2024年12月29日( 日 )

山田真貴子官邸発表会をボイコット

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、山田真貴子氏の内閣広報官辞任前の2月26日付であるが、「東北新社衛生放送事業子会社の役員は利害関係者であり、公務員倫理規定に違反する。しかも、7万4,000円の高額接待は収賄罪が成立する可能性のある金額だ」と厳しく追及した記事を紹介する。

山田真貴子氏が総務省情報流通行政局長の職位にあった時期に、東北新社子会社の衛生放送事業会社が不自然な認可を得た。菅正剛氏が取締役を務める東北新社グループの子会社「(株)囲碁将棋チャンネル」が2018年に総務省から「東経110度CS放送に係る衛星基幹放送の業務認定」を受けた。この認可が極めて不自然である。

当時、総務省はハイビジョン化を進めるために衛星基幹放送の大幅な組み替えを行っていた。認定においてはハイビジョン放送であることが重視された。実際、このとき認定を受けた12社16番組のうち、11社15番組がハイビジョン放送だった。

ところが、「囲碁将棋チャンネル」番組だけ、ハイビジョンではない標準画質放送であるのに基幹放送の業務認定を受けた。この認定を決定した情報流通行政局のトップが山田真貴子氏だった。

その山田氏が総務省職員ナンバー2の総務審議官の職位にあった、疑惑認可の翌年に東北新社から過剰接待を受けた。1人7万4,000円の飲食饗応接待を受けた。東北新社衛生放送事業子会社の役員は利害関係者であり、公務員倫理規定に違反する。しかも、7万4,000円の高額接待は収賄罪が成立する可能性のある金額だ。

国会に招致して説明を求めても、明白な証拠がない限り、口からでまかせの問題にならない答弁を行うことは目に見えている。

TBSの情報番組に出演するコメンテーターが山田真貴子氏の説明を絶賛したが、TBSは工作員まがいの茶坊主のようなコメンテーター起用をやめるべきだ。日曜朝の情報番組でも、司会者や出演者が工作員であることを告白するような政権擁護発言を繰り返す。

電波メディアの生殺与奪の権を総務省情報流通行政局が握っている。その支配下に置かれているから、テレビ局は政権工作員的な人物を番組の要所に配置しなければならないのだろうが、仮にそうであるなら、バッジなどを付けさせて、視聴者にわかるような配慮をすべきだ。

「御用バッジ」のようなものを製作して、御用コメンテーター、御用司会者にはそのバッジを付けさせる。これがあれば、視聴者は御用発言があっても、「これは御用人の発言」と認識して受け止めることができる。

インターネット上のニュースポータルサイトに、ニュース記事を装った広告が散りばめられている。しかし、よく見ると「PR」の表示がついているから一般の記事と区別できる。テレビに登場する「御用人」については、その属性がわかるように「御用バッジ」を付けさせて視聴者に配慮すべきだ。

テレビ局が自主的に対応できなければ、市民がコメンテーター等の属性を評価、判断する格付機関的な第三者機関を立ち上げて、広く市民に情報を周知させる必要もあるだろう。その一方で、政治権力に対しても厳しく批判を展開する良質な識者が画面から遠ざけられている。そのマスメディアににらみを利かせるのが総務省情報流通行政局。

菅義偉氏は菅氏に巨額の資金支援を行う企業に長男を入社させた。親のコネで入社したことは客観的に見て間違いないと思われる。

バンドマンをしてぶらぶらしていた菅正剛氏を、菅氏が総務相に就任した際に大臣秘書官に起用した。菅正剛氏は大臣秘書官を退職した後、東北新社に入社した。

大臣秘書官時代に総務省幹部と面識を得た。東北新社に入社し、衛星放送事業子会社の役員を兼務して、総務省幹部に対する違法接待に邁進したのが菅正剛氏だ。

菅氏ら東北新社幹部による総務省幹部に対する違法接待の場では、衛星放送事業子会社の業務にかかわる会話をしていたことが明らかにされた。

総務省幹部は国会に招致されて追及されてもウソを突き通していた。しかし、音声データという決定的な証拠を突き付けられると、発言内容を変えて事実を認めた。国会に招致しても、決定的な証拠がなければウソを突き通す人物たちなのだ。

