コロナ後の航空業界の在り方(後)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
コロナ禍により、航空業界は青息吐息の状態になっている。航空業界は、旅行業などと同様に「平和産業」と言われ、戦争やテロ、政情不安などが発生すると、需要が落ち込んでしまうという、構造的な弱点を抱えている。
ピーチやジェットスターは、LCCであることから、JALやANAとは利用者層だけでなく、利用目的も異なるため、ライバルにはならない。LCCのライバルは、高速バスであるが、エアーアジア・ジャパンが経営破綻したように、LCCはJALやANAのような大手航空会社と比較すれば、経営基盤が脆弱である。機材の運用効率を上げ、加えて搭乗率が高い状態で運航しないと利益が出ないため、コロナ禍では経営状態は厳しい。
スカイマーク、スターフライヤー、AIRDO、ソラシドエアという後発の航空会社は、規制緩和が実施された2000年前後に誕生している。政府は、競争を導入して割高であった国内航空運賃の値下げや、サービス向上が働く環境を整備したいと考えた。
しかし、スカイマークは会社更生法の適用を受け、AIRDOは民事再生法の適用を受け、一度は経営破綻している上に、ソラシドエアも(株)産業再生機構による支援を受けている。
スターフライヤーも、単独で生き残ることが難しいため、ANAの傘下に入っており、AIRDO、ソラシドエアもANAから経営支援を受けるなど、ANA自身が21年3月の決算では、約5,100億円の赤字が発生見通しであるから、後発の航空会社の将来に関しては、明るいとはいえない。
国際線・国内線ともに、先行きが不透明であることから、1990年代から2000年頃のように、競争を促す交通政策ではなく、「調整」に比重を置いた交通政策に、シフトさせなければ、航空会社の倒産が続発する危険性がある。
国際線に関しては、JALを中心に需要が多く見込める東京~ニューヨーク・ロンドン・フランクフルト・香港・ソウル・シンガポールに関しては、JALとANAのダブルトラック化を採用すれば良いが、その他の路線ではJALに任せれば良いだろう。
国内線に関しては、羽田~札幌・福岡・那覇などのドル箱路線は、JALとANAのダブルトラック化で対応すれば良いが、その他の国内便の幹線は、ANAが担うようにすれば良い。
スカイマーク、スターフライヤー、AIRDO、ソラシドエアは、羽田よりも神戸、北九州、新千歳、宮崎などを拠点に運航しているため、地域色が根強い。それゆえ今後は、これらの拠点空港を中心とした国内便の運航と、一部の近距離国際線やチャーター便を担うのが良い。かつての「45・47体制」と言われた航空業界の規制強化による、交通調整である。
世界的には、国境を越えた航空会社の統廃合が実施されるなど、この業界では再編が進んでいるため、将来的にはJALとANAの統合が起こらないとは限らない。
しかし、企業カラーがまったく異なる航空会社であるから、最初は共存共栄を目指して「交通調整」を実施し、航空業界の体力を回復させるようにしたい。
後発のスカイマーク、スターフライヤー、AIRDO、ソラシドエアは、スターフライヤー以外は、一度は経営破綻したり、経営が行き詰っている。またスカイマーク以外は、ANAの傘下に入っており、スターフライヤー、AIRDO、ソラシドエアの3社は、ANAの子会社として、統合される可能性もあり得る。
ピーチやジェットスターに関しては、LCCであるため、JALやANAなどのレガシーキャリアがライバルになることがなく、今までLCCがなかったときは帰省をあきらめていた層が中心になるため、独自の道を歩むような気がするが、経営体力がないこともあり、コロナ禍による航空需要の低減により、アフターコロナの時代に会社が存続しているか否か、将来性に関しては不透明だといえる。
(了)
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