2024年11月23日( 土 )

【縄文道通信第56号】縄文道とヒューマノミックス-人間主義経済―小島慶三先生の視座(後)

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(一社)縄文道研究所

 Net-IB Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
 今回は第56号の記事を紹介。

 小島慶三先生との個人的思い出は沢山あるが、3つを紹介したい。

オーストラリア パース イメージ 1番目の思い出は、筆者が日商岩井(株)の代表として5年赴任していた西豪州のパースから帰国して、さまざまな寄稿文を小島先生にお見せしたところ、すぐに出版先を紹介するから書籍にしなさいと勧められたことだ。

 その結果、『世界一美しいまち―オーストラリアパースへのいざない』という書籍になり、小島先生から巻頭文を頂いた。小島先生は経産省の鉄鋼課長時代、日本の鉄鋼業の復興には鉄鉱石資源の確保が最重要ということで、豪州政府と交渉し、鉄鉱石の輸出解禁を解いた交渉責任者でもあった。パースにも出張され、西豪州の膨大な鉄鉱石資源の重層性を認識され、戦後の日本復興の貢献者でもあった。

 筆者が、日本に最初に輸出された西豪州のマウント・ゴールズワージー鉄鉱山の鉄鉱石輸入、開発業務に関わっていたことも奇遇であった。この書籍は、幸運にも現在、国会図書館で永久保存版として保存されている。

 2番目の思い出は、商社を退職して経営幹部や専門職をスカウトするエグゼクティブ・サーチのパイオニア企業である東京エグゼクティブ・サーチ(株)に転職する時であった。当時の江島優社長(現・(社)日本人材紹介事業協会名誉会長、日本の人財業界の草分けとして初めて旭日双光章受章、日本人材業界の巨頭)に勧誘されて、小島先生に転職について相談したときに受け取った、以下のメッセージが忘れられない。

 「自分は人材会社のお世話にならず10回の転職をしたが、コンサルタントにとってもっとも重要な仕事は、転職者が新しい職場に移り、環境に慣れるまでのフォローアップだ。今後エグゼクティブ・サーチのコンサルタントビジネスは重要になると感じるため、頑張りたまえ」。

 筆者は現在もエグゼクティブ・サーチのビジネスに関わっているが、このメッセージをモットーとしている。

 3番目は、小島先生が亡くなる前の約7年間、目が不自由になられ、書籍、新聞、雑誌を読んで差し上げる方を探されていたため、筆者の妻がお手伝いする栄誉を得たことだ。妻から、小島先生は目が不自由でありながら、記憶力は衰えず、頭脳が明晰だと何度も聞いていた。

 妻がある時、中国の猛烈な発展ぶりを見て、脅威になりつつあることを憂いていると、小島先生は、「昔、鄧小平氏から依頼で、生産性本部の団長として中国に生産体制、品質管理などの抜本的改革を詳細なレポートで提言したが、良い提言を与えすぎたかもしれない」と述懐された。

 現在は、日本も世界もパラダイムシフトの真っただなかで、先行きの不透明な時代であるが、小島先生の卓抜な洞察力と先見性から、今後の世界の予測を伺いたいと感じることが時々ある。先生は恐らく、ヒューマノミックスを踏まえて、更なる人間本来の幸せの経済を提言するであろうと考えている。

 縄文道の唱えるSDG’sと価値観を共有する「公平で平等な富の配分」、それはノーベル経済学賞候補になった宇沢弘文博士の唱えた社会的な共通資本を重んじた「人間の経済」であり、小島先生のヒューマノミックス経済に相通ずると感じる。

(了)


 Copyright by Jomondo Kenkyuujo

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