2024年12月22日( 日 )

新本社ビル建設ではずみ 不動産投資で東京制覇を目指す

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芝浦グループホールディングス(株)

新本社ビル建設で決断力を加速

 北九州の家電販売業からアイデアと行動力で身を興し、「平成の発電王」として知られる巨大な存在にまで身を立てた、芝浦グループ全体を統括する「総帥」、新地哲己会長。新地会長は今年、念願の新本社ビル建設をスタートさせ、芝浦グループは福岡市中央区(那の津3丁目)に立地する地上10階建新本社ビルの話題で沸き立っている。2020年6月24日に地鎮祭を終え、22年春に竣工予定だ。

 芝浦グループホールディングス(株)躍進の象徴とも呼べる新本社ビルにはグループ企業全12社を集結させる予定で、同グループの結束力を高めると同時に、グループ企業の代表がすぐに集まることのできる環境で決断力を加速させる狙いもある。

 同グループの基本戦略は、建設事業をはじめとして、不動産、農業、メガソーラー、電力小売、ホテル事業、最近ではイベント事業まで含む多角的事業の展開。そのマネジメントを担うのが、グループの頭脳であり経営と資金調達を担当する芝浦グループホールディングス(株)だ。

 創業者で代表取締役会長兼CEOの新地氏が、ホールディングスを筆頭に全12社を率いる。時代の変化を見極める目と対応力のたしかさは、新地会長を知る経営者仲間の評価が一致するところ。ホールディングス化にともない、全体を見通した経営戦略を練ることができるようになり、同社が強みとする課題解決力や高い技術力がさらに相乗効果を生んでいる。

福岡市中央区那の津に建設される、新本社ビル(イメージ)

借入1,000億円を目指す

 今年に入って国内でも新型コロナウイルスの感染が広がり、外出自粛などの影響で国内経済は大きな打撃を受けている。同社もホテル事業などにおいて大きく売上を落とし、7〜8億円の減収が想定されるなか、積極的な不動産投資による家賃収入や太陽光発電による売電などのストックビジネスで、グループ全体では堅調を維持している。

 新地会長自身もコロナ禍の影響で行動が制限されたなかで、グループの新展開について構想を練ってきたという。今後、グループの収益の柱となる、東京における積極的な不動産投資を続けていく考えを明らかにしている。

 「(コロナ禍は)リーマン・ショック以来の世界的ダメージ。自由に海外に行けなくなったが、不動産については継続して(投資先を)探している。大企業もコロナ禍によるダメージをうけており、売上をたてるために保有不動産を売却し始めている。その影響で都内でも安く、良い物件が手に入るようになった」(新地会長)。

 不動産価格については、新地会長の体感で「東京進出したころよりも、2割から3割近く安くなっている」(新地会長)と言い、利回りについても6~7%台の好物件が市場に出回り始めていると話す。

 「田園調布にある立地の良いビルを含め、年内には東京で累計20棟のビルを入手する予定です。今年の夏ごろに借入が500億円を超えました。当初から借入500億円を目指していたというと驚かれるのですが、うちにはそれ以上の資産があるという証明でもあります。これは運転資金ではなく不動産購入のための借入であり、今後は1,000億円の借入を目指します」(新地会長)。

 新地会長は、「我が社は東京の銀行にはまだまだ知られていない」と謙遜するが、全国から集まる地方銀行からの営業が相次いでいるという。「港区芝1丁目に4棟のオフィスビル、マンションを入手しています。福岡の大きな案件も、東京にいるからこそ『バルクで(まとめて)買ってほしい』という情報が入ってくる。今後も攻めの姿勢を貫きたい」と、意気軒高だ。

信頼し、任せて育てる人心掌握術

 新地会長の組織論や人材育成論は独特だ。想定するのは、ホールディングス(HD)の下に連なるグループ企業に業務を割り振り、それぞれの業域で責任をもって成果を上げさせるという「ツリー型」の組織運営だ。グループとしての幹(インフラや情報)は共有し、それぞれの枝(グループ企業)で果実(収益)を実らせて、全体として成長を目指す。「新地流」が独特なのは、各グループ企業に対して「HDが銀行と関係性を築いて資金調達するので、グループ企業の社長がそこ(資金調達)に頭を回す必要はない。HDがとってきた仕事をきちんとやり遂げてくれれば、それが最大の功績」と徹底していること。

 「私が起業したころに一番頭を悩ませたのが資金調達です。それはどんな企業のトップも同じで、社長の頭のなかの8割は資金繰り(笑)。だから、その苦労をなくしてあげれば、社長は100%自分の事業に打ち込むことができるし、新しいアイデアも沸いてくる。グループ企業の社長には資金繰りの苦労を負わせず、さらに営業の負担もカットして、それぞれの事業を洗練させることに向き合わせています」。

 グループ企業の社長に任命する方法も変わっていて、能力があると見込めば「~人抜き」の大抜擢もあり得るという。「場を与えてやれば、人は能力を発揮するものです。ただし、その場をつかめるかどうかは実力の他に運やめぐりあわせもある。たとえば会食の場でいきなり部長を社長に指名することもありますが、それはそういう〈場〉に呼ばれるというチャンスを授かっているということでもあるんです」。

 自身が苦労した分、後進の道はきれいに整備しておいてあげたい。親心にも似た理念でグループをまとめあげる新地会長。次は医療法人をサポートする事業を始めている。東京都内に、幹細胞治療のクリニックが開院予定だという。ピンチをチャンスに変え、世の中のニーズに合わせて変化する、これこそ芝浦グループ躍進の原動力なのだ。


<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長兼CEO:新地 哲己
代表取締役社長   :新地 洋和
所在地:北九州市小倉南区上石田4-17-22
    福岡市中央区天神3-10-30(福岡本部)
    東京都港区芝1-15-14(東京支社)
設 立:2010年8月  
資本金:4億5,400万円(資本準備金含む)
TEL:092-718-0067(福岡本部)
URL:https://www.shibaura-group.com


<プロフィール>
新地 哲己
(しんち てつみ)
1953年生まれ。福岡県田川市出身、門司工業高校(現・豊国学園高等学校)卒。71年家電販売会社に入社、77年電気機器販売店の「シンチデンキ」起業。84年芝浦特機(株)(現・芝浦建設(株))に法人化。2005年に日本発「全戸個別供給型太陽光発電付賃貸マンション」を開発。その後、賃貸・分譲マンション「ニューガイア」シリーズを九州で展開。10年、持株会社芝浦グループホールディングス(株)を設立。12年7月の全量買取制度の施行に合わせて、メガソーラー事業(大規模太陽光発電所)を始動、中小企業として日本初のメガソーラー発電所を建設。

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