2024年11月24日( 日 )

2020年企業倒産・休廃業の動向と今後の見通し~コロナ支援策の限界を打ち破れ(3)

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九州大学非常勤講師・フリーライター 辻部 亮子 氏

 日本国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから、1月16日で丸一年を迎えた。緊急事態宣言にともなう外出自粛要請などを受けて、人々の消費行動は著しく減衰、サプライチェーンの混乱もあり、企業業績はみるみる悪化した一年であった。

コロナ第3波で2021年1月は早くも倒産・休廃業加速の兆し

 実際、ふんだんに供給された資金も、事業の基盤を立て直すものにはなり得なかったようである。2020年は何とか持ちこたえた企業も、新型コロナウイルス「第3波」の襲来および年明け7日の緊急事態宣言再発令を受けて、再び深刻な経営悪化に直面している。

 東京商工リサーチの1月26日の発表(※9)によれば、1月の新型コロナウイルス関連破綻(負債1,000万円以上)は、26日までに76件が判明。昨年2月からの累計は全国で919件であり、負債1,000万円未満の小規模倒産も合わせると、累計965件となった。負債総額30億円以上の倒産も今年に入ってすでに7件発生。そのうちの1件は1月15日に破綻した静岡県の製紙メーカーの大興製紙で、負債総額140億800万円もの大規模倒産である(※10)。

 21年はこうして早々に「小・零細企業から大企業まで経営破綻が広がっている」状況が認められるわけだが、そこからは、昨年のコロナ関連支援で調達した資金は緊急事態宣言再発令の時点ですでに枯渇していたこと、さらにいえば、その大半が20年中の赤字補てんに費やされて終わったことをうかがわせる。

 比較的体力のある企業も、消費低迷による収益減が続いたために、いよいよ社の存続を最優先とするモードへシフトしたようだ。「GINZA SIX」(東京都中央区)の大量閉店(※11)が象徴するように、アパレルやコスメ、服飾雑貨などが店舗を次々縮小していることは、百貨店や大型商業施設に空きテナントが目立つようになったことからも実感できる。

 製造業も同様である。20年9月から上場企業やその子会社などが事業を外資などに売却する動きを活発化させており、20年はリーマン・ショック直後の09年以来の多さとなる399件を数えたと報じられているが、今年は早くもブリヂストンと資生堂が一部事業の売却を表明するなど、この動きは一層加速する兆しがある(※12)。

 何よりリストラの急増である。東京商工リサーチの発表(※13)によれば、20年に早期・希望退職募集を行った上場企業は93社で、前年と比べて2.6倍に急増。募集人数も1万8,635人に上り、リーマン・ショック直後の09年(191社)につぐ高水準となった。しかも、その半数以上が直近の本決済で赤字に陥っていた。

 21年もすでに1月21日時点で22社、計3,490人の実施が判明しており、前年同期(11件、2,220人)を大きく上回るペースとのこと。多くの企業が、経営基盤を立て直せないままコロナ第3波の直撃を受けたがゆえに、事業縮小やコスト削減に励まなければならない状況にあることが、よく示されている。

 事業縮小やリストラを通じて当座は切り抜けられるとしても、大量の失業者が生み出されることにより消費はますます停滞、それが企業の収益をますます低下させるという悪循環に陥ることは、火を見るより明らかだろう。

 厚労省の発表によれば、緊急事態宣言の再発令が出された1月7日の時点で、コロナ失業は見込みも含めて8万人超(※14)。その直後に行われた東京商工リサーチのアンケート(1月22日発表)(※15)では、中小企業の廃業検討率が前月より悪化し、とくに飲食店は4割に迫るという結果であった。その後数週間を経た現在、倒産はもちろん、自主廃業を選択する経営者がさらに増加している可能性がある。

(つづく)

※9:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210126_01.html
※10:https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/index.html
※11:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79559?imp=0
※12:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD204B00Q1A120C2000000
※13:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210121_01.html
※14:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210107/k10012801061000.html
※15:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20202122_01.html

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