【縄文道通信第76号】セラミックス全盛時代、縄文土器から宇宙航空産業へ~縄文道―武士道―未来道
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(一社)縄文道研究所
縄文土器から宇宙航空産業への大変遷
第71号から第75号まで土器、陶器、磁器、セラミックの変遷を述べてきたが、以下は変遷をまとめたものである。
土器の始まりから見るセラミックの歴史
第1世代 天然素材(粘土)からつくる焼き物の時代
【土器】
焼成温度:約800度
縄文式土器、弥生式土器
日本最古の焼き物は約1万6,500年前の青森県大平山元遺跡からの土器で世界最古級
【陶器】
焼成温度:約1,100~1,300度
瀬戸焼、丹波焼、備前焼、信楽焼、伊賀焼
素地に吸水性(釉薬を使用)、透光性なし、厚く重く、たたくと鈍い音
【磁器】
焼成温度:約1,300度
有田焼、伊万里焼、清水焼
素地に吸水性なし、透光性あり、薄く軽い、たたくと金属音第2世代 天然原料を精製し、工業的にセラミック生産する時代
明治時代以降
ドイツ人ワグネルらを招き、産業革命で発達したヨーロッパの先進陶磁器製造技術を吸収する。セメント工業、ガラス工業も発達し、製鉄業の発展にともなって耐火物の生産も質・量ともに向上。この時期の代表的セラミックは、碍子(がいし)と自動車用スパークプラグである。第3世代 高純度化した人工原料で、機能性セラミックを的確に生産する時代
1940年以降、とくに80年以降に急速な発達を遂げる。原料を高純度化させ、その組成、組織、形状や製造工程を精密にコントロールすることにより、的確に機能や特性を発現させたセラミックス(ファインセラミックス)を工業製造する技術が驚異的に発達する。
・エレクトロセラミックス:電気特性に優れた電子部品となるセラミックス~IT産業全般
・バイオセラミックス:生体との親和性を高めた人工骨~インプラント、再生医療全般
・エンジニアリングセラミックス:各種工業製品機器に組み込まれるセラミックス
・ライフ・サニタリーセラミックス:キッチン、トイレ(ウォシュレット、屋内装飾)
・ガラス:7,000~8,000年前に製造が始まり、11世紀にベニスで量産。 18世紀に欧州で技術進歩、19世紀工業生産、1907年日本で板ガラス
・セメント:1824年イギリスでポートランドセメント、日本では1875年から生産開始▼おすすめ記事
九工大と大分の企業4社が共同開発した超小型衛星「てんこう」~今月29日に宇宙へ第71号で、世界最古の縄文土器が青森県の大平山元で約1万6,500年に作成されて以来、現代のセラミックの時代までの変遷を述べてきた。セラミックといえども、地球の大地の土と火と水を使用し、高度に純度を上げてできた結晶である。現代の世界を賑わせている半導体産業が最も注目されている。
とくに半導体の素材のウエハーは日本の独壇場である。世界を席巻しているのは信越化学工業、SUMCO であるが、これから住友金属鉱山も進出予定である。日本勢の世界のマーケット占有率は約60%と圧倒的である。
商社マンとして豪州駐在時、資源王国の西豪州で高純度シリカを探して日本に輸出できないかを検討したことがある。大地の分布は、シリカ、アルミナ、鉄分が圧倒的に多い。西豪州は世界最大規模の鉄鉱石資源があり(筆者が主に関わっていた)、アルミナについても当時世界最大のプロジェクトに関わったことがあった。
シリカは大量に賦存するが、経済性のある高純度のシリカはなかった。2酸化シリカ(sio2)からシリカ(si)のみを取り出し、シリカの純度を9イレブン(99.999999999)の11ケタまで高純度に加工したのが、半導体の主要素材である。
半導体の素材は第75号で触れた名古屋の窯業地・瀬戸から森村財閥の日本ガイシ、日本特殊陶業などを生み出し、京都からは京セラ、村田製作所、福井からは信越化学工業といった企業を輩出している。
今年9月21日付の日本経済新聞朝刊トップに「先端素材、日本が攻勢 住友鉱山、EV半導体用参入」の見出しで、次のような記事が掲載された。
半導体 フォトレジスト 日本勢90%
シリコン ウエハー 日本勢60%
フォトマスク ブランクス 日本勢90%記事で紹介されたように、日本の先端技術の大元の半導体素材は世界の主流を占めている。高純度セラミックは今後、以下の分野でも使用される。
宇宙航空産業:スペースシャトルや大型望遠鏡
再生医療:リン酸カルシウム系セラミックス、細胞接着、組織伝導、生体内吸収促進
未来のIT産業:電子から光子への転換、高速伝導と高速処理は金属からセラミックへ
炭素社会から水素社会へ:太陽光と水から水素をつくる光触媒の開発がカギを握る我々祖先がつくった縄文土器は、土(地質学)、火(物理学)、水(化学)の知識を有していた。文字のなかった縄文人は口承、伝承で技術を伝え、常に技術革新の先陣を切って、現在の先端セラミックス技術に到達したのだ。
この縄文人が源流、基層にあって現代につながっているのだが、これからの未来も絶えず技術革新を興して、世界の先陣を切っていくと思う。この技術と精神は、まさに縄文道の未来への伝承で、日本人のDNAに深く根差していると思う。
<参考資料>
『世界史を変えた新素材』(佐藤健太郎著、新潮新書)
『セラミックの本』(日本セラミック協会編、日刊工業新聞)
『日本経済新聞』(2021年9月21日付)
『はじめに土あり』(中嶋常无著、地湧社)
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