ステーブルコインは金融市場を混乱させるトリガーになるか(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
ステーブルコインが抱えているリスク
ステーブルコインは価値がドルに固定されているが、現実的には価格暴落が起こり得るため、価格暴落を懸念する声も上がっている。金融当局の判断では、ステーブルコインは仮想通貨市場で銀行の預金や超短期金融商品マネーマーケットファンド(MMF)のような役割を担っているため、顧客の要求がある場合には、いつでも支払に対応できる必要があるが、実際には元本保証と間違いなく現金化できるという保証が十分ではないという。
既存の金融機関では準備預金制度や預金者保険などを利用して取り付け騒ぎに備えているが、ステーブルコインにはそのような装置が今のところ存在しないため、それを不安視する指摘が出ている。とくに、ステーブルコインの代表格であるテザー(USDT)が開示した5月の資産の内訳をみると、ドルの保有額が時価総額の3.86%にすぎないことが明らかとなっており、ステーブルコインに対する不安はますます募っている。テザー(USDT)はステーブルコインの発行額の76%に当たる現金およびそれと同等の貨幣性資産はもっているものの、価格暴落に備えるには不十分であるという指摘が多い。そのため、爆発的に成長している仮想通貨市場でステーブルコインに端を発した混乱が発生し、それがトリガーとなって、決済市場へ波及するのではないかと懸念され、米国の金融当局は警戒を強めている。
ステーブルコインは金融混乱を引き起こしかねない
上記でみてきたように、市場では仮想通貨の価格暴落やテザー(USDT)に対する不信感が増幅して、テザー(USDT)を大量に投げ売りする「コインラン(バンクランから派生した新造語)」が発生すると、コマーシャルペーパー(CP)市場にショックが走り、それが金融市場全体にも波及することが懸念されている。このような仮想通貨が発端となる金融混乱を事前に防止するためにも、ステーブルコインに対する規制を早期に導入する必要があると米国の金融当局者は認識している。
一方、このようなステーブルコインに対する規制をめぐって、別の意見も存在する。世界各国の中央銀行では、デジタル通貨の発行を積極的に検討している。中国はドル覇権を崩し、人民元の世界化を推進するためにもデジタル通貨の発行に意欲的である。米国は最初、デジタル通貨の発行に消極的であったが、中国の動きに触発されて、今はデジタルドルの発行に前向きである。
デジタルドル発行の布石として、デジタルドルの強力なライバルになり得るステーブルコインを規制しておく必要があるという主張だ。いずれにしても、ステーブルコインは仮想通貨市場の成長とともに発行量も大きく伸びており、うまく管理していくことが求められている。今までは仮想通貨市場の成長に寄与したステーブルコインであるが、今後どのような展開になっていくのか、細心の注意が必要である。
(了)
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