2024年11月14日( 木 )

【企業研究】部門別収益で明暗~西日本鉄道(株)

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 連結営業収益4,000億円を目前にしてコロナ禍に直面した西日本鉄道(株)。収束の見通しが立たないなか、もはや今期は赤字額をどれだけ削減できるかに課題が移ってきた。公共交通機関を担う事業者として自己都合のみの選択ができないなか反転攻勢に向け難しいかじ取りを余儀なくされる。

役割分担が機能していた平時の事業部門

 西日本鉄道(株)の連結事業セグメントは「運輸業」「不動産業」「流通業」「レジャー・サービス業」「物流業」と建設業など「その他」の事業からなる。もっとも陣容が分厚いのは7,400名を擁する「運輸業」だが、グループで一番売上を稼いでいるのは「物流業」だ。

 実力派集団「国際物流事業」を擁する「物流業」は2019年3月期にはグループで唯一営業収益1,000億円を超えた。グループ随一の利益を稼いできたのは「不動産業」で、19年3月期に約81億円、20年3月期に約75億円の部門営業利益を上げた。ホテル・旅行などの「レジャー・サービス業」も売上は小さいものの、19年3月期に部門営業利益約23億円で貢献してきた。一方、西鉄ストアなどの「流通業」は売上高で貢献してきた一方、営業利益は唯一10億円に届かなかった。

 こうした状況下、コロナ禍直後の20年3月期に異変が生じた。とりわけ「レジャー・サービス業」への影響は早く、かつ大きかった。部門営業利益は85%減の3億3,900万円。「運輸業」の減収率は1.5%に食い止めたが、これは太宰府エリアで発生した鉄道事業の「令和」特需の「貯金」があったからだ。

コロナが突き付けた事業間格差

 こうして迎えた21年3月期中間期決算は前期比約20%の減収となる営業収益1,512億円に沈んだ。経常損失は132億円。「レジャー・サービス業」は60%の大幅減収となった。内訳はホテル事業が78%(内部取引除く)、旅行事業が85%の減収で部門営業損失は67億円となった。

 前年踏みとどまった運輸事業も赤字転落。鉄道事業が37%、バス事業が40%、タクシー事業に至っては46%の減収で運輸事業の営業損失は83億円に膨らんだ。

 一方、不動産、物流、流通も減収を余儀なくされたが黒字は確保した。不動産業は「福ビル」や「天神コアビル」の閉鎖などもあり家賃収入が減少したが、19億円超の営業利益を稼ぎ出す強さを見せた。物流業も輸出入量の減少や国内貨物取扱高の減少があったものの、減収率は2.2%にとどめるなど健闘し、セグメント営業利益も12億円を確保した。

 これまで利益面で貢献できなかった流通事業だが、チラシなど販促費の削減により前年通期を超える営業利益9億2,000万円を叩き出した。ただし巣ごもり消費にともなうほかスーパーの活況ぶりを見ると減収を余儀なくされたことから個々の店舗の競争力が問われることとなった。

大規模プロジェクトに暗雲

 こうしたなか、西鉄もさまざまな対策を講じている。21年春から開始する大牟田線の最終電車の発車時間の繰り上げや20年6月に発表した定員10名のマイクロバスを活用した乗り合い型交通サービス「のるーと」の全国展開。そして、20年12月からは青果と顧客を同時に運ぶ貨客混載の高速バスの本格運行を開始した。ただし、現状ではいずれも大胆なコスト削減や大幅増収が見込める取り組みではなく、膨大な赤字を抱える運輸事業でどこまで効果を発揮するか不透明だ。

 西鉄にとって痛いのは、稼ぎ頭である不動産業が担う「福ビル街区建替プロジェクト」に着手した途端にコロナ禍に見舞われたことだ。天神コアビル、天神第一名店ビルとの一体開発が決まり、よりスケールの大きい開発となったが、コロナ禍は人の集積する複合ビルのビジネスモデル自体に課題を突き付けた。

 二極化が鮮明になった現状を見れば、赤字2事業で大ナタを振るえば収益構造は格段に改善するのは明確だ。ただし同社はインフラとしての責任だけでなく、地域経済のけん引役も担っている。

 ジレンマに陥るなか、中間期終了時点で21年通期決算では売上高3,300億円を死守し、経常赤字額を180億円に抑える計画を打ち出した。同社は社会的責任を維持しながら、いかに収益を確保するかという難題に向き合わなければならない。

【鹿島 譲二】


<COMPANY INFORMATION>
代 表 :倉富 純男
所在地 :福岡市博多区博多駅前3-5-7
設 立 :1908年12月
資本金 :261億5,729万円
業 種 :鉄道ほか
営業収益:(20/3連結)3,894億4,600万円

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