【企業研究】セガサミーホールディングスとカジノ 情熱を傾けていたカジノ参入がトーンダウン(後)
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政府は、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の申請受付期間を2021年10月1日から22年4月28日までとすることなどを盛り込んだ基本方針を決定した。カジノ誘致に名乗りを上げている自治体は、大阪(夢洲)、神奈川(横浜)、長崎(ハウステンボス)、和歌山(マリーナシティ)、愛知(名古屋)、愛知(常滑)、東京(台場)。神奈川県横浜市の観光地域・ベイブリッジの内側、山下埠頭が有力視されてきた。総合エンターテインメント企業のセガサミーホールディングス(東京都品川区、東証一部)が横浜のIR事業に参画する。
里見会長宅に拳銃が撃ち込まれた
カジノ事業に進出してからおどろおどろしい事件に見舞われた。東京・板橋区の里見治会長宅に、2015年1月8日と14日の未明、2度にわたり拳銃が撃ち込まれた。
警視庁は2年後の17年6月27日、元暴力団組員山下宏佳容疑者=大阪市、天王寺区=ら計5人を銃刀法違反(発射・加重所持)などの容疑で逮捕した。
続いて6月30日、指定暴力団、山口組系元組員、福井康二容疑者=覚醒剤取締法違反(使用)の罪で公判中=を銃刀法違反などの疑いで逮捕。組織犯罪対策4課は、福井容疑者が主導的役割を担い、先に逮捕した5人は実行役や支援役として、銃撃事件が行われたと見なした。
主導的役割と見なされた元暴力団組員、福井被告の裁判員裁判で、東京地裁は18年6月15日、懲役11年6月(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。
河本雅也裁判長は判決理由で、福井被告がセガサミーを相手に民事訴訟を起こした会社と仕事上の付き合いがあったことから、里見会長を威嚇すれば、その会社から現金を受領できると考えたと指摘。「近隣住民に与えた恐怖や不安は大きい」と述べた。
里見治会長の身辺に漂う闇の深さは、カジノ事業者に相応しくないと危惧された。
横浜市長選はIR誘致の是非が最大の争点
横浜市はIR誘致に成功するか。その最大のヤマ場が任期満了にともなう横浜市長選(8月8日告示、22日投開票)である。過去最多の9人が出馬を予定している。最大の争点はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非。9人のうち7人が誘致反対の論陣を張る。
横浜市は菅義偉首相(衆院神奈川2区、72)のおひざ元。菅首相にとって「横浜への全国初のIR誘致」は第2次安倍晋三政権下での官房長官時代からの肝煎りだった。しかし、IR誘致をめぐり、さまざまなネジレが起きた。
選挙戦は、IR推進を訴え4選を目指す現職の林文子氏(75)に対して、誘致反対派が対決する構図だ。横浜市の自民党市連は自主投票を決定。林氏と誘致反対を掲げる前国家公安委員長で元衆院議員の国会議員・小此木八郎氏(56)の支援をめぐり、分裂選挙となる。
小此木陣営には、自民党県議全員と菅首相も支持を表明。小此木八郎氏の父、小此木彦三郎氏の秘書として政界に足を踏み入れたのが菅首相だ。小此木氏は、菅首相の肝煎りである「IR誘致」に反対している。ネジレである。
元横浜市立大学教授で立憲民主党推薦の山中竹春氏(48)には、「ハマのドン」と評される藤木幸夫氏(90)が全面支援を明かした。(一社)横浜港ハーバーリゾート協会会長を務める藤木氏は、本拠地である山下埠頭へのカジノ誘致に対する反対派の急先鋒だ。藤木氏は、小此木氏と最も近い関係にあり、ここにもネジレがある。
元神奈川県知事の松沢成文氏(63)や元長野県知事で作家の田中康夫氏(65)、元検事で弁護士の郷原信郎氏(66)などの有名人が多数出馬。カジノ反対派の票が割れることになりそうだ。横浜市のIR誘致は、市長選の結果で決まる。
(了)
【森村 和男】
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