってきます。
事前にメディアが予想したより、はるかに激戦になりました。各州で数パーセントの接戦になりました。この背景には、米国の大きな変化があります。1960年において、(米国以外の)外国出身の居住者は860万人でしたが、2015年では4,500万人になりました。65年には7,800万人になる見込みです。日本の現在の外国出身の居住者は280万人ですから、人口比でいえば丁度1960年のアメリカと同じです。
移民は米国の強さにつながりますが、負担にもなります。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』でカンダタが自分の下で糸を切ろうとしたように、次々と後から続いてくる人々を閉め出したくなる心理が働くでしょう。
トランプ大統領はマイノリティ重視のポリティカル・コレクトネスなどが行き過ぎており、治安を重視すべきなどと言い立て、一部の国民の溜飲を下げました。また世界のために、米国がほかの国以上に大きな負担をしているという主張も打ち出しました。これらが米国民の半数近くとくに地方の人の深層心理にあることも忘れてはいけないでしょう。
バイデン氏には副大統領時代、何度かお会いしました。気さくで明るい闊達な方です。議会や外国とのネットワークとしがらみにとらわれず、オバマ大統領にはない、はっきり自分の考えを直言する率直さで政権に貢献していました。日系人の故ダニエル・イノウエ議員の親友でした。
バイデン新政権は対中政策も含め見直すかもしれません。しかし日本との関係は重視するでしょう。それは中国、ロシアなどと競争していくうえで日本が重要だからです。また長い間につちかった国民間の友情もあります。
日米協会のような民間交流の活動は、両国間の対立を防止するためにはあまり力はありません。しかしいったん対立が終われば、ただちに元に戻すビルトインされた安定装置、形状記憶合金としては役に立ってきました。両国民間の友情をはぐくんでいくために今後とも努力していきたいと思います。アメリカ国民に祝意を表し、トランプ大統領に感謝を述べ、バイデン次期大統領を温かくお迎えしたいと思います。
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