【縄文道通信第64号】縄文道ユートピア論―平和に就いて~縄文道――武士道――未来道
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Net-IB Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第64号の記事を紹介。縄文道ユートピア論、平和について
日本各地で約1万4,000年続いた縄文時代の遺跡、遺構から、毎年、膨大な数のさまざまな遺物の発掘が行われていることは良く知られている。発掘技術も日進月歩しており、コンピュータで情報収集され、蓄積されるデータも膨大な量になってきている。
現在までの考古学者の分析では、縄文人の人骨、遺物から人間を殺傷する武器は発掘されておらず、武器での殺傷跡は人骨にも検出されていないという結果が出ている。殺傷率約1.8%で世界の4大文明地域(殺傷率十数%といわれる)と比較しても圧倒的に低い。武器もなく戦争のない平和な時代が日本列島で約1万4,000年も続いたことは、日本人の誇りでもあり、世界史の上でも稀有といえることだ。
世界の人類の歴史を振り返ると、旧約聖書と新約聖書に平和に就いての言及がなされている。
<旧約聖書 民数記>
「主があなたに向けて、あなたに平和―シャロームを贈るように」<新約聖書マタイ伝5章9節>
「平和を実現する人は幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」<聖徳太子の17条の憲法 第1条>
「和を以て貴しとする」聖徳太子は仏教とともに、ブッタの平和な思想を取り入れ、一切衆生の平等、成仏の平等と平和思想に基づいて17条の憲法を604年に制定した。
以前に縄文道通信でも取り上げたトーマス・モア卿はユートピア論を1516年に著した。「ユートピア、理想郷は自由と規律を兼ね備えた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し、戦争で得られた名誉ほど不名誉なものはない」として平和な世界を著した社会思想の第一級の古典といわれる。
さらに19世紀にドイツのプロイセンで傑出した哲学者、イマニエル・カントは『永遠平和のために』という本の中で「世界の恒久平和はいかにしてもたらされるべきか」を著した。この書籍は、その後の国際連合の創設にもつながり、平和論を空論ではなく具体論として著した不朽の名著といわれる。そのなかのいくつか名言を紹介したい。
「平和というのはすべての敵意が終わった状態をさしている」
「戦争状態とは武力によって正義を主張するという悲しむべき非常手段に過ぎない」
「常備軍はいずれ一切廃止されるべきだ」世界で平和運動を推進する宗教組織、団体、個人は膨大な数に上り、平和を希求し実践してきた偉人も多い。
現代における偉人として、インドで生まれた2人の「愛と平和の実践者」を紹介したい。1人はマハトマ・ガンジーである。ガンジーの功績はいうまでもなく、「無抵抗な平和実践主義者で、非暴力、不服従で、英国からの独立を成し遂げた」。彼の足跡は自叙伝も含め、多くの書籍で紹介されている。
もう1人はマザーテレサだ。世界で極貧にあえぐ人々や病気に侵されている人々に命の館をつくり生涯を捧げた聖女である。多くの愛と祈りと平和へのメッセージは膨大な書籍に記されているので省くが、ブッタとともにインドという国から出現したのは不思議なことだ。
最後に、現実論に立ち返って世界中の国際紛争を調停した平和学の世界的権威、フィンランドのヨハン・ガルトゥイング博士を紹介したい。ガルトゥイング博士は日本人への提言として『日本人のための平和論』という書籍も出版している(2017年にダイヤモンド社から発行)。ガルトゥイング博士の平和論は「平和を戦争のない『消極的平和』を超える、貧困や抑圧、差別と言った構造的暴力の止揚を目指す『積極的平和』を主張している」ことだ。
筆者は、縄文時代から始まった平和論をここまでで述べてきたが、紛争、戦争の絶えないこの混沌とした世界にあって、日本は世界に向けて恒久平和を論じることができる国の1つであると考えている。それは、平和な時代を約1万4,000年も継続してきたという人類史上も稀な「平和遺伝子」をもつ国柄であり、広島と長崎で原爆による2度の被爆体験をもつ国であるからだ。
日本は、世界の核兵器の増強競争、米中の覇権争いが続き、周辺国から核兵器を向けられた厳しい状況下、平和を愛する縄文遺伝子を基軸に、徹底した抑止論を用いて平和を実践していくべきであろう。
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