総務省情報流通行政局は極めて不透明な認可を行った。その時期の局長に対して翌年過剰接待が行われている。この関係を突き詰めれば、贈収賄事件に発展する可能性もある。

国会でいい加減な答弁を行い、懲戒処分もなし、内閣広報官更迭もなし、で幕引きを図ろうとするなら、主権者国民が黙っていない。この1点を理由に次の世論調査で内閣不支持を広げる国民運動の展開が必要だ。

菅首相は東北新社から政治献金500万円を受領している。菅氏は総務大臣を務めた後、内閣官房長官に就任した。内閣官房長官に就任し、内閣人事局を通じて官僚人事に独裁権を行使した。その独裁人事によって山田真貴子氏を総務省情報流通行政局長に起用したと見て取れる。

その山田氏が東北新社衛星放送事業小会社に対して不自然な認可を付与している。東北新社に対して菅義偉氏が便宜を図り、その見返りに菅氏が東北新社から現金を受領したとの図式を描くことも不自然でない。菅義偉氏と東北新社との関わりが政治献金500万円だけなのか。徹底した捜査が必要である。

首相官邸での首相会見を山田真貴子氏が仕切ることも極めて不適切だ。山田真貴子広報官は総務省在職中に情報流通行政局長の地位にあった。情報流通行政局長は電波産業を支配下に置く。電波産業の生殺与奪の権を握る部局だ。そもそもこの局を創設して、電波産業の支配権を獲得させるうえで主導的役割を担ったのが菅義偉氏だ。

首相官邸での記者会見では記者から事前に質問を提出させる。官邸はあらかじめ質問に対する答弁を官僚に用意させる。質問者である記者の誰を指名するのかもあらかじめ決定されているようだ。首相に対して事前に質問を提出せず、厳しい質問をぶつける記者は指名しない。

首相の日程が空いており、質問が無数に残存しているのに、一方的に会見を打ち切る。こんなものを記者会見と呼んではいけない。「菅首相発表会」とすべきだ。

そもそも記者会見は記者クラブが主催するもの。官邸の側用人が会見を仕切ること自体がおかしい。事前に質問を提出させず、フリーに質問させるべきだ。記者クラブの幹事社が司会を務める方式に会見の方式を変えるべきだ。

あらゆる質問にペーパーなしで回答できる力量が首相に求められる。官僚が用意した原稿を読むだけなら、会見など開かず、記者からの質問と官僚が作成する答弁を官邸HP上に公表するだけでよい。その方式なら、すべての質問に回答を準備することができるはずだ。

官僚が原稿を用意しても、正しく読むことすらできないのだから、官僚が作成した答弁をHPに公開する方が、間違いがなくて良い。

山田氏は「飲み会を絶対に断らない女としてやってきた」と明言している。このこと自体、極めて不適切だ。反社の人物から飲み会に誘われても「絶対に断らない女」でやってきたということになる。

公務員倫理規定も存在する。「絶対に断らない」では、倫理法に違反するケースが出てくる。「絶対に割り勘で参加する」ことを守ってきていないのだから、東北新社と同様に違法接待は無数に存在すると推察される。山田氏に必要なことは「質問を絶対に断らない女としてやってゆくこと」だ。

官邸での首相会見は3流・5流の発表会だ。事前に質問を提出させ、官僚が答弁を作成して行う発表会は、特殊な国家が実施するもの。記者に対してペーパーなしで適切に答弁する能力をもたないなら首相になるべきでない。そうなると、与党では該当者が存在しなくなるのだろうが、その場合は「該当者なし」のほうがまだましだ。

官邸の記者クラブのメンバーは合議のうえ、官邸記者会見の方式変更を政府に申し入れるべきだ。記者クラブ主催の会見であるなら、記者クラブが会見ルールを適切に定めて、記者クラブが会見を仕切るべきだ。菅首相が応じないなら、官邸が独自に「発表会」を設営すべきだ。

現行方式なら良心あるメディアは会見をボイコットすべき。日本政府の前近代性、メディアの癒着体質、双方の刷新が必要不可欠だ。まずは、山田広報官が仕切る「発表会」拒絶から着手すべきだ。


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植草一秀の『知られざる真実』

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