広報官はNHKでなくNHK職員に連絡した?
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「昨年10月26日放送の『ニュースウオッチ9』での学術会議問題に関する菅首相出演時のやり取りについて、山田真貴子内閣広報官がNHK政治部長の原聖樹氏に電話を入れた可能性もある。『NHK関係者と何らかの方法でやり取りした事実があるか』と問う必要がある」と訴えた2月28日付の記事を紹介する。
政治は結果で判断される。
年中無休で新しい変化が起きる。
それぞれの変化に対してトップは判断をしなければならない。その1つ1つの判断が後に結果を生み出す。
その結果によって判断の是非が判明する。
1つ1つのことがらに「全集中の呼吸」で対応しなければならない。菅内閣が発足して5カ月が経過したが、この内閣は下り坂を滑り続けている。
その理由は菅首相が判断の誤りを積み重ねていることにある。
すべての時点で判断を誤ってきた。
その結果が現在の状況を招いている。
因果応報だ。政権発足時に菅首相が判断したのは日本学術会議新会員の任命拒否。
人事権をふりかざして人々をひれ伏させる。
これが菅流だが、この流儀を日本学術会議に持ち込んだ。しかし、学術会議の任命については法律の定めがあり、その運用については、国会での議論の積み重ねがある。
このことによって、日本学術会議による推薦を内閣総理大臣が覆してはならないと定められてきた。
しかし、菅首相はこの法定事項を無視して任命拒否に突き進んだ。問題は、いまなお解決していない。
菅首相は上げた拳を下ろすことができず、処理が棚上げされている。
重大な判断の誤りだった。日本の主権者にとって最重要の関心事項はコロナ感染の収束。
経済活動が大切であることを誰も否定しない。
しかし、経済活動を正常化させるためにもコロナ感染音収束が優先されるべきだと国民の大多数が判断している。昨年11月にコロナ感染再拡大が鮮明になった。
その背景にGoTo推進があった。
会食を奨励し、旅行を奨励すれば、感染が拡大するのは当たり前。
その懸念が現実のものになった。「過ちて改むるに憚るなかれ」だ。
直ちにGoTo見直しが必要だった。議論が頂点に達したのが11月3連休だった。
3連休前にGoTo全面停止に動く必要があった。
しかし、菅首相はGoToを12月28日まで止めなかった。
その結果としての感染爆発を招いた。12月入り、英国で変異株が発見された。
変異株がコロナ感染収束問題に与える影響は大きい。
直ちに外国人の入国規制を強化する必要があった。菅首相は12月28日に規制強化を表明したが羊頭狗肉だった。
外国人入国の大宗を占めるビジネストラック、レジデンストラックの規制を行わなかった。
菅氏が方針転換したのは1月7日のこと。
変異株の日本流入を完全に容認してしまった。2月3日に東京五輪組織委の森喜朗氏が女性蔑視、女性差別発言を行った。
直ちに森氏辞任措置が必要だったが、菅氏が動き始めたのは2月11日に森氏主導で後任会長に川淵氏指名が報道されてからだった。
菅氏が行動しない間に問題は燎原の火のように燃え広がった。そして表面化した菅正剛氏が主導したと見られる公務員法違反接待事件。
最大の焦点は2018年の総務省による囲碁将棋チャンネルの不自然な認可。
この決定を下した最高責任者が山田真貴子情報流通行政局長だ。
その山田氏が翌年、7万4,000円の高額接待を受けた。山田氏が官邸記者会見を仕切れば、質問が山田氏問題に集中するのは目に見えている。
山田氏更迭に追い込まれることは確実だろう。
しかし、菅首相は山田氏続投を表明した。1つ1つの重要な判断ミスが政権の力を確実に凋落させる。
菅内閣終焉の時期が近付きつつある。菅内閣終焉劇場が加速していない最大の背景は野党存在感の欠落。
野党の対応が生ぬるい。2月25日の衆院予算委員会に山田真貴子内閣広報官が招致された。
自民党国対と折衝して山田氏の国会招致が実現した。
しかし、テレビ中継がなかった。
野党はテレビ中継を求めることができたはずだ。要求が受け入れられなければすべての審議を拒否する強気の対応を示せたはずだ。
しかし、立憲民主党はテレビ中継を実現させなかった。
明らかに腰が引けている。予算委員会の追及でも山田氏のあいまい答弁を全面的に許容した。
追及が甘い。山田真貴子氏がNHKニュースウオッチ9における菅首相出演の際の対応について、クレームを入れたとの週刊誌記事に関する追及も不完全だった。
菅首相は山田氏に確認して
「NHKに抗議の電話を入れた事実はない」
の答弁を繰り返した。このことについて、「抗議の電話」を入れていなくても、「NHKに電話を入れた」事実があるのではないかとの憶測が広がった。
しかし、2月25日の質疑で、山田広報官は「NHKに電話を入れた事実を確認できなかった」と答弁した。これで追及がやんでしまったが、安倍内閣、菅内閣が「うそつき内閣」であることを忘れてはならない。
同時に「ごはん論法」の利用者であることも忘れてならない。NHKの自民党および菅内閣への対応窓口はNHK政治部だ。
現在のNHK政治部長は原聖樹氏。昨年10月26日放送のニュースウオッチ9において、臨時国会で焦点となっていた学術会議問題についてキャスターが、
「現状を改革していくっていう時には、説明が欲しいという国民の声もあるようには思うんですが」
と問いかけると、菅首相は語気を強めて、
「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか」
と不快感を示した。このことについて、山田真貴子氏がNHKに対して、
「総理、怒っていますよ」
「あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います」
とクレームを入れたと週刊誌が報じた。このことに関する質疑が国会でも行われたわけだ。
菅首相と山田氏は、「NHKに抗議の電話を入れていない」「NHKに電話を入れていない」と答弁したが、「ごはん論法」を踏まえると、この答弁で、疑惑が払拭されたことにはならない。「番組でのやり取りについて、NHK関係者と何らかの方法でやり取りした事実があるか」
と問う必要がある。山田氏が原聖樹氏の携帯電話に電話を入れた可能性もある。
この場合、山田氏が「NHKに電話を入れた事実は確認できなかった」と言い張ることは「ごはん論法」上はあり得る。今後、山田氏が官邸での菅首相記者会見を仕切る場合、記者が山田氏に質問を集中する可能性もある。
記者クラブは官邸記者会見の主催者として、記者会見の方式変更を首相官邸に申し入れるべきだ。
首相会見の前に山田氏が記者会見に応じなければ官邸記者会見をボイコットする手もある。
官邸記者クラブの対応が注目される。東京都の新規陽性者数は2月27日、28日と、2日連続で前週値を上回った。
人の移動が明確に再拡大に転じており、新規陽性者数の減少が続くのか疑念が存在する。
このなかで、菅内閣は五輪との関係で、外国人の入国制限の再緩和を検討し始めていると報じられた。菅首相が重要判断を誤り続ければ菅内閣は早期に終焉する。
野党の煮え切らない対応は、菅内閣を延命させるためのものとの見方もある。衆議院総選挙の年である21年の政局変動から目を離せなくなっているが、菅内閣が判断の誤りを重ねることによる被害が、日本国民に降りかかる点を忘れてはならない。
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