コロナ後の航空業界の在り方(中)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
コロナ禍により、航空業界は青息吐息の状態になっている。航空業界は、旅行業などと同様に「平和産業」と言われ、戦争やテロ、政情不安などが発生すると、需要が落ち込んでしまうという、構造的な弱点を抱えている。
JALとANAのコロナ禍での対応がわかれた要因は、以下の2点が挙げられる。
(1)財務格差
(2)国際線依存体質JALは2010年の経営破綻後、5,215億円の債務免除で財務の健全化が進んだ。20年6月末時点でANAの有利子負債は1兆3,589億円、自己資本比率は33.9%であった。一方のJALは、それぞれ5,046億円、45.9%と差がある。
とくにJALは、1年以内に返済や償還が必要な短期の有利子負債が、20年6月末時点で507億円と非常に小さい。
ANAの今後の課題は、「国際線をどこまで縮小するか」である。ほとんどの海外同業者は、新型コロナウイルスの影響が4~5年続くと見て、事業規模を縮小して再出発を考えている。
そうなると中期的な余剰人員の発生は避けられない。すでにJALは、業務量の減っている約1,000人の客室乗務員を地方の観光振興と兼業させる「ふるさと応援隊」の結成を発表し、人員配置に取り組んでいる。ANAも雇用の維持に向けて、大胆な従業員の適正配置が急務といえる。
国際航空運送協会(以下、IATA)の推計では、世界の国際線需要が19年と同水準に戻るのは24年とされる。ANAは、「羽田空港発着の国際線の発着枠に関しては、約3割持っており、これがJALよりも多く、自社の強みになる」と考えている。
しかしコロナ禍では、国際線の運航がほとんど実施されておらず、発着枠をもっているだけでは、収入は生じない。これはANAに限らずJALもそうであるが、旅客需要がすぐに回復する地域や都市を、24年まで待つのではなく、迅速に見つけ出さなければならない。
そうなると入国規制に左右されない、国内線旅客の早期回復に期待するしかない。日本国内の航空需要は旺盛であり、前期にJALは総収入の36.4%にあたる5,146億円、ANAで同34.4%の6,799億円を稼いだ。
IATAは、国内線の需要が19年の水準に回復するのは国際線よりは早く、22年と推定している。
21年3月期の予想では、JALが2,700億円の赤字であり、ANAは5,100億円の赤字を予想しているため、両社とも各種費用の圧縮を図る必要がある。赤字額の多いANAの場合は、一時帰休も活用している。
両社は、大赤字を回避できない現実を受け止め、出血を最小限に留めるための増収施策とコスト削減を断行できるかということにかかっている。航空機を活用して、そこで機内食を食べてもらう企画など、可能な限りの増収策を練る必要がある。
現在、日本にはJALとANA以外に、スカイマーク(株)、(株)スターフライヤー、(株)AIRDO(エアドゥ)、(株)ソラシドエアなどの後発組に加え、ANA系列のPeach Aviation(株)(以下、ピーチ)やジェットスター・ジャパン(株)などのLCCもあるが、エアアジア・ジャパン(株)はコロナ禍による航空需要の落ち込みから、21年2月に経営破綻した。
海外では、コロナ禍の前からエアーラインの統廃合が進んでおり、KLMオランダ航空がエールフランスに吸収合併されるなど、国を超えた航空業界の再編が進んでいたこともあり、竹中平蔵氏は「JALとANAを経営統合することも、視野に入れる必要がある」という旨を明かしている。
しかしJALとANAとでは、会社の創立から始まり、所有する機材なども含め、まったく企業文化が異なる航空会社である。今後の日本では、少子高齢化や人口の減少、テレワークの普及や地方分権の推進だけでなく、整備新幹線の建設やリニアの整備など、国内の航空需要も増える要素が少ない。
(つづく)
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