【縄文道通信第56号】縄文道とヒューマノミックス-人間主義経済―小島慶三先生の視座(前)
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(一社)縄文道研究所
Net-IB Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第56号の記事を紹介。今から8年前、筆者の尊敬していた、「巨星」と表現しても良い小島慶三先生が亡くなられた。 現代は政治のリーダーがいない時代であるが、日本経済新聞社の武山泰雄常務が引退後の故・竹下元首相に、「日本の政治家の質を憂いているが、日本には政治家と言われるに値する人間がいるのですか」と尋ねたところ、「日本の政治家はほとんどが自分と同じ政治屋だ。衆議院議員はすべて政治屋だが、参議院議員に1人だけ政治家と呼べる人財がいる。小島慶三先生だ」と話したことを、小島先生が当時、主催していた小島塾で武山常務からお聞きしたことがある。
小島先生は、既に亡くなっているが偉大な先生であった。縄文道の「富の分配に公平性のあった社会」について小島先生の意見をお聞きしたいと、いつも感じる今日この頃である。その理由は、小島先生は「シューマッハ―博士のsmall is beautiful(スモールイズビューティフル)の経済思想を踏まえた、人間主義に基づくヒューマノミックス経済」を主張し、『人間復興の時代―ヒューマノミックスが日本を救う』を晩年に著されたためだ。
小島先生の経歴を簡単に触れてみたい。驚くべきは10回転職されていることだが、並みの転職ではない。また、政財官学を網羅し、生涯で約80冊近い書籍を著した、総合的人間力と人間性に優れた人財であった。
小島先生が東京商科大学(現:一橋大学)を卒業された後の略歴は、以下の通りである。
(1)経済企画庁入庁。
(2)身体を壊して円覚寺で僧侶として修行。
(3)戦後、通商産業省にて経済復興政策に関わる。同省大臣官房審議官を最後に退職。
(4)日本銀行政策委員に就任。
(5)日本精工(株)の今里広記社長から懇願され、専務取締役となり、海外事業展開に貢献。
(6)この頃から上智大学、成蹊大学、一橋大学、名古屋大学で経済政策の講師を引き受ける。
(7)(株)日本興業銀行の中山素平頭取より乞われ、新しい石油開発会社、芙蓉石油開発(株)の社長に就任。
(8)産経新聞の水野成夫社長から乞われ、(財)日本テクノマートの理事長に就任。
(9)新日本製鉄(株)の永野重雄会長から乞われ、(財)日本立地センター理事長に就任。
(10)細川護熙首相時代、参議院議員への立候補を勧められて参議院議員になり、6年間勤める。上記のように、小島先生は日本の財界の四天王から乞われて職務を全うし、最後は政治家として活躍。政界、財界、官界、学界で活躍し、約80冊の書籍を著した巨星であった。また、全国で小島志塾を主宰し、農業の復興、人間主義―ヒューマノミックスの実践をされ、人づくりに貢献された。
筆者も小島志塾で薫陶を受けた。小島先生が主張された人間主義経済は、縄文道の精神と重なる面が多くあるが、なかでも経済の在り方は特にそうであろう。小島先生はヒューマノミックスについて、「直線的成長の資本主義は滅びの思想。先端テクノロジーと先端農業の結合こそ、環境問題を解決し、世界と共存する日本の道だ。日本と世界に提示する21世紀のグランドデザインである」と明言された。
現在は令和の時代を迎えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)が謳われるが、日本の食料自給率を約338%から引き上げ、自給自足の経済を達成するためには第一次産業の復興による地方再生が喫緊の課題だ、DXやAI、ロボットの最先端技術と農業、林業、水産業と組み合わせれば、環境問題は解決され自給率も向上すると確信する。
(つづく)
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