【凡学一生の優しい法律学】アメリカ大統領選の見方(3)
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2. 民主主義の学問的背景
権力に対する学者の懸念は、その集中統合性にあった。権力は統合されればされるほど強力になることは自明であり、過去の政治制度がすべて「独裁制」を志向し、具現化したものであることは、歴史により証明されている。
民主主義の原理は、権力の分散を常に志向してきた。三権分立も地方自治も合衆国制度もすべて権力分散の思想の現れであり、法律の具体的な中身についても権力分散の思想が必ず現れている。
日本国民には基本的な民主主義教育がなされていないため、この基本的視座がない。その現実として起きた政治問題が、今般の「日本学術会議法違反事件」、言いかえると「学術会議任命無視事件」にほかならない。学術会議の本質は独立した国家機関であるため、学術会議は可能な限り権力の独裁的支配から距離を置かなければならない。その方法は、会員の選任手続における権力の独裁を防止するため、学術会議自身による自治としての推薦制の設置にほかならない。
橋下弁護士は、この推薦制が権力分立の思想である民主主義の基本理念を根拠としたものであると理解できないため、総理大臣の専権的任命権を安易に容認した。とくに、経済的効率、つまり行政の経費を理由にして政策の優先順位を決める思想からは、民主主義には一定の矛盾を解決するコストが不可欠との理解が生まれないため、独裁化の道を進むことになる。大阪都構想が行政コストを大義名分としたこともその思想の現れであったため、市民の同意が得られなかった可能性がある。
3. 民主主義と法治主義は同義でなければならない
民主主義を言いかえると国民主権であり、法治主義を言いかえると法の支配であるため、両者は車の両輪であり、同時に成立し存在するものでなければならない。この両思想は現実の実践によって確認されなければならないため、現実の姿が常に正確に認識され、理解されることが必要である。
この事実の正確な認識を阻害する最大の要因が権威主義といわれる、思考形式・認識方法である。加えて、現実の国民の政治状況に対する認識は教育と言論の報道機関に依存しているため、出版・報道に携わる者つまりジャーナリストの知性に大きく依存している。国民の真実へのアプローチを実質的に大きく阻害しているものが、法律の難解性と権威主義の具現化である学歴社会、国家資格社会である。
日本では高学歴は同時に知性の象徴でもあるため、高学歴が事実上の権威主義の1つの要素となっている。実際の公教育の内容は巧妙に国民への主権者教育が排除されており、封建時代から続く「知らしむべからず、よらしむべし」が政治手法として横行している。それらが具体的に法律となったものの例として、公務員の守秘義務規定、個人情報保護法が挙げられる。
昨今では国家機密法が露骨に成立しており、政治情報がますます国民から遠ざけられている。日本が民主主義原理とは逆方向に進んでいることは明白であるが、不幸なことにその事実は国民にはまったく理解されていない。不幸な大局観の喪失である。
4. アメリカ社会と日本社会の異同
アメリカと日本は同じ民主主義の国家であるため、本質は同じであるはずだが、現実には大きく異なり、とくに国民の政治認識、権利意識には大きな差異がある。
ある識者は、日本の民主主義は国民が自らの血と涙と汗で勝ち取ったものでなく、敗戦によりアメリカからのあてがい扶持であることが理由であるという。しかしこの言説は、民主主義が国民の学習による後天的な思想であることを軽視している。
あてがい扶持であっても適切な公教育が存在したならば、日本が一人前の民主国家になれたはずであり、起源は本質的な問題ではない。その意味では、日本国憲法が「アメリカの押し付け思想」であるとの理由により、改憲論を主張する一部の政治家・学者の見解が誤謬であることは明白だ。
つまり、日本では憲法施行後の主権者教育としての公教育が存在しないことが今日の混迷の原因であるため、最終的な結論は、今からでも主権者教育をすべきということだ。
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