2024年11月22日( 金 )

【縄文道通信第72号】温故知新シリーズ―縄文土器発明の偉大さ~縄文道―武士道-未来道(後)

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(一社)縄文道研究所

 Net-IB Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
 今回は第72号の記事を紹介。

縄文土器発明の偉大性~縄文土器と日本陶磁器文化の系譜、4回シリーズ(つづき)

縄文土器 模様 イメージ 時が経つのは早いもので、「縄文文化にハマって」32年が経った。

 縄文土器と対面したとき、おのれの心と体に衝撃を与えた何者かを常に問い詰めてきたが、今いえることは日本の瀬戸の陶祖、加藤景正四郎左衛門(藤四郎)の末裔としての「血が騒いだ」のだと思う。

 縄文土器がなぜ偉大であり、重要であるかを日本のものづくりの原点に立ち返って考えたい。縄文土器の作成をものづくりの原点から考えると、火の使用と土の加工、水をたくみに使う技術の集結であることだ。これは、現代文明を支える科学技術、半導体と同じだ。半導体は、土のなかの主成分のシリカ(SiO2)を取り出して、99.9999999%まで純度を高めたシリカの結晶で作成する。

 縄文土器の作成工程を現代に蘇らせる実験考古学という学問がある。この学問の研究者によると、1万6,000年前に大変高度な地質学、化学、物理学といった学問は存在しないが、縄文人は科学的工程を経て土器をつくっていた。以下は工程の概要だ。

(1)胎土を選定して「素地土(きじど)」をつくり、混合物(黒鉛、雲母、滑石粉、黒曜石、植物の織物)を混ぜて、原料の土をつくる。

(2)装飾過程は、さまざまな文様を付けるためにつくった道具を巧みに使用して、複雑な文様を、土器に施す技術を用いる。施文具と呼ばれる、へら、竹、棒、櫛歯などのさまざまな用具を使用する。色の付いた彩文土器もつくられていたが、主に赤と黒である。赤の原料はベンガラと朱、黒は煤と炭が使用されている。

(3)焼成過程が最終工程である。土器を乾燥させて、硬くて割れず水漏れがないように高温で焼成する技術を身につけていた。松、竹、ナラなどの材木を集めて火起こしした野火焼で、さまざまな土器を焼成して乾燥させる。

   筆者も縄文土器を作成した経験があるが、野焼きの段階は最もエキサイティングだった。

 以上のように、縄文土器の制作過程を実験考古学の視点から観察すると、粘土採集―素地土―成形―整形―施文―乾燥―焼成と、その過程はまさに縄文人の叡智の結晶であることが理解できる。

 縄文土器の作成で獲得してきた、ものづくりの基層は日本人が世界に誇る「匠の技」に連綿とつながっていると思う。匠の技は日本人のあらゆる面で継承されて、発展していく。

 次回は、匠の技が土器、陶器、磁器文化に継承され、日本が世界の冠たる陶磁器文化国家になった系譜を紹介したい。これは半導体や、世界を席巻するウォッシュレット文化にも継承されていくのだ。

<参考資料>
『30の発明から読む日本史』(池内了監修、日経ビジネス人文庫)
『縄文土器ガイドブック』(井口直司著、新泉社)
『考古学ハンドブック』(小林達雄著、新書館)
『世界史を変えた新素材』(佐藤健太郎著、新潮選書)
「日本陶磁器文明の世界的な影響力」(加藤春一、講演資料)
「2012年 丸の内朝飯会」(上智大学マスコミ・ソフィア会)


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