ユーグレナのキューサイ買収、それぞれの思惑は
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既報の通リ、バイオベンチャー事業の(株)ユーグレナが投資ファンドの(株)アドバンテッジパートナーズ、東京センチュリー(株)と共同で、健康食品・化粧品販売のキューサイ(株)の買収が報じられた。キューサイの売却については以前から噂されていたものであった。
コカ・コーラウエスト(株)とNIFコーポレート・マネジメントを始めとする投資ファンド4社は2010年に、キューサイ社長だった故長谷川常雄氏ほか経営陣が保有する同社の発行済み全株式を約360億円で買収。コカ・コーラウエストはその後、18年1月にコカ・コーライーストジャパン(株)と統合しコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(株)(以下CCBJH)となるときに、コカ・コーライーストジャパン側がキューサイを傘下に収めることに懸念を示していたとされている。
CCBJHはリアル店舗などを軸に販売するのに対し、キューサイはテレビや紙媒体、インターネットを通じた通販事業を主に展開。販売手法がまったく違うほか、顧客層についても、CCBJHは不特定多数の消費者相手であるのに対し、キューサイは中高年以上のユーザーが主体で、また青汁よりも化粧品販売のほうが主力となっている状況にある。買収当時は「新たな健康飲料の開発で相乗効果を生み出す」とのことで、ミニッツメイドブランドでフルーツ果汁に青汁を含有した「ミニッツメイド おいしいフルーツ青汁」が開発・販売されているが、柱となる商品にはなっていない。
またCCBJHが統合協議中の17年6月に当時キューサイの子会社だった日本サプリメント(株)が販売する特定保健用食品(トクホ)が、認可されている関与成分量を下回る配合量であったことが発覚し、認可取り消しになっていたにも関わらず、トクホ認可時と同様の効能表示をしていたとして、景品表示法違反(優良誤認)による措置命令および5,471万円の課徴金納付命令が下されるという不祥事も重なり、業績も買収前の売上高約287億円(09年10月期連結)から同約250億円(19年12月期連結)へと減少。相乗効果を得ることなく、売却に踏み切ったと思われる。
一方、買収するユーグレナは設立以降、「時価総額1,000億円」を目標に、18年に健康食品販売の(株)フック、19年には化粧品・健康食品EC事業の(株)MEJを買収するなど、通販企業のM&Aを積極的に行っており、「数年前から売上高100億円以上の有力通販企業で買収先を探していた」(関係者筋)といい、今回のキューサイの買収額は300~400億円程度とみられている。
同社はもともと研究開発が主体として設立した企業であり、ユーグレナは原料・OEM供給から始まり、13年頃から通販による直販主体に切り替えた。その後東証一部に上場し、売上高100億円を超える企業に成長したが、ここ数年は18年11月期から赤字決算が続き、直近の20年11月期は売上高133億1,700万円で14億8,600万円の最終赤字で厳しい業況にある。今回、アドバンテッジパートナーズ、東京センチュリーの協力で、停滞する通販事業にテコ入れし、一気に収益力を高めるとともに、設立時から研究開発を続けているバイオ燃料の開発・供給を本格化させたい考えだ。
今回のM&Aはお互いに利害が一致するかたちに見えるが、両社とも「緑汁」と「青汁」を取り扱い、豊富な栄養成分による同様の健康維持を訴求している点、加えて両社ともスキンケア商品をそろえている点において、いわば競合同士にあり、今後どのように通販事業を伸ばしていくのかが注目される。株式譲渡日は来年1月29日に行われる。
【特別取材班】
